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第10章 位相編
今は
あの空間に戻れない?
一刻も早く戻らなきゃいけないのに。
幸奈を護って、敵を倒す必要があるのに。
どうすればいいんだ?
すぐには戻れないという状況、目の前にいる15歳の幸奈。
予想外の事態の連続に、混乱と焦燥でいっぱいになってしまう。
っ!
駄目だ。
こんな時こそ落ち着いて冷静に、冷静に。
「……」
まずは何としてもあの位相空間に戻る術を見つけなきゃならない。
これが大前提。
問題は猶予だが。
俺にはどれくらいの時間が残されてるのか?
あちらの戦況は……そうだ!
ここに飛ばされる前、吾妻にはかなりの打撃を与えていたんだ!
伊織少年の見立てによると、1日程度はまともに動けない状態らしい。
今の手負いの吾妻なら古野白さんたちにとって脅威にはならないだろう。もう1人の敵空間異能者も攻撃力という点では恐れるに足りない。古野白さんと武上に敵うとは思えないし、そもそも武志の結界を破壊する力もないからな。残るは壬生少年だが、あいつには明確に敵対する意志はないはず。
なら、今はまだ切迫した状況じゃない。
つまり、余裕があると。
24時間程度の猶予が……。
この時間内にあの空間に戻れれば、何とかなるのでは?
よし、悪くない。
思ったより悪くないぞ。
そうすると今は、こっちだな。
俺と幸奈の状況把握が優先だ。
「……」
相変わらず訳が分からないものの、ここが和見家の地下室であることに違いはない。そして、すぐそこには15歳の幸奈。
15歳か。
簡単に信じられることじゃない。
ただ、この現実を理解するには……。
「ねえ、功己はどうやってここに入ってきたの?」
幸奈からさっきまでの上ずった口調が消えている。
少し落ち着いてきたようだ。
「……幸奈、今年は西暦何年になる?」
「先に質問したのはわたしなんだけど?」
「それについては後で答えるから。頼む、先に教えてくれ」
「もう、変な質問ばっかり……今は199□年よ」
「!?」
5年前!
やっぱり、過去に飛ばされたのか。
「ホントどうしたのよ、功己?」
あの空間異能者は時間遡及の力を持っていない。
本来なら過去に転送されることなど起こるはずがない。
あり得ない事態だ、が、対象が俺なら……。
俺は過去に戻った経験がある。
リセットや時間遡行を何度も使ってきた。
そんな俺に異能を行使したから、こんな事態になったと?
空間転送が異常に作用して暴走したと?
「……」
もちろん、真実は分からない。
とはいえ、この推測が大きく的を外れているとも思えない。
ここは5年前の世界。
あるいは、5年前の位相世界。
だとすると……。
「痛っ!」
思考を消し去るような幸奈の声に、思わず振り返ってしまう。
「幸奈、どこが痛いんだ? 具合が悪いのか?」
真っ青だぞ。
「……大丈夫」
「そんなわけないだろ。そこから出て休んだ方が……なっ!?」
幸奈に近づいて初めて気付いた。
浴槽内に満ちているおぞましい液体に。
「……幸奈?」
こんな液体にどうして?
どんな理由で?
「平気よ」
「……」
「慣れて、るから」
この浴槽に浸かることに慣れているだって。
駄目だ、看過できることじゃない。
「とりあえず出て話そう」
「駄目。お父様に叱られる」
っ!
あの父親の仕業なんだな。
なら、なおのこと。
「それは何とかする。だから出るぞ、ほら」
幸奈の腕を掴み、浴槽から引き上げ……。
「えっ!? きゃああ!!」
下着!?
「功己、見ないで!!」
「……わるい」
何考えてんだ、俺は。
確認もせず、浴槽から女性を引き上げるなんて。
「……着替えるから、ちょっと待ってて」
「あっ、ああ」
一刻も早く戻らなきゃいけないのに。
幸奈を護って、敵を倒す必要があるのに。
どうすればいいんだ?
すぐには戻れないという状況、目の前にいる15歳の幸奈。
予想外の事態の連続に、混乱と焦燥でいっぱいになってしまう。
っ!
駄目だ。
こんな時こそ落ち着いて冷静に、冷静に。
「……」
まずは何としてもあの位相空間に戻る術を見つけなきゃならない。
これが大前提。
問題は猶予だが。
俺にはどれくらいの時間が残されてるのか?
あちらの戦況は……そうだ!
ここに飛ばされる前、吾妻にはかなりの打撃を与えていたんだ!
伊織少年の見立てによると、1日程度はまともに動けない状態らしい。
今の手負いの吾妻なら古野白さんたちにとって脅威にはならないだろう。もう1人の敵空間異能者も攻撃力という点では恐れるに足りない。古野白さんと武上に敵うとは思えないし、そもそも武志の結界を破壊する力もないからな。残るは壬生少年だが、あいつには明確に敵対する意志はないはず。
なら、今はまだ切迫した状況じゃない。
つまり、余裕があると。
24時間程度の猶予が……。
この時間内にあの空間に戻れれば、何とかなるのでは?
よし、悪くない。
思ったより悪くないぞ。
そうすると今は、こっちだな。
俺と幸奈の状況把握が優先だ。
「……」
相変わらず訳が分からないものの、ここが和見家の地下室であることに違いはない。そして、すぐそこには15歳の幸奈。
15歳か。
簡単に信じられることじゃない。
ただ、この現実を理解するには……。
「ねえ、功己はどうやってここに入ってきたの?」
幸奈からさっきまでの上ずった口調が消えている。
少し落ち着いてきたようだ。
「……幸奈、今年は西暦何年になる?」
「先に質問したのはわたしなんだけど?」
「それについては後で答えるから。頼む、先に教えてくれ」
「もう、変な質問ばっかり……今は199□年よ」
「!?」
5年前!
やっぱり、過去に飛ばされたのか。
「ホントどうしたのよ、功己?」
あの空間異能者は時間遡及の力を持っていない。
本来なら過去に転送されることなど起こるはずがない。
あり得ない事態だ、が、対象が俺なら……。
俺は過去に戻った経験がある。
リセットや時間遡行を何度も使ってきた。
そんな俺に異能を行使したから、こんな事態になったと?
空間転送が異常に作用して暴走したと?
「……」
もちろん、真実は分からない。
とはいえ、この推測が大きく的を外れているとも思えない。
ここは5年前の世界。
あるいは、5年前の位相世界。
だとすると……。
「痛っ!」
思考を消し去るような幸奈の声に、思わず振り返ってしまう。
「幸奈、どこが痛いんだ? 具合が悪いのか?」
真っ青だぞ。
「……大丈夫」
「そんなわけないだろ。そこから出て休んだ方が……なっ!?」
幸奈に近づいて初めて気付いた。
浴槽内に満ちているおぞましい液体に。
「……幸奈?」
こんな液体にどうして?
どんな理由で?
「平気よ」
「……」
「慣れて、るから」
この浴槽に浸かることに慣れているだって。
駄目だ、看過できることじゃない。
「とりあえず出て話そう」
「駄目。お父様に叱られる」
っ!
あの父親の仕業なんだな。
なら、なおのこと。
「それは何とかする。だから出るぞ、ほら」
幸奈の腕を掴み、浴槽から引き上げ……。
「えっ!? きゃああ!!」
下着!?
「功己、見ないで!!」
「……わるい」
何考えてんだ、俺は。
確認もせず、浴槽から女性を引き上げるなんて。
「……着替えるから、ちょっと待ってて」
「あっ、ああ」
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