263 / 368
番外編3 一番の●●
新しいペット
しおりを挟む
マティオラの葬儀を済ませた後、マティオラの遺言通り、人間の村から次のペットの打診があった。
希望者はたくさんいる、と。
気乗りはしなかったが、面会して見れば全員マティオラのように私を尊敬してくれていて、深く深く感謝してくれていて、目をキラキラさせながら「導王様のお役に立ちたいです!」と言ってくれる子ばかりだった。
マティオラのお陰だ。
マティオラが私のことを沢山自慢してくれたからだ。
マティオラの蒔いてくれた種を、そのままにはしたくなかった。
希望者の中から何度か面会を繰り返し、一人の青年を新しいペットに迎えた。
マティオラより顔は好みではなかったが、マティオラよりも明るく笑う子で、笑顔だけで言うならマティオラよりも好きになったかもしれない。
二人目のペットも人間の平均寿命ほどで亡くなったが、マティオラと同じように「幸せでした」と笑顔で息を引き取った。やはり悲しかったが、満足だった。
三人目は少し小柄だったが、城に来てから成長して、一番大柄なペットになった。今までの二人にも感じていたが、人間の「成長」を見るのは楽しいものだなと思った。
四人目はとても大人しい子だった。人前に出るのが苦手で、それでもパーティーや式典には頑張って出席してくれた。緊張しすぎて何度も失敗をしてしまったが……そういう不器用なところもかわいかった。
五人目は体を動かすのが好きと言うので、中庭の芝生の一部を運動用に区切ってやると、そこで様々な運動をしているところを見せてくれた。人間が元気でいるというだけでとても楽しかった。
マティオラが亡くなっても、人間の村長が何度代替わりしても、人間たちは私への感謝を忘れず、常に尊敬して、愛してくれた。
私からの支援が欲しくて媚びている……と嫌な見方もあるが……人間たちがくれる愛は、私には純粋なものに見えた。
国民は等しく大事な宝物だが……人間は、私の中で特別な存在になっていた。
◆
一人目のペットであるマティオラを迎えてから、いつの間にか三〇〇年近く。
五人目のペットが亡くなり、次のペット希望者と面談をすることになった。
三人目あたりから、少し時間をかけて、何度も何度も面談をして、少し城にも住んでもらって、慎重に決めるようにしている。
戦後復興も落ち着き、魔法石の供給量が上がって仕事も情勢も落ち着いたからというのと……ありがたいことに、希望者が毎回三〇人くらいに増えたからだ。
それだけ人間の人口も増えたということで、喜ばしい限りだ。
「導王様、今回の候補者です」
人間の村に出向いて、村の集会場の会議室に一次面接の会場を設けてもらった。
まずは外見の審査と言うことで、五人ずつが六回に分かれて部屋に入ってくると聞いていたが……。
「一番から五番、入りなさい」
村長の声がけで、胸に番号のついた布を貼られた、同じ白ローブ姿の男の子が五人入ってきた。
五人入ってきたのだが……。
「……!」
一番目に入ってきた、胸に「一番」と書かれた男の子から目が離せなくなった。
「一番、オファです。もうすぐ一七歳になります。憧れの導王様にお会いできて嬉しいです!」
か、
か、か、か……
かっわいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!
「導王様?」
思わず口元を押さえて下を向いてしまった私に、村長が心配そうな声をかけてくれる。
だが、まだ顔があげられない。
だって、かわいすぎないか?
好みど真ん中!
理想中の理想!
人間らしいとても美しい顔だが、親しみやすい素朴な感じがして、マティオラの影響で大好きになった焦げ茶色の髪なのもいい。ふわっとしたくせ毛のマッシュヘア、かわいい! 触れたい!
あぁそれに、ぽっちゃりとは言えないが肉付きも良く、抱き心地がよさそうだ……マティオラや歴代のペットに申し訳ないが……だが……どう考えても外見が好み過ぎて一番かわいい!!!!
