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第7章 その後の二人 / 魔力切れと覚悟の話
9日目(1)
しおりを挟む魔王さんが遠征に行って九日目。
「あと五日か……」
悩む。
夕食を下げてもらった後のソファで悩んで、久しぶりに湯舟に浸かった風呂でも悩んで、今、ベッドにもぐりこんでも悩んでいる。
「耐えられなくは無いんだけど……」
でも……
でも……
「したい……」
セックスがしたい。
この世界に来て最初の魔王さんとのエッチまでも一〇日くらいあったけど、あれは新しい環境に慣れるのに必死だったし、魔王さんのことも好きではあったけど、今と比べると好きの種類が違うしで、性欲のスイッチが入りきらなかった。
でも、今は……
「魔王さんとエッチしたい……」
健康な成人男性って、どれくらいの頻度で射精するのが正しいんだっけ?
ホストの時もヒモの時も、週に数回セックスして射精していたし、魔王さんとセックスするようになってからでも週に一~二回は必ずしている。
個人差はあると思うけど、俺は一週間射精しないと少しモヤモヤする。
射精したい。
魔王さんとイチャイチャしたい。
性欲と寂しさが同時に襲ってくる。
「エッチはできないけど……射精だけ、するか……」
魔王さんっていう大事な存在がいるのに一人でするの、勿体ないなぁ……でもなぁ……。
今日は我慢できたとして、魔王さんが帰ってくるまであと五日、我慢できる?
どこかで我慢できなくてオナニーするんだったら、もう、今した方がいいよね?
だって、多分帰ってきてすぐに魔王さんとエッチするだろうから……一三日目とかに抜いちゃうと、魔王さんと久しぶりセックスのありがたみが薄れちゃいそう。
よし、決めた。
今日だ。
今だ。
今、オナニーして、残りの五日は我慢して、魔王さんが帰ってきたらすぐにエッチに誘う! よし!
「久しぶりだな~。ホスト時代ぶりかも。いつもどうしていたかな」
折角するならオナニーはオナニーで楽しまないとね?
俺ってどんなオナニーしていたかな。
「ん……」
ベッドの中で、寝間着の裾を捲って、下着の中に右手を入れる……違和感あるな……そうそう、俺、左手派だった。こんなところから忘れていたな。
左手か……大事な指輪を付けているんだけど、外すべき?
でもなぁ……魔王さんと特別な関係になった証明の指輪がハマった手で扱くって興奮するんだけど……うん。つけて置こう。あとでちゃんと洗うから……。
「はぁ……」
左手で軽く扱いてみると、指輪の感触は解るような解らないような感じだけど、普通に気持ちいい。
ただ、物理的な快感だけでイけるかな?
オナニーってどうしていたっけ? 左手で扱いて……そうそう、右手でスマホとか、オカズになるものを観ていたんだ。
ホストとかヒモとかペットとかしているけど、俺だって普通の男の子だったんだから、一〇代の頃なんかはセクシーな女の子の水着とか露出度高い服で下着がチラ見えしているグラビアで抜いていたはず。
お気に入りのグラビアとかもあったはずなんだけど……。
思い出せない。
というか、それを思い出す気分になれない。
ペニスを握りながら俺の頭に浮かぶのは……。
「魔王さん……」
魔王さんの男らしい厚みのある裸。
優しいのに興奮を抑えきれない獰猛な雄っぽい表情。
俺で反応してバキバキに勃起しちゃっている大きすぎる逞しいペニス。
うん。これこれ。
この、興奮して余裕ない感じの魔王さんに求められている妄想、今の俺にとっては最高のオカズ。
俺、魔王さん大好きなのは間違いないけど……体の……性的な意味でも、もう魔王さんが一番なんだなぁ。
「ん……魔王さん……」
頭の中でエッチな魔王さんを思い浮かべながら、ペニスを握った左手を動かす。
俺の良いところ、どこだっけ?
魔王さんのペニスの良いところならすぐに思い出せるけど、俺は……。
「魔王さんにしてもらう時を思い出せばいいのか」
魔王さん、律義にペニス扱いてくれるし上手いし。
こんな感じ?
根元から徐々に扱く幅を広げていって……もう少し力強い?
あれ? うーん?
「魔王さんの手だと、もう少し圧迫感が……あ」
そうか。魔王さんの手、俺より大きいから……。
「あの大きな手に慣れているから……んー……?」
気持ちいいんだけど……なんか、物足りない。
大きさをカバーするために、ストロークの幅を広げて、素早く擦るけど……違うなぁ。
魔王さんの大きな手で、節くれだった指で、全体を刺激してもらうのと、全然違う。
「っ……魔王さん……はぁ……」
しかも、魔王さんが俺のペニスを扱いてくれるときって、だいたいアナルに魔王さんのペニスが入っているから……。
アナル、物足りない。
「アナニー、したこと無いんだけどな……」
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