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第9章 推理編
五感 1
<古野白楓季視点>
「武上君!」
「……」
何度声を掛けても返事がない。
武上君も私と同じように異能を受けてしまったの?
っ!
後ろの2人は?
「幸奈さん? 武志君?」
「……」
やっぱり、返事がない。
物音ひとつ聞こえない。
でも、これは私に聞こえないだけでは?
感覚を失くしたのは私だけで、3人は無事かも?
だとしたら、武上君は今……。
分からない。
分からないわ、何も。
「……」
目が見えない、耳も聞こえない、動けもしない。
それなのに、流れる冷や汗は不思議と感じてしまう。
ああ、どうしたら?
焦りばかりが募ってくる。
こんな時こそ冷静になるべきだと分かっていても……。
「……」
でも、そうだ。
アンチUPの効果がそろそろ表れるはずだ。
そうすれば、動けるようになるし、状況も理解できる。
戦うことだってできるはず。
ただ……。
感覚が戻る兆しがない。
遅い!
早く効果が表れないと、マズいことになってしまうのに。
「うぅ……」
武上君は動けている?
あなたも動けないようだと、幸奈さんが連れ去られて……。
「うぅ!」
まだなの?
早く!
アンチUP、早く!
と、薄っすらとした光が目の前に……。
これは、異空間の光?
視力が戻ろうとしている?
「……」
間違いない。
まだモノクロみたいで目を細めた視界以下のものだけれど、視力が戻りつつある。
手足の感覚も。
耳もかなり聞こえてきた。
これなら、すぐに!
「……」
「……」
「……」
えっ!
回復が止まった?
「そんな……」
改良型の効果が鈍化しているの?
「ん? もう動けるのか?」
「研究所が開発した対異能のあれですよ」
「なるほど」
動けると言っても、ほんの僅かだけ。
眼も体も正常からは程遠い。
当然、戦うことなんて……。
「てめぇ!」
武上君?
「卑怯なまねしやがって」
「単なる異能の行使だ。卑怯ではないな」
「ちっ!」
この視力にこの体勢じゃ、よく見えない。
武上君の状況が分からない。
「……!」
誰かが近寄って来た。
私のすぐ傍で……えっ?
触られている?
私の体が吾妻に?
「やめて! 古野白さんと武上君から離れて!!」
「姉さん、出ちゃ駄目だ!」
「でも、2人が!」
「僕たちが結界から出たところで、何もできないだろ」
「それは……」
「今は、自分の身を護ることだけを考えてくれよ」
「……」
後方から響いてくるのは武志君と幸奈さんの声。
よかった。
結界を再構築できたのね。
これで、しばらくは安心できる。
そうすると、問題は私と武上君。
「こいつか?」
「見せてください、吾妻さん」
「……」
「ほう、こんな形状なんですね」
「間違いないな?」
「はい、これが研究所の秘密兵器でしょう」
アンチUPのこと?
奪われたの?
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