「す、すまない……つづけてくれ……」
なんとか取り繕ったが、後に村長に言われた「あの時点でもう、オファを選ばれると思っていました」と。
そして、一応全員と面談し、数人を対話審査に進めたが……前回よりも時間をかけずに、「オファ」という男の子をまずは仮決定した。
希望者はたくさんいる、と。
気乗りはしなかったが、面会して見れば全員マティオラのように私を尊敬してくれていて、深く深く感謝してくれていて、目をキラキラさせながら「導王様のお役に立ちたいです!」と言ってくれる子ばかりだった。
マティオラのお陰だ。
マティオラが私のことを沢山自慢してくれたからだ。
マティオラの蒔いてくれた種を、そのままにはしたくなかった。
希望者の中から何度か面会を繰り返し、一人の青年を新しいペットに迎えた。
マティオラより顔は好みではなかったが、マティオラよりも明るく笑う子で、笑顔だけで言うならマティオラよりも好きになったかもしれない。
二人目のペットも人間の平均寿命ほどで亡くなったが、マティオラと同じように「幸せでした」と笑顔で息を引き取った。やはり悲しかったが、満足だった。
三人目は少し小柄だったが、城に来てから成長して、一番大柄なペットになった。今までの二人にも感じていたが、人間の「成長」を見るのは楽しいものだなと思った。
四人目はとても大人しい子だった。人前に出るのが苦手で、それでもパーティーや式典には頑張って出席してくれた。緊張しすぎて何度も失敗をしてしまったが……そういう不器用なところもかわいかった。
五人目は体を動かすのが好きと言うので、中庭の芝生の一部を運動用に区切ってやると、そこで様々な運動をしているところを見せてくれた。人間が元気でいるというだけでとても楽しかった。
マティオラが亡くなっても、人間の村長が何度代替わりしても、人間たちは私への感謝を忘れず、常に尊敬して、愛してくれた。
私からの支援が欲しくて媚びている……と嫌な見方もあるが……人間たちがくれる愛は、私には純粋なものに見えた。
国民は等しく大事な宝物だが……人間は、私の中で特別な存在になっていた。
◆
一人目のペットであるマティオラを迎えてから、いつの間にか三〇〇年近く。
五人目のペットが亡くなり、次のペット希望者と面談をすることになった。
三人目あたりから、少し時間をかけて、何度も何度も面談をして、少し城にも住んでもらって、慎重に決めるようにしている。
戦後復興も落ち着き、魔法石の供給量が上がって仕事も情勢も落ち着いたからというのと……ありがたいことに、希望者が毎回三〇人くらいに増えたからだ。
それだけ人間の人口も増えたということで、喜ばしい限りだ。
「導王様、今回の候補者です」
人間の村に出向いて、村の集会場の会議室に一次面接の会場を設けてもらった。
まずは外見の審査と言うことで、五人ずつが六回に分かれて部屋に入ってくると聞いていたが……。
「一番から五番、入りなさい」
村長の声がけで、胸に番号のついた布を貼られた、同じ白ローブ姿の男の子が五人入ってきた。
五人入ってきたのだが……。
「……!」
一番目に入ってきた、胸に「一番」と書かれた男の子から目が離せなくなった。
「一番、オファです。もうすぐ一七歳になります。憧れの導王様にお会いできて嬉しいです!」
か、
か、か、か……
かっわいいいいいいいいい!!!!!!!!!!!!!!!
「導王様?」
思わず口元を押さえて下を向いてしまった私に、村長が心配そうな声をかけてくれる。
だが、まだ顔があげられない。
だって、かわいすぎないか?
好みど真ん中!
理想中の理想!
人間らしいとても美しい顔だが、親しみやすい素朴な感じがして、マティオラの影響で大好きになった焦げ茶色の髪なのもいい。ふわっとしたくせ毛のマッシュヘア、かわいい! 触れたい!
あぁそれに、ぽっちゃりとは言えないが肉付きも良く、抱き心地がよさそうだ……マティオラや歴代のペットに申し訳ないが……だが……どう考えても外見が好み過ぎて一番かわいい!!!!
「す、すまない……つづけてくれ……」
なんとか取り繕ったが、後に村長に言われた「あの時点でもう、オファを選ばれると思っていました」と。
そして、一応全員と面談し、数人を対話審査に進めたが……前回よりも時間をかけずに、「オファ」という男の子をまずは仮決定した。
113
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜
上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。
体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。
両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。
せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない?
しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……?
どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに?
偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも?
……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない??
―――
病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。
※別名義で連載していた作品になります。
(名義を統合しこちらに移動することになりました)
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
獣のような男が入浴しているところに落っこちた結果
ひづき
BL
異界に落ちたら、獣のような男が入浴しているところだった。
そのまま美味しく頂かれて、流されるまま愛でられる。
2023/04/06 後日談追加
この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜
COCO
BL
「ミミルがいないの……?」
涙目でそうつぶやいた僕を見て、
騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。
前世は政治家の家に生まれたけど、
愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。
最後はストーカーの担任に殺された。
でも今世では……
「ルカは、僕らの宝物だよ」
目を覚ました僕は、
最強の父と美しい母に全力で愛されていた。
全員190cm超えの“男しかいない世界”で、
小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。
魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは──
「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」
これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました
まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。
性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。
(ムーンライトノベルにも掲載しています)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。