30年待たされた異世界転移

明之 想

文字の大きさ
931 / 1,578
第9章 推理編

原因

しおりを挟む
 失血状態のシアを治癒魔法と低級魔法薬、そして回復したセレス様の祝福で断続的に治療すること4刻(8時間)。ようやく症状が悪化することもなくなってきた。

 何がどう作用して、シアの身体の中で何が起こったのか分からないが、出血性ショックによる影響も治まったと考えていいんじゃないだろうか。

 血色の良い顔で安らかな寝息を立てるシアを見ていると、そう思えてくる。

「コーキ、もう大丈夫だよな?」

「断言はできないが、ここから悪化することはないと思う」

「そうか……」

「良かった、姉さん」

 皆の顔に安堵の色が浮かんでいる。
 もちろん、安堵の思いは俺も同じだ。

「シア……あなただけでも助けることができて……」

 溜息のように呟くセレス様の視線はシアからディアナへ。
 そして、またシアへ。

「セレス様……」

「「「……」」」

 ディアナのことは残念だ、心からそう思う。
 それでも、シアを助けることができて良かった。
 ここでシアまで失うことになっていたらと考えると……。 


「「……」」

「「……」」

 セレス様、アル、ヴァーン、ユーフィリア。
 それぞれに抱く思いは違うだろう。
 ただ、緊張が緩み始めたのは皆同じ。
 昨夜の凶行からずっと続いていた張りつめたような空気がゆっくりと消えていく。

 そんな中。

「ぅ……」

「姉さん!」

「シア!」

「うぅぅ……」

「目が覚めたの、シア?」

 ずっと眠っていたシアが覚醒した。

「アル……ヴァーン……セレス様??」

「どうした、調子が悪いのか?」

 ヴァーンが飛びつかんばかりにシアに駆け寄り、手を握っている。

「だい、じょうぶ。もう、つらくない」

「そうか!」

「でも……」

「なんだ?」

「見えない……」

「何?」

「見えないの」

「えっ? シア?」

「何も見えない……」

 体は問題ない。
 なのに見えない?

「シア、俺はここにいるぞ。目の前だ。分かるよな?」

 手を握りながら額がつくほどに顔を近づけるヴァーン。
 けれど。

「ヴァーン、あなたがいるのは分かるわ。でも……見えない」

「っ!」

「声しか聞こえないの!」

 シアが視力を失っている?

「馬鹿な! どうして見えないんだ?」

「そんなこと、わたしだって……」

「姉さん?」

「アル?」

「ああ、ヴァーンさんの隣にいる。姉さん、見えないのか?」

「……うん」

「嘘だろ!」

「……」

「シア、本当に見えないのね」

「セレス様……」

 この視力喪失。
 一過性のものなら、時間が経てば回復するはず。
 大きな問題はないはず、だが。

「胸を刺されて目が見えなくなるって? いったい、何なんだよ!」

 アルの言う通り。
 理由が分からない。
 原因が不明だから、一過性かどうかも……。

「コーキさん、何が起こっているの?」

「シアの目は大丈夫だよな?」

「……」

 このタイミングでの視力喪失。
 考えられることは……?
 可能性は……?

 やはり、失血か。

「どうなんだ?」

「コーキさん?」

「……失血が原因だと思われます」

「失血が?」

「多量の出血により、視力に問題が生じた可能性が高いです」

「そんなこと……あり得るのですか?」

「……はい」

 可能性としては、起こり得ることだろう。

 つまり。
 出血性ショックによって低酸素脳症か血圧の降下が起こり。
 脳の視覚に関係する領域に脳梗塞が発症。それにより視力を失ったと。


しおりを挟む
感想 11

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

『希望の実』拾い食いから始まる逆転ダンジョン生活!

IXA
ファンタジー
30年ほど前、地球に突如として現れたダンジョン。  無限に湧く資源、そしてレベルアップの圧倒的な恩恵に目をつけた人類は、日々ダンジョンの研究へ傾倒していた。  一方特にそれは関係なく、生きる金に困った私、結城フォリアはバイトをするため、最低限の体力を手に入れようとダンジョンへ乗り込んだ。  甘い考えで潜ったダンジョン、しかし笑顔で寄ってきた者達による裏切り、体のいい使い捨てが私を待っていた。  しかし深い絶望の果てに、私は最強のユニークスキルである《スキル累乗》を獲得する--  これは金も境遇も、何もかもが最底辺だった少女が泥臭く苦しみながらダンジョンを探索し、知恵とスキルを駆使し、地べたを這いずり回って頂点へと登り、世界の真実を紐解く話  複数箇所での保存のため、カクヨム様とハーメルン様でも投稿しています

薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。〜少年アレクの倫理で殴る学園ファンタジー〜

鮒捌ケコラ
ファンタジー
入学式から3週間目にして『退学」を言い渡された。 (早くない?RTAじゃないんだからさ。) 自分で言うのもアレだけど、入学してからは結構真面目に通ってた。 けど、どうやら教員の不況を買ってしまったらしい。 幸か不幸か、退学まで1週間の執行猶予が与えられた。 けど、今更どう足掻いても挽回する事は不可能だろうし、 そもそも挽回する気も起こらない。 ここまでの学園生活を振り返っても 『この学園に執着出来る程の魅力』 というものが思い当たらないからだ。 寧ろ散々な事ばかりだったな、今日まで。 それに、これ以上無理に通い続けて 貴族とのしがらみシミッシミの薬師になるより 故郷に帰って自由気ままな森番に復職した方が ずっと実りある人生になるだろう。 私を送り出した公爵様も領主様も、 アイツだってきっとわかってくれる筈だ。 よし。決まりだな。 それじゃあ、退学するまでは休まず毎日通い続けるとして…… 大人しくする理由も無くなったし、 これからは自由気ままに、我儘に、好き勝手に過ごす事にしよう。 せっかくだし、教員達からのヘイトをカンストさせるのも面白そうだ。 てな訳で……… 薬師の名門ブレルスクに入学した私は、退学するまで暴れます。 …そう息巻いて迎えた執行猶予満了日、 掲示板に張り出された正式な退学勧告文を 確認しに行ったんだけど…… どういう事なの?これ。

のほほん異世界暮らし

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。 それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

どうしてこうなった道中記-サブスキルで面倒ごとだらけ-

すずめさん
ファンタジー
ある日、友達に誘われ始めたMMORPG…[アルバスクロニクルオンライン] 何の変哲も無くゲームを始めたつもりがしかし!?… たった一つのスキルのせい?…で起きる波乱万丈な冒険物語。 ※本作品はPCで編集・改行がされて居る為、スマホ・タブレットにおける 縦読みでの読書は読み難い点が出て来ると思います…それでも良いと言う方は…… ゆっくりしていってね!!! ※ 現在書き直し慣行中!!!

俺は普通の高校生なので、

雨ノ千雨
ファンタジー
普通の高校生として生きていく。その為の手段は問わない。

【収納】スキルでダンジョン無双 ~地味スキルと馬鹿にされた窓際サラリーマン、実はアイテム無限収納&即時出し入れ可能で最強探索者になる~

夏見ナイ
ファンタジー
佐藤健太、32歳。会社ではリストラ寸前の窓際サラリーマン。彼は人生逆転を賭け『探索者』になるも、与えられたのは戦闘に役立たない地味スキル【無限収納】だった。 「倉庫番がお似合いだ」と馬鹿にされ、初ダンジョンでは荷物持ちとして追放される始末。 だが彼は気づいてしまう。このスキルが、思考一つでアイテムや武器を無限に取り出し、敵の魔法すら『収納』できる規格外のチート能力であることに! サラリーマン時代の知恵と誰も思いつかない応用力で、地味スキルは最強スキルへと変貌する。訳ありの美少女剣士や仲間と共に、不遇だった男の痛快な成り上がり無双が今、始まる!

神樹の里で暮らす創造魔法使い ~幻獣たちとののんびりライフ~

あきさけ
ファンタジー
貧乏な田舎村を追い出された少年〝シント〟は森の中をあてどなくさまよい一本の新木を発見する。 それは本当に小さな新木だったがかすかな光を帯びた不思議な木。 彼が不思議そうに新木を見つめているとそこから『私に魔法をかけてほしい』という声が聞こえた。 シントが唯一使えたのは〝創造魔法〟といういままでまともに使えた試しのないもの。 それでも森の中でこのまま死ぬよりはまだいいだろうと考え魔法をかける。 すると新木は一気に生長し、天をつくほどの巨木にまで変化しそこから新木に宿っていたという聖霊まで姿を現した。 〝この地はあなたが創造した聖地。あなたがこの地を去らない限りこの地を必要とするもの以外は誰も踏み入れませんよ〟 そんな言葉から始まるシントののんびりとした生活。 同じように行き場を失った少女や幻獣や精霊、妖精たちなど様々な面々が集まり織りなすスローライフの幕開けです。 ※この小説はカクヨム様でも連載しています。アルファポリス様とカクヨム様以外の場所では公開しておりません。

処理中です...