魔王さんのガチペット

番外編２ ○○が好きなメイドと、誕生日祝いの話

ライト様、かわいすぎる！

　天使のようにかわいいライト様が来てくださったとはいえ、たった三年の契約。

　実家のペットなら「半月契約」なので、月の半分をペット、月の半分は人間の村で過ごす代わりに、三〇年程度ペットをしてもらう。
　三〇年、ゆっくりペットと仲良くなって、きちんと関係を築ける。
　最初は緊張していたペットが、だんだん私に慣れて甘えてくれるようになるのがかわいくて仕方がない！
　飼い主バカかもしれないけど、うちの子が一番かわいい！
　それに比べて魔王様のペット様は、外見は国で一番かわいい子が来るんだけど、いつも三年契約。
　三年間ほとんどお城から出ないといっても、たった三年では距離は縮まらない。
　きっとライト様も、距離が縮まりきるまでにお城を去ってしまうんだろうな～……と思っていたのに。

　初日から、魔王様との距離が一〇年一緒にいるんじゃないかというくらい近かった。

「明日の夕食は……ライトの部屋で一緒に食べることになった……ようだ？」

　ライト様が来られた日の夜。
　ライト様のお部屋へ遊びに行かれた後、メイドと執事の詰め所にやって来られた魔王様は、ご自身でも信じられないのか、首を傾げながらおっしゃった。

「夕食を？」
「一緒に？」
「ライト様のお部屋で？」

　私を含めて、その場にいたメイドも執事も全員が首を傾げた。
　言葉の意味は解る。
　明日の夜、魔王様の夕食とライト様の夕食を、同時にライト様のお部屋に運べばいいということ。
　解るけど……解らない。

「え？ あ、それは……ライト様が？」
「あぁ……ライトが、一人で食べるのは好きじゃないから一緒が良いと……俺と一緒で良いと……」

　ライト様のご提案……え……？
　
「……」
「……」
「……」
「……」

　魔王様もメイドも執事も、呆然と言葉を無くしたあと、一斉に顔を覆った。

「「「「かわいすぎる！！！！！！！！！！」」」」

「しかも、聞いてくれ、部屋を出る時にライトから『また明日』と言ってくれたんだ！　明日も部屋に行くことを当たり前に享受してくれているんだ！　かわいい……もう、かわいくて……かわいい！」
「えぇぇぇ！ かわい過ぎです！ かっわいい！」
「かわいい！ ライト様、なんて、なんてかわいい！」
「はー……す、すごい。かわいい人間って……その……かわいくて……かわいいんですね……？ はぁ……」
「あ、わ、か、かわっ、かわ……え？ えぇ？ かわい……えぇ？」

　叫んだり悶えたり放心したり混乱したり、反応は様々だけど……全員が「ライト様かわいい」で頭がいっぱいだった。

「そういえば……」

　ローズウェルさんが放心した顔のまま口を開く。

「……さ、さきほど……お部屋にお連れして、生活に関することをご説明させて頂いた時も、『わかった、ありがとう』と……ただご説明しただけでお礼を言ってくださって、なんて心優しくかわいい方なのかと……」

　ローズウェルさんが震える声で言った言葉にも、魔王様含め全員が「なにそれかわいい！」と顔をくしゃくしゃにしながら心臓を抑えた。
　そういえばそうだった。もう、言われたことが全部かわいすぎて細かく覚えていなかったけど。
　笑顔で「ありがとう」なんて歴代のペット様全員、言わなかった。
　かしこまった顔で、少し委縮しながら「承知致しました。よろしくお願い致します」だった。

　悔しい。

　うちの実家のかわいいかわいいペットでも、初日でここまで慣れてはくれなかった。
　悔しいけど……うちの実家のペットが私にとっては一番かわいいんだけど……でも……。

　ライト様は、世界一かわいいペットだった。
　悔しいけど、最高。