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第8章 その後の二人 / 嫉妬と未来の話
素材(2)
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「そちらはケルベロスと言う三つ首の犬系魔物の牙です」
「ケルベロス! すごい、俺のいた世界だと空想上の生き物だったよ。えっと……地獄の番犬?」
クラーケンより有名じゃない?
これも俺がやっていたゲームには出てこないけど、流石に異世界感が強くてテンションが上がる。
すごいなぁ。異世界って本当に空想上の生き物が存在するんだ?
エルフが行き来していた時に、こっちの生き物の話が伝わったとか?
「地獄の、と言うのは解らないですが、確かに貴族の館の番犬としても重宝されています。黒系統の魔力は縄張りを護るのに向いていますから」
縄張りを護るか……魔王さんも結解がどうとか言うし、黒系統って場所を護るのが得意なのかな?
「他に黒系の素材ですと、黒沼オオトカゲの革を編んだブレスレットがございます」
店員さんがネックレスの横にかかったブレスレットを一つ取って、近くで見せてくれる。
いかにも爬虫類らしい模様の黒い革を編んだブレスレットで、元の世界でも普通に付けている人がいそうなシンプルでオシャレなデザインだと思うけど……トカゲか。
トカゲとケルベロスなら、どう考えてもケルベロスがいいよね?
ブレスレットは腕時計との重ね付けにも合わないし。
「ケルベロスの方が良いな。あ、こっちの丸い石は?」
牙の形そのままでネックレスになっているものの横に、シンプルなシルバーのチェーンの先に、楕円形のシルバーのフレームに黒い石がはまっているネックレスが掛けてある。
「そちらは、ケルベロスの牙を削って丸くしたものです。デザイン性が上がるだけでなく、魔力循環がしやすい形です」
より健康に良いってことか。
こっちの方がいいな。シンプルなネックレスならいつも身に着けている腕時計とも指輪とも喧嘩しないし。
「いいね。これちょうだい、それで、同じものを魔王さん用に一つ買わせてもらおうかな」
「え、それでしたら両方差し上げます!」
店員さんは慌てて二つ差し出そうとするけど、それは受け取れない。
「だめ。それじゃ魔王さん喜ばないから。俺が選んで、俺がお小遣いで買ったって言う方が魔王さん喜ぶ」
俺の言葉に店員さんがまだ何か言いたそうにしたけど、観念したように笑顔になってくれた。
「……確かに飼い主様はその方が喜ばれますね。飼い主様のこと、とてもお慕いしていらっしゃるんですね……」
店員さんは笑顔を更に深め……更に更に深めて蕩けそうな笑顔になってくれたあと、もう我慢できないという様子で呻くように一言だけ声が漏れ出た。
「……か、かわいいぃぃぃぃぃ……!」
うんうん。
やっぱりこの反応だよね? パーティーの様子で「ご主人様が大好きなペットがかわいい」のは、万国共通っぽいと思ったけど、正解だった。
店員さんはなんとか表情を引き締めながら「では、お包み致します」と、奥のカウンターへ向かっていった。
あ、そうだ……
「……」
少し気になって後ろの、魔族の騎士さん二人を振り返ると、二人は「うっわぁ、ライト様かっわいい!」「魔王様のこと大好きなペット様、おかわいらしい!」という気持ちが漏れ出ているのが解る、緩みそうになる顔を必死に引き締めているところだった。
さっきの武器屋さんでの反応と違って、こっちはちゃんとこれか。
よかった……いや、よかったでよかったのか……?
「ライトくんは本当に買い物上手ですね」
俺が少し考え込んでいると、イルズちゃんが俺の意図にどこまで気が付いているのか、少し含みのある笑顔を向けてくれる。
「ふふっ、でしょう? 魔王さんを喜ばせる買い物、得意なんだ」
まぁ、店員さんに気を遣わせないためでもあったけど……イルズちゃんにはバレるよね。
本当、頼もしい友達だ。
「イルズちゃんも黒髪だから黒いアクセサリーが似合いそうだよね。おそろいにする?」
「いえ、私は遠慮しておきます。お二人の邪魔はしたくありませんし……」
イルズちゃんが珍しく自慢げに笑みを深める。
「他人とお揃いのアクセサリーなんて身につけると、シンに嫉妬されてしまうので」
それ、自慢するところ?
