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第10章 その後の世界 / パーティーとやりたいことの話
パーティーの日/護られる(4)
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「……魔王さん、顔見せて」
「だめだ、今はライトに見せられるような顔をしていない」
「顔見たい。顔見て安心したい。俺の元気な顔も見せたい」
「……」
ここまで言ってやっと、魔王さんが渋々腕の力を緩めてくれ、ローズウェルさんたちは一歩下がった。
「魔王さん」
「ライト……」
向き合って、魔王さんの顔を覗き込むように見上げると、俺を見下ろす魔王さんの顔は……泣きそうな、悔しそうな、でも安堵もあるような、確かにかっこよくはない顔だった。
「魔王さん、そんな顔させちゃってごめんね」
「……ちがう、だから……」
「うん。俺は悪くないんだよね。でも、ごめん」
「……」
魔王さんがぎゅっと眉を寄せて……泣きそう? ごめん。でも……
「今、どうしても魔王さんの顔が見たかった。見せたくないのに無理やり見て、ごめん」
「……」
「俺、冷静に対応したつもりなんだけどね」
「あぁ、ライトは、落ち着いていて、えらい」
「本当は、もっと騒いで逃げたほうがよかったね。反省してる」
「……どちらの対応がよかったか、わからない」
「うん……あと、魔王さんの顔を見たらすごくほっとした」
「……そう、か」
俺がほっとしたというと、魔王さんもほっとしたみたいだった。うん。俺も魔王さんが安心してくれているほうがいい。
それに、安心したい。
「俺、やっぱり怖かったみたいというか……今頃怖くなってきた」
「……!?」
「魔王さん、まだお仕事あるのにごめんね。少しだけ……顔見ながらぎゅってしていていい?」
ローズウェルさんの気遣いも、騎士団長さんたちが対応してくれるのも、二人が心から大切に思って心配してくれるのも嬉しいし安心する。
でも、俺は魔王さんの腕の中が一番安心する。俺、魔王さんに愛して、護られているから幸せなんだって再確認した。
「もちろんだ! いくらでも、ずっと、ライトのそばにいる! ライトを必ず護る!」
「うん。ありがとう。嬉しい……大好き」
「あぁ……俺もだ。大好きだ。大好きだから……」
「うん。魔王さんが俺のこと大好きだから、俺、幸せなんだよね。ありがとう」
「ライト……ッ!」
魔王さんの前髪、長めでよかった。
俺のほうを……下を向いていると俺以外に顔が見えないから。
俺が泣かせちゃった顔、他人には絶対に見せたくなかったから。
「魔王さんも怖かったよね。もう大丈夫だからね」
「あぁ……」
「俺、無事だからね? いつものかわいいライトだからね?」
「あぁ……かわいい……」
「魔王さんもかっこいい顔して?」
「……まだできない」
あ、ちょっとかわいい。
「ふふっ」
俺がつい笑ってしまうと、魔王さんもやっと表情が和らいだ。
「あ、ちょっとかっこよくなった」
「そうか?」
「うん。俺、魔王さんの真面目な顔も笑顔もどんな顔も好きだけど、俺のことかわいいって思ってくれる顔が好き。今一番見たいのはそれ」
「そうか? そんなかわいいことを思ってくれるのか?」
あ、更に表情が和らいだ。
そうだよね。魔王さん、俺がかわいいのがいいよね。
「あ、その顔。その顔好き」
「ははっ! そう言われると、ますますライトがかわいく見える。この顔になる」
「いい循環だね」
「あぁ」
やっといつもの魔王さんだ。
どんな言葉よりも俺の笑顔で気が緩むって嬉しいな。
嬉しいけど……
「恐れ入ります、魔王様。拘束と魔力制限の処置が終わりました。結界の解除をお願いいたします」
「……あぁ」
いつまでも、ここでこうしているわけにはいかない。
俺から名残惜しそうに片手だけ離した魔王さんは、何か聞き取れない呪文を唱えて、犯人の手とナイフを拘束していた魔法を解除した。
「私たち衛兵は地下牢へ向かいますが……」
「頼む。魔王様とライト様の警備は騎士団で行おう」
「警備用の魔法陣を取ってきます。魔王様の執務室に……窓と扉と……」
「私は一度ドーラルさんたちに報告をしてからライト様のおそばに付き添います」
みんなが俺たちの安全を確保しつつ、仕事に戻る準備を進めてくれている。
今日は大変な会議やパーティーだったから、魔王さんもみんなも特別忙しいから仕方がないよね。
「……」
「……」
魔王さん、「離れたくない」って顔で俺を見ている。
俺も同じ顔しているはず。
だって今離れたら、魔王さんはきっとまた、辛い顔をしそう。
なにより、俺が……離れたくない。
俺、自分では強いつもりでいたけど、弱かった。それを自覚すると……いろいろな意味で、だめだな。離れたくない。ただただ離れたくない。
「ライト様……」
俺も魔王さんも、何も言えないで見つめあっていると、ローズウェルさんが優しく声をかけてくれた。
「もしよろしければ、魔王様のお仕事が終わられるまで、執務室でお休みになられませんか?」
執務室で? 魔王さんと同じ部屋で?
