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第7章 その後の二人 / 魔力切れと覚悟の話
12日目(3)
しおりを挟む「なので……」
俺が微妙な顔をして首をかしげていると、ローズウェルさんも複雑な感情を隠さない顔で唸る。
「責任を感じる部分もあり、導王様が魔王様を助けてくださったようです。我が国の国境近くの集落の医師や警備隊も駆けつけましたが、集落では魔力回復の設備もあまり整っていないので……魔王様も導王様に甘えたとか」
となると、やっぱり導王様に感謝か……。
「導王様のお城は国境から近く、希少な魔力の回復薬も蓄えがあったそうで、惜しみなく使って頂きました。なにより……少し、失礼いたします」
ローズウェルさんが俺の頭に手を翳す。
「うーん……意識して触れれば微かに解りますね……」
「……?」
「えぇぇぇ!? まさか!?」
俺たちの話を少し離れた場所で聞いていた、昨夜から治療に当たってくれていた赤いローブに赤い癖のある髪の魔族さんが、めちゃくちゃ驚いた顔で俺に駆け寄った。
「私も失礼します!」
赤髪の魔族さんもローズウェルさんと同じように俺の頭に触れる。
この位置、魔族なら角がある場所で……。
「先ほど、確かに魔法薬系の違和感はありましたが……え? えぇぇぇぇ!? こ、こ、これ、え? そういうことですか!? こんなことしてくれるのですか!? 信じられない! え? えぇぇぇぇ??」
……芸人さんかギャグ漫画かなってくらい大げさに仰け反って驚かれたけど……ローズウェルさんはその反応に、冷静に「そうですよね? 驚きですよね?」と深く頷く。
何だろうね?
俺、自分の体のことなのに魔法とか魔力のこと解らないからサッパリなんだけど……?
「そりゃあさぁ、こんなんできんの導王様しかいないんだけど……うわぁ……すげぇ……マジかよ。マジだ。マジすげぇ……やべぇ……」
赤髪の魔族さん、もう仕事中なのも忘れているな。
ちょっとチャラそうな見た目通りの口調になって、俺の頭に何度も手を翳して、そのたびに仰け反る。
……昨夜迷惑かけたし別にこれくらいいいんだけど……さすがにそろそろ……。
「何がそんなにすごいの? 俺も二人と一緒に驚きたい」
「失礼しました」
「すみませんライト様! でも、これ、本当に驚くことが起きたんですよ! 歴史的な事件と言っても良いですよ!」
「歴史的?」
興奮が落ち着かないままの赤髪の魔族さんの言葉に俺が首をかしげると、ローズウェルさんはいつもの仕事中の真面目な表情と口調で……でも少し興奮した様子で話を続けた。
「はい。魔王様の魔力不足を見かねて……導王様自ら、魔力を分けてくださったのです!」
「黒系統はどこの国でも希少ですからね、自国の黒系統が保有している魔力を分けてくれるなんて……しかも、あの導王様が! 魔王様に!」
「他にあの国で黒系統がいないので、仕方なくかもしれませんが……それでも快挙です。信じられません」
多分、献血的な感じ? 同じ系統しか魔力を分けられないけど、黒はレアなんだよね?
それで導王さんが……ってことか。
やっぱり導王様には感謝しないといけないのかもしれない。
「大変ありがたいことです。導王様へは後日、国としてもお礼をさせて頂くつもりですが……先ほど、導王様より連絡が入りました」
「連絡?」
ローズウェルさんが少し表情を曇らせる。
何か、無茶な見返りを要求されたとかかな?
「お叱りの連絡です」
「お叱り……?」
魔王さん、被害者なのに?
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