30年待たされた異世界転移

明之 想

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第11章 陰謀編

優先すべきは

<ヴァーンベック視点>



 脱出するのはいいが、コーキはどうなる?

「どうもしない。いや、今はどうすることもできないだけだ。もちろん、可能なら助けるがな」

 可能ならってことは?

「何か考えが?」

「考えという程じゃない。ただ、コーキ殿がギリオンを置いて逃げるとは思えないだろ」

「つまり、コーキは今もこの建物の中にいる?」

「ふむ、その可能性は低くないだろう。ただし、地下牢にいないとなると、どこにいるかが分からない」

「建物内の他の勾留場所を知らないんですか?」

「この地下牢のような部屋はない、と聞いている」

 やっぱり、ヴァルターは知ってたんだな。
 骨董品店の奥に地下牢があることも、奇妙な通路も、ここまでの道も。

「とにかく今は脱出を優先するしかない。あとは、こいつ次第だ」

「ギリオン次第」

 目覚めたギリオンがコーキの行方を知っていたら、救出に向かう。
 そうじゃないなら……。
 
「気に病むことはない」

「……」

「今回コーキ殿を救出できなかったとしても、外に出さえすればギリオンの証言と共に正式に抗議することもできる」

 ヴァルターや冒険者ギルドの抗議なら。
 確かに、有効かもしれない。

「そうすれば、助けることもできるのだからな」




*********************




 壁を破壊して、人の気配を感じる方向に進み続け。

 ガンッ!
 ドガン!

 残す壁は1枚。
 目の前にある壁のすぐ先に、はっきりと人の気配を感じ取れる。

 が、ここで最後の壁を破壊すると。
 また同じことを繰り返す可能性が高い。

「……」

 これまで何度か試した気配への接近。
 最後の壁を破壊したところで、例外なく気配は消え、移動してしまった。
 毎回同じように正反対の壁の向こうへ。俺の後ろへ。

 だから、もう同じことを試す意味はない。
 何か違うことを試さないと駄目だ。

「……」

 おそらくは、ここが外に最も近い場所。
 外界との境になっている壁だと思われる。

 ならば、この地点こそが迷路空間からの脱出口のはず。
 脱出の鍵はここにあるはず。

 ただ、だからといって……。

 脱出のための最後の1歩が分からない。
 決定的な何かが掴めないんだ。
 これ以上、時間を浪費なんてできないのに。

「……」

 ギリオンが消えてから、どれくらい時間が経ったのか?
 俺が迷路に入り込んでからのことを考えると、少ない時間ではないだろう。

「ギリオン……」

 無事でいてくれよ。
 必ず迎えに行くからな。


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