「いいの?」
「このご様子ですと、魔王様はライト様と離れると……お仕事になるかどうか」
「あ……」
確かに。俺のことが気になって絶対に集中できないと思う。
「それに、お二人が一緒のお部屋にいてくださるほうが、警備を強化する場所が絞られますので」
「ローズウェルの言うとおりだ。そうしていただけると騎士団も助かる」
「ローズウェルさん……騎士団長さん……」
これ、俺と魔王さんに気を使わせないための言い訳だよね。
二人の優しい笑顔、騎士さんや兵隊さんの優しく頷く様子……魔王さんの、「離したくない」というような腕の力。
嬉しいのに、泣きそうだ。
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて……いい? 魔王さん?」
「もちろんだ。そばにいてくれ、ライト」
俺、元の世界ではずっと「お兄ちゃん」として「ホスト」や「ヒモ」としてがんばっていて、頼る人がいないから弱音を吐き出す場所ってなくて……
でも今の俺は、弱い俺を助けてくれる人たちがいて、怖い時、悲しい時、辛い時、魔王さんに抱き着いていいんだなと思うと、ひどく安心した。
「だめだ、今はライトに見せられるような顔をしていない」
「顔見たい。顔見て安心したい。俺の元気な顔も見せたい」
「……」
ここまで言ってやっと、魔王さんが渋々腕の力を緩めてくれ、ローズウェルさんたちは一歩下がった。
「魔王さん」
「ライト……」
向き合って、魔王さんの顔を覗き込むように見上げると、俺を見下ろす魔王さんの顔は……泣きそうな、悔しそうな、でも安堵もあるような、確かにかっこよくはない顔だった。
「魔王さん、そんな顔させちゃってごめんね」
「……ちがう、だから……」
「うん。俺は悪くないんだよね。でも、ごめん」
「……」
魔王さんがぎゅっと眉を寄せて……泣きそう? ごめん。でも……
「今、どうしても魔王さんの顔が見たかった。見せたくないのに無理やり見て、ごめん」
「……」
「俺、冷静に対応したつもりなんだけどね」
「あぁ、ライトは、落ち着いていて、えらい」
「本当は、もっと騒いで逃げたほうがよかったね。反省してる」
「……どちらの対応がよかったか、わからない」
「うん……あと、魔王さんの顔を見たらすごくほっとした」
「……そう、か」
俺がほっとしたというと、魔王さんもほっとしたみたいだった。うん。俺も魔王さんが安心してくれているほうがいい。
それに、安心したい。
「俺、やっぱり怖かったみたいというか……今頃怖くなってきた」
「……!?」
「魔王さん、まだお仕事あるのにごめんね。少しだけ……顔見ながらぎゅってしていていい?」
ローズウェルさんの気遣いも、騎士団長さんたちが対応してくれるのも、二人が心から大切に思って心配してくれるのも嬉しいし安心する。
でも、俺は魔王さんの腕の中が一番安心する。俺、魔王さんに愛して、護られているから幸せなんだって再確認した。
「もちろんだ! いくらでも、ずっと、ライトのそばにいる! ライトを必ず護る!」
「うん。ありがとう。嬉しい……大好き」
「あぁ……俺もだ。大好きだ。大好きだから……」
「うん。魔王さんが俺のこと大好きだから、俺、幸せなんだよね。ありがとう」
「ライト……ッ!」
魔王さんの前髪、長めでよかった。
俺のほうを……下を向いていると俺以外に顔が見えないから。
俺が泣かせちゃった顔、他人には絶対に見せたくなかったから。
「魔王さんも怖かったよね。もう大丈夫だからね」
「あぁ……」
「俺、無事だからね? いつものかわいいライトだからね?」
