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番外編2 ○○が好きなメイドと、誕生日祝いの話
異世界って……(1)
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さすがに、私にとって都合が良すぎる。
いや、解ってる。私に都合がいいんじゃなくて、魔王様のためにライト様が頑張ったって解っている。
解っているんだけど……でも……。
ライト様、三年以上いてくださるって!!
しかもしかも、魔王様の専属になったから、魔王様と同じ歳の取り方! 同じ寿命なんだって!!
魔王様はもちろん、ローズウェルさんだってファイさんだって他のお城勤め全員、国民全員、諸外国の要人も、みんなみんな喜んでいると思うけど……多分、私が一番喜んでいるんじゃないかと思う。
それくらい嬉しくて、嬉しくて、ライト様の専属化お披露目式典では、新調した白いマントに銀糸で凝った花柄の刺繍をする係に立候補した。
三日徹夜して仕上げた刺繍は遠目では柄がよく解らないけど、ライト様がマントを上手に翻すたびにキラキラと輝いて、ライト様のかわいさを強調したと思う。
周囲の評判も良かった。同僚にめちゃくちゃ褒められたし、魔王様にも「ライトがマントを翻すたびに眩しくて目をつむってしまうほどかわいかった」とお言葉を頂いた。
嬉しい。
これからも、世界一かわいいライト様を間近でずっと見られる。
かわいいライト様をかわいくできる。
そして、かわいいライト様が更にかわいくなることで、みんなに「かわいい」を布教できる!!
頑張ろう。
今までだって仕事の手を抜いたことなんて無かったけど、一層頑張ろう。
◆
お部屋のソファに少しだらしなく腰掛けたライト様の前に、お茶のカップを置きながら声をかける。
「ライト様、今日はお疲れ様です」
「楽しかったけどね。流石に疲れたな~」
ライト様がお城にやって来られてから四年ほど経ったころ、ライト様のアイデアをもとに、一つの画期的な薬が生まれた。
その名も、「かわいいライトの天才クッキー」!
商品名を考えたのはもちろん魔王様で、名前の通り、かわいいライト様による天才的な発想のクッキーだ。
生まれたきっかけは、魔王様が国境の結解張替えの遠征へ出かけられた時、元気が出るようにライト様がクッキーに食べられる素材でメッセージを書いてくださったこと。
クッキーに「だいすき」とか「がんばれ」って。
発想が天才。
魔王様への愛情がかわいすぎ!
そして、この「クッキーに文字を書く」技術を応用して、医療用魔法陣を書いて焼くことで、市販の魔法薬よりも食べやすく、魔法陣の効果をダイレクトに取り込めるという超画期的なクッキーが生まれた。
効果が高いのに作り方が簡単で、国中に一気に広まり、最近は外国からの引き合いもある。
そんなクッキーが発売から半年もすれば、「ライト様のクッキーのお陰で助かった」という魔族も増えるわけで……。
「みんなすっごく元気だから。……まぁ、元気な姿が観られて、とても嬉しいけど」
「えぇ。みんな、ライト様のお陰で元気になれたんですもんね」
今日は、難病を抱えていたけど「かわいいライトの天才クッキー」のお陰で病気を克服できた子供たちが、国立病院の医療担当魔族と一緒にライト様にお礼を伝えにやって来た。
未就学児や、初等学校の低学年くらいの子どもが一〇人。
大広間を使って、ライト様にお手紙を渡したり、手作りのクッキーをくれたり、感謝の歌と踊りを披露したり……みんな、一生懸命ライト様にお礼を伝えていた。
「あの医療用クッキー、俺だけのお手柄ってわけじゃないけど……でも、あの子たちが元気になるのに貢献できたなら……うん。良かった」
ライト様が、もらった手紙を眩しそうに眺めながら頷く。
穏やかな笑みは、かわいいとも思うけど、もっと……なんだろう。実家のお兄ちゃんを思い出した。
確かライト様は、元の世界で年下のたくさんの子どもたちと生活されていたし、弟様も二人いらっしゃったはず。「お兄ちゃん」なんだなぁ……。
「クッキーはもちろんですが、今日の工作もみんな喜んでいましたね。カミヒコウキ、でしたっけ?」
「うん。あれも折り紙の一種なんだけど、思ったより盛り上がったなぁ」
形式的にお礼を受けるだけでいいのに、ライト様が「折角来てもらったなら、少しだけ一緒に遊ばない?」とお声をかけて、カミヒコウキという紙で折ったものを飛ばす遊びをみんなに教えて……かわいかったなぁ……あれはかわいかった。「かわいいペットと子供」って組み合わせ、やばい。キラーコンテンツ。
かわいかった。
あ、そういえば……
「そういえば、お絵描きもされていましたよね?」
「うん。一種類の遊びだと、苦手だったり輪に入りにくかったりする子もいるからね」
この気の使いよう!
外国の要人相手ならともかく、幼い子供にまでこんなに心を尽くして……かっわいいなぁ!!
「元の世界で小さい子に描いてあげていた物を色々描いたけど……この世界の子どもってお花や動物が好きなんだね? 女の子の絵は余っちゃったな」
「そうですね。私も子供の頃は……ん?」
ライト様が子供に描いてあげた絵の余りを机に置いた。
色も塗ってあって本格的だけど、どれも数分でささっと描いていたように思う。
何を描かれていたのかは少し離れていたから解らなかったけど……「余り」と言いながら机に置かれたのは、時々描いてくださる似顔絵とは全然違う、デフォルメの強いタッチで、女の子が勇ましいポーズをとっている絵や、どこかの国のお姫様の絵が五枚ほど。
見慣れないタッチだから絵の良し悪しはよく解らないけど……でも……これ……この女の子やお姫様が着ている服……。
「か、か、か、かっわいい!」
いや、解ってる。私に都合がいいんじゃなくて、魔王様のためにライト様が頑張ったって解っている。
解っているんだけど……でも……。
ライト様、三年以上いてくださるって!!
