魔王さんのガチペット

回路メグル

文字の大きさ
135 / 368
第8章 その後の二人 / 嫉妬と未来の話

素材(1)

しおりを挟む

 昼食後に連れて行ってもらったギャラリーは、期待通り、ゲームで武器とか防具を作る時に集めるような素材が沢山並んでいた。

「希少動物の中でも、魔動物……略して魔物と呼ばれる魔力を帯びた動物の素材のギャラリーです。はく製や骨格標本も購入できますが、お土産コーナーにある素材を小さく加工したアクセサリーが人気ですね」
「魔力……そのアクセサリーって魔法の効果とかがあったり?」

 ゲームだと、「このネックレスの効果で水中を歩ける」とか「この指輪の効果で炎が操れる」なんてあるけど……さすがにファンタジー脳かな?

「はい。魔族の方は、自分の魔力と同じ系統の素材を身に着けると体内の魔力の流れが良くなるので、健康グッズとして買っていかれますね」
「健康……?」

 魔力の効果ではあるけど、思ったのとは違うな……夢が無いけど、現実はそうか。

「人間にとってはただのオシャレなアクセサリーです。あ、でも……専属化しているライト様は……」

 ミチュチュちゃんが近くにいた紫のロングヘアの魔族のお姉さんの方を見る。
 シンプルなワンピース姿だけど、どうやら店員さんらしい。

「専属化されている人間の方にも、効果を感じて頂けます。近年の調査では魔力の循環が良くなって、体内の魔力量が減っても渇きを感じにくいという結果が出ています」
「あ、それいい!」

 この前、大変だったしね。魔王さんも俺がこれを身に着けていると安心できるんじゃない?

「よろしければ系統の物をお出ししましょうか? お客様の系統は……え?」

 店員さんが俺に近づいて「失礼します」と言いながら頭の、魔族なら角が生えているあたりの位置に手を翳した瞬間、目を大きく見開いた。

「あ、うそ、く、くろ? 黒系統!? と言うことは、この国に黒髪の魔族様が!?」

 そうだ。黒、珍しいんだっけ?
 店員さんはすごく驚いた後、すごく嬉しそうな顔で俺を見つめるけど……その様子を見て、ミチュチュちゃんが俺たちの間に入った。

「店員さん! この方、魔王様の専属のペット様です!」

 ミチュチュちゃんがなぜか申し訳なさそうに言うと、店員さんは何度か目を瞬かせて……。

「え? あ……そういえば、あの人気のお菓子の箱の……あ……あぁ……」

 納得するように頷いてはくれたけど……すごく残念そうに顔を引き攣らせた。

「申し訳ございません。大変失礼いたしました!」
「ライト様、すみません。この国……黒系統の魔族が……その……とてもとても貴重で……」

 店員さんだけでなく、ミチュチュちゃんも頭を下げてくれた。
 
「別に、何も失礼なことはされてないよ? 珍しい物に驚くのは当然じゃない?」
「珍しいというか……」
「ん?」

 ミチュチュちゃんの戸惑い気味な言葉に首をかしげていると、今度は店員さんが俺たちの間に割り込んだ。

「あの、よろしければお詫びに一つ差し上げます。どうぞお好きなものをお選びください!」
「それは悪いよ。俺、本当に失礼と思っていないし」

 さっきの態度が仮に失礼だとしても、アクセサリーをもらうほどの失礼ではないだろうし。
 笑顔で手を振って、全身で「気にしないで」と表現したつもりだけど、店員さんはどこか自嘲気味に笑いながら首を振った。

「いいんです。どうせ黒系統の物は国内の魔族には売れないので……人間のファッション用に仕入れているだけですので。いつも、素材の効果が薄れるまでに売り切れないんです。ぜひご使用ください」
「ライト様、本当にそうだと思います。ほら、棚に並んでいる数も、黒だけ極端に少ないでしょう?」

 確かに……ネックレスも指輪も腕輪も、他の色は一〇種類くらいが一〇個ずつは置いてあるのに、黒だけは三種類が三個くらい? 
 ここでも「黒」が貴重なのかと勝手に想像していたけど……そうか。黒髪の魔族が少ないから需要が無いんだ。
 そういう理由なら、遠慮なくもらってもいいかな。

「じゃあ……この辺りのネックレスについているのは黒い……牙? どういうもの?」

 店員さんの方を向きながら、一番目立つところに置いていた、金の細い鎖に黒い牙のような形の物が付いたネックレスを指差す。
 さっきのクラーケンみたいに、元の世界でも有名なモンスターだったりしないかなと思って尋ねてみたんだけど……当たりだった。

しおりを挟む
感想 126

あなたにおすすめの小説

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果

ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。 そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。 2023/04/06 後日談追加

〈完結〉【書籍化・取り下げ予定】「他に愛するひとがいる」と言った旦那様が溺愛してくるのですが、そういうのは不要です

ごろごろみかん。
恋愛
「私には、他に愛するひとがいます」 「では、契約結婚といたしましょう」 そうして今の夫と結婚したシドローネ。 夫は、シドローネより四つも年下の若き騎士だ。 彼には愛するひとがいる。 それを理解した上で政略結婚を結んだはずだったのだが、だんだん夫の様子が変わり始めて……?

希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう

水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。