「あぁ……かわいい……」
「魔王さんもかっこいい顔して?」
「……まだできない」
あ、ちょっとかわいい。
「ふふっ」
俺がつい笑ってしまうと、魔王さんもやっと表情が和らいだ。
「あ、ちょっとかっこよくなった」
「そうか?」
「うん。俺、魔王さんの真面目な顔も笑顔もどんな顔も好きだけど、俺のことかわいいって思ってくれる顔が好き。今一番見たいのはそれ」
「そうか? そんなかわいいことを思ってくれるのか?」
あ、更に表情が和らいだ。
そうだよね。魔王さん、俺がかわいいのがいいよね。
「あ、その顔。その顔好き」
「ははっ! そう言われると、ますますライトがかわいく見える。この顔になる」
「いい循環だね」
「あぁ」
やっといつもの魔王さんだ。
どんな言葉よりも俺の笑顔で気が緩むって嬉しいな。
嬉しいけど……
「恐れ入ります、魔王様。拘束と魔力制限の処置が終わりました。結界の解除をお願いいたします」
「……あぁ」
いつまでも、ここでこうしているわけにはいかない。
俺から名残惜しそうに片手だけ離した魔王さんは、何か聞き取れない呪文を唱えて、犯人の手とナイフを拘束していた魔法を解除した。
「私たち衛兵は地下牢へ向かいますが……」
「頼む。魔王様とライト様の警備は騎士団で行おう」
「警備用の魔法陣を取ってきます。魔王様の執務室に……窓と扉と……」
「私は一度ドーラルさんたちに報告をしてからライト様のおそばに付き添います」
みんなが俺たちの安全を確保しつつ、仕事に戻る準備を進めてくれている。
今日は大変な会議やパーティーだったから、魔王さんもみんなも特別忙しいから仕方がないよね。
「……」
「……」
魔王さん、「離れたくない」って顔で俺を見ている。
俺も同じ顔しているはず。
だって今離れたら、魔王さんはきっとまた、辛い顔をしそう。
なにより、俺が……離れたくない。
俺、自分では強いつもりでいたけど、弱かった。それを自覚すると……いろいろな意味で、だめだな。離れたくない。ただただ離れたくない。
「ライト様……」
俺も魔王さんも、何も言えないで見つめあっていると、ローズウェルさんが優しく声をかけてくれた。
「もしよろしければ、魔王様のお仕事が終わられるまで、執務室でお休みになられませんか?」
執務室で? 魔王さんと同じ部屋で?
「いいの?」
「このご様子ですと、魔王様はライト様と離れると……お仕事になるかどうか」
「あ……」
確かに。俺のことが気になって絶対に集中できないと思う。
「それに、お二人が一緒のお部屋にいてくださるほうが、警備を強化する場所が絞られますので」
「ローズウェルの言うとおりだ。そうしていただけると騎士団も助かる」
「ローズウェルさん……騎士団長さん……」
これ、俺と魔王さんに気を使わせないための言い訳だよね。
二人の優しい笑顔、騎士さんや兵隊さんの優しく頷く様子……魔王さんの、「離したくない」というような腕の力。
嬉しいのに、泣きそうだ。
「ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて……いい? 魔王さん?」
「もちろんだ。そばにいてくれ、ライト」
俺、元の世界ではずっと「お兄ちゃん」として「ホスト」や「ヒモ」としてがんばっていて、頼る人がいないから弱音を吐き出す場所ってなくて……
でも今の俺は、弱い俺を助けてくれる人たちがいて、怖い時、悲しい時、辛い時、魔王さんに抱き着いていいんだなと思うと、ひどく安心した。
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