しかもしかも、魔王様の専属になったから、魔王様と同じ歳の取り方! 同じ寿命なんだって!!
魔王様はもちろん、ローズウェルさんだってファイさんだって他のお城勤め全員、国民全員、諸外国の要人も、みんなみんな喜んでいると思うけど……多分、私が一番喜んでいるんじゃないかと思う。
それくらい嬉しくて、嬉しくて、ライト様の専属化お披露目式典では、新調した白いマントに銀糸で凝った花柄の刺繍をする係に立候補した。
三日徹夜して仕上げた刺繍は遠目では柄がよく解らないけど、ライト様がマントを上手に翻すたびにキラキラと輝いて、ライト様のかわいさを強調したと思う。
周囲の評判も良かった。同僚にめちゃくちゃ褒められたし、魔王様にも「ライトがマントを翻すたびに眩しくて目をつむってしまうほどかわいかった」とお言葉を頂いた。
嬉しい。
これからも、世界一かわいいライト様を間近でずっと見られる。
かわいいライト様をかわいくできる。
そして、かわいいライト様が更にかわいくなることで、みんなに「かわいい」を布教できる!!
頑張ろう。
今までだって仕事の手を抜いたことなんて無かったけど、一層頑張ろう。
◆
お部屋のソファに少しだらしなく腰掛けたライト様の前に、お茶のカップを置きながら声をかける。
「ライト様、今日はお疲れ様です」
「楽しかったけどね。流石に疲れたな~」
ライト様がお城にやって来られてから四年ほど経ったころ、ライト様のアイデアをもとに、一つの画期的な薬が生まれた。
その名も、「かわいいライトの天才クッキー」!
商品名を考えたのはもちろん魔王様で、名前の通り、かわいいライト様による天才的な発想のクッキーだ。
生まれたきっかけは、魔王様が国境の結解張替えの遠征へ出かけられた時、元気が出るようにライト様がクッキーに食べられる素材でメッセージを書いてくださったこと。
クッキーに「だいすき」とか「がんばれ」って。
発想が天才。
魔王様への愛情がかわいすぎ!
そして、この「クッキーに文字を書く」技術を応用して、医療用魔法陣を書いて焼くことで、市販の魔法薬よりも食べやすく、魔法陣の効果をダイレクトに取り込めるという超画期的なクッキーが生まれた。
効果が高いのに作り方が簡単で、国中に一気に広まり、最近は外国からの引き合いもある。
そんなクッキーが発売から半年もすれば、「ライト様のクッキーのお陰で助かった」という魔族も増えるわけで……。
「みんなすっごく元気だから。……まぁ、元気な姿が観られて、とても嬉しいけど」
「えぇ。みんな、ライト様のお陰で元気になれたんですもんね」
今日は、難病を抱えていたけど「かわいいライトの天才クッキー」のお陰で病気を克服できた子供たちが、国立病院の医療担当魔族と一緒にライト様にお礼を伝えにやって来た。
未就学児や、初等学校の低学年くらいの子どもが一〇人。
大広間を使って、ライト様にお手紙を渡したり、手作りのクッキーをくれたり、感謝の歌と踊りを披露したり……みんな、一生懸命ライト様にお礼を伝えていた。
「あの医療用クッキー、俺だけのお手柄ってわけじゃないけど……でも、あの子たちが元気になるのに貢献できたなら……うん。良かった」
ライト様が、もらった手紙を眩しそうに眺めながら頷く。
穏やかな笑みは、かわいいとも思うけど、もっと……なんだろう。実家のお兄ちゃんを思い出した。
確かライト様は、元の世界で年下のたくさんの子どもたちと生活されていたし、弟様も二人いらっしゃったはず。「お兄ちゃん」なんだなぁ……。
「クッキーはもちろんですが、今日の工作もみんな喜んでいましたね。カミヒコウキ、でしたっけ?」
「うん。あれも折り紙の一種なんだけど、思ったより盛り上がったなぁ」
形式的にお礼を受けるだけでいいのに、ライト様が「折角来てもらったなら、少しだけ一緒に遊ばない?」とお声をかけて、カミヒコウキという紙で折ったものを飛ばす遊びをみんなに教えて……かわいかったなぁ……あれはかわいかった。「かわいいペットと子供」って組み合わせ、やばい。キラーコンテンツ。
かわいかった。
あ、そういえば……
「そういえば、お絵描きもされていましたよね?」
「うん。一種類の遊びだと、苦手だったり輪に入りにくかったりする子もいるからね」
この気の使いよう!
外国の要人相手ならともかく、幼い子供にまでこんなに心を尽くして……かっわいいなぁ!!
「元の世界で小さい子に描いてあげていた物を色々描いたけど……この世界の子どもってお花や動物が好きなんだね? 女の子の絵は余っちゃったな」
「そうですね。私も子供の頃は……ん?」
ライト様が子供に描いてあげた絵の余りを机に置いた。
色も塗ってあって本格的だけど、どれも数分でささっと描いていたように思う。
何を描かれていたのかは少し離れていたから解らなかったけど……「余り」と言いながら机に置かれたのは、時々描いてくださる似顔絵とは全然違う、デフォルメの強いタッチで、女の子が勇ましいポーズをとっている絵や、どこかの国のお姫様の絵が五枚ほど。
見慣れないタッチだから絵の良し悪しはよく解らないけど……でも……これ……この女の子やお姫様が着ている服……。
「か、か、か、かっわいい!」
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