魔王さんのガチペット

回路メグル

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番外編2 ○○が好きなメイドと、誕生日祝いの話

ライト様、かわいい!

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 結果的に、少し妥協するような形でお城勤めのメイドになった。
 仕事はやりがいがあるし、頼られるし、ペット様はかわいいし、向いていると思う。
 首都に住めて、最新の情報に触れられて、休日にはかわいいお店を見て、かわいい服をいくらでも買えて、休憩時間にはのんびり服に刺繍ができる。
 実家は隣町だから馬車で三〇分くらい。月に一度は帰って、ペットや姪っ子と遊べる。
 ついでに、増えすぎた服は実家の部屋に置かせてもらっている。
 公私ともに上手くいっている。
 いや、上手くというか……

「……私、かなり恵まれているなぁ……」

 どう考えてもそう。
 恵まれている。
 幸せ。

 だけど……もっともっと「かわいい」に触れられる人生がおくれたら……。

 っていうのは、贅沢なのかな……。


      ◆


 幸せだけど少し物足りない日々を過ごしていたある日。
 私の人生で一番の「かわいい」がやって来た。

 魔王様の新しいペット、「ライト様」だ。

 初めて、謁見の間の隅っこからお姿を拝見した瞬間から、「かわいい!!!!!!」で頭がいっぱいになった。
 その後、お世話のためにお部屋に伺って……もう、かわいいことしかおっしゃらないから更に「かわいい!!!!!!!!!」で頭がいっぱいになってしまって、何をお話したのかよく覚えていない。
 でも、これって私が「かわいい」と感じるだけで他の魔族には「かわいすぎてちょっと……」なのかなと不安になった。
 いつも、私が好きな「かわいい」はみんなにとって「かわいすぎる」から。

 でも、その心配は杞憂だった。

「リリリさん……ライト様、かわいすぎませんか?」

 詰所に戻った瞬間、執事長のローズウェルさんが呟いた。
 ローズウェルさんはご自身のかわいい顔が苦手らしく、ペット様のこともあまり「かわいい」とは言わない。
 そんなローズウェルさんにとって、かわいすぎるライト様は……?

「あ、あんなにかわいいペット様、初めてですよね……外見がかわいくて、お言葉の全てがかわいくて……か、かわいい。すごくかわいい!」

 ローズウェルさんの蕩けそうな笑顔、胸を抑える様子、熱っぽいため息……初めて見た。
 ローズウェルさんって恋人のことを語る時ですらクールな表情を崩さないのに!
 そして他のメイドや執事も……

「え~! そんなにかわいいんですか!? 謁見の間で拝見したお顔も振る舞いも最高にかわいいとは思いましたが……」
「外見で充分かわいいのに、中身もかわいいってことですよね? えぇ、どうしよう! かわいすぎて仕事が手につかなくなっちゃうかも!」

 みんな、ライト様の外見がかわいいうえに内面もかわいいことをとても喜んでいるというか……。

「良かったね、リリリさん。あなた特別かわいい人間が大好きでしょう?」
「あ……う、うん! すごく、すっごくかわいくて、これから三年、すごくすごくすごく楽しそう!」

 私が笑顔で頷くと、皆もうんうんと頷いてくれた。

 かわいいうえにかわいい、かわいすぎるペットのライト様……。
 それを嬉しそうに語る同僚たち。

「……!」

 恵まれていると感じていた私の人生が、より一層キラキラと輝き出した気がした。
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