……とは思うけど……そうか。
シンくん、それで嫉妬するんだ。
ふーん。
そっか。
いいな。
「ケルベロス! すごい、俺のいた世界だと空想上の生き物だったよ。えっと……地獄の番犬?」
クラーケンより有名じゃない?
これも俺がやっていたゲームには出てこないけど、流石に異世界感が強くてテンションが上がる。
すごいなぁ。異世界って本当に空想上の生き物が存在するんだ?
エルフが行き来していた時に、こっちの生き物の話が伝わったとか?
「地獄の、と言うのは解らないですが、確かに貴族の館の番犬としても重宝されています。黒系統の魔力は縄張りを護るのに向いていますから」
縄張りを護るか……魔王さんも結解がどうとか言うし、黒系統って場所を護るのが得意なのかな?
「他に黒系の素材ですと、黒沼オオトカゲの革を編んだブレスレットがございます」
店員さんがネックレスの横にかかったブレスレットを一つ取って、近くで見せてくれる。
いかにも爬虫類らしい模様の黒い革を編んだブレスレットで、元の世界でも普通に付けている人がいそうなシンプルでオシャレなデザインだと思うけど……トカゲか。
トカゲとケルベロスなら、どう考えてもケルベロスがいいよね?
ブレスレットは腕時計との重ね付けにも合わないし。
「ケルベロスの方が良いな。あ、こっちの丸い石は?」
牙の形そのままでネックレスになっているものの横に、シンプルなシルバーのチェーンの先に、楕円形のシルバーのフレームに黒い石がはまっているネックレスが掛けてある。
「そちらは、ケルベロスの牙を削って丸くしたものです。デザイン性が上がるだけでなく、魔力循環がしやすい形です」
より健康に良いってことか。
こっちの方がいいな。シンプルなネックレスならいつも身に着けている腕時計とも指輪とも喧嘩しないし。
「いいね。これちょうだい、それで、同じものを魔王さん用に一つ買わせてもらおうかな」
「え、それでしたら両方差し上げます!」
店員さんは慌てて二つ差し出そうとするけど、それは受け取れない。
「だめ。それじゃ魔王さん喜ばないから。俺が選んで、俺がお小遣いで買ったって言う方が魔王さん喜ぶ」
俺の言葉に店員さんがまだ何か言いたそうにしたけど、観念したように笑顔になってくれた。
「……確かに飼い主様はその方が喜ばれますね。飼い主様のこと、とてもお慕いしていらっしゃるんですね……」
店員さんは笑顔を更に深め……更に更に深めて蕩けそうな笑顔になってくれたあと、もう我慢できないという様子で呻くように一言だけ声が漏れ出た。
「……か、かわいいぃぃぃぃぃ……!」
うんうん。
やっぱりこの反応だよね? パーティーの様子で「ご主人様が大好きなペットがかわいい」のは、万国共通っぽいと思ったけど、正解だった。
店員さんはなんとか表情を引き締めながら「では、お包み致します」と、奥のカウンターへ向かっていった。
あ、そうだ……
「……」
少し気になって後ろの、魔族の騎士さん二人を振り返ると、二人は「うっわぁ、ライト様かっわいい!」「魔王様のこと大好きなペット様、おかわいらしい!」という気持ちが漏れ出ているのが解る、緩みそうになる顔を必死に引き締めているところだった。
さっきの武器屋さんでの反応と違って、こっちはちゃんとこれか。
よかった……いや、よかったでよかったのか……?
「ライトくんは本当に買い物上手ですね」
俺が少し考え込んでいると、イルズちゃんが俺の意図にどこまで気が付いているのか、少し含みのある笑顔を向けてくれる。
「ふふっ、でしょう? 魔王さんを喜ばせる買い物、得意なんだ」
まぁ、店員さんに気を遣わせないためでもあったけど……イルズちゃんにはバレるよね。
本当、頼もしい友達だ。
「イルズちゃんも黒髪だから黒いアクセサリーが似合いそうだよね。おそろいにする?」
「いえ、私は遠慮しておきます。お二人の邪魔はしたくありませんし……」
イルズちゃんが珍しく自慢げに笑みを深める。
「他人とお揃いのアクセサリーなんて身につけると、シンに嫉妬されてしまうので」
それ、自慢するところ?
……とは思うけど……そうか。
シンくん、それで嫉妬するんだ。
ふーん。
そっか。
いいな。
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