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第六章~鳥籠の愛~
三百六十一話
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「はぁ……」
ドアを施錠し、息を吐いた。
ずるずるとその場にしゃがみ込んで、膝を抱えた。喉で嗚咽が潰れて、焼けつくみたいに痛い。
――陽平のばか……!
どうして、って何度もした問いかけが、グルグル回る。
ずるいよ。
酷い事ばっかするくせに、自分が傷ついたみたいな顔するなんて……ぼくがそれに弱いとわかってしてるなら、もう悪魔やんか。
――『成己……俺は……』
陽平の悲しい声が、頭の中から離れてくれなくて、ううと唸る。
……陽平は、いつだってそうや。
不機嫌に人を跳ねのける癖に、ぼくが怒ると、なんだか寂しそうにする。やから、ぼく……気になって放っておけなくなっちゃうん。
今だって、頭では絶対に許せないって思ってるのに。心が、ズキズキって痛くて、苦しい。
「ううっ……」
……でもね、陽平。
その悲しいような、ばつの悪い顔をしていれば、今度もぼくが許すって思ってるなら、甘いんよ。
ぎゅっと瞑った目尻から、ぬるい涙が伝う。
――いつもの喧嘩じゃ、ない。ぼくは、ぜったいに謝らへんねんから……
あの頃は、陽平との未来を守りたかった。
やから、ぼくは……
ピリリリ!
ぐすんと鼻を啜ったとき――唐突に、スマホの着信音が鳴り響く。
ぼくは、弾かれたように顔を上げた。カウンターの上で震えるスマホを手に取れば、宏ちゃんからの電話やった。
「あ……!」
ぼくは、はっとして頬を拭う
泣いていたことがバレないように、乱れた呼吸を整えると、すぐに受話器を上げた。
「……もしもし、宏ちゃん?」
『成?』
穏やかな低い声が、耳元に響く。
それだけで、胸の奥が安堵に温もっていくみたいやった。ぼくは、スマホに頬を寄せ、優しい声に聞き入ってしまう。
『今から帰るよ。何も変わりないか?』
「あ……うんっ。宏ちゃんは、大丈夫? あの男の人は……」
宏ちゃんは、穏やかに頷いた。
『ああ、その件は何とかなったよ。彼はあのまま、入院することになったんだが――詳しい話は、また家に着いてから話すよ』
「わかった。気をつけてね」
『戸締りに気をつけてな』
通話を切り、ほう、と安堵の息を吐いた。
がちがちに強張っていた体が、一気にしゃんとした気がする。――宏ちゃんが帰ってきてくれるから、一人じゃなくなる。
そう思うだけで、なんて心強いんやろう。
「宏ちゃん……くしゅっ!」
安堵した途端、くしゃみが出てしまった。雨に濡れた服が、にわかに冷たく重く感じる。ぼくは自分を抱いて、がたがたと身震いした。
「い、いけない……宏ちゃんが帰ってくる前に、着替えなきゃ。それと、床も拭き直して…………ああっ、晩ごはんの支度も、途中やった!」
濡れた靴の跡がついちゃった床とか、作りかけの晩ごはんが目に入り、ぼくは青くなる。
疲れて帰ってくる宏ちゃんを迎えよう、って思ってたのに。思わぬアクシデントのせいで、ちっとも出来てへん。
「急いで、片付けなきゃっ」
大急ぎでぜんぶ綺麗にして、宏ちゃんのことを迎えよう。
手始めに、濡れた服を着替えることにして、ぼくは階段を駆け上がった。
ドアを施錠し、息を吐いた。
ずるずるとその場にしゃがみ込んで、膝を抱えた。喉で嗚咽が潰れて、焼けつくみたいに痛い。
――陽平のばか……!
どうして、って何度もした問いかけが、グルグル回る。
ずるいよ。
酷い事ばっかするくせに、自分が傷ついたみたいな顔するなんて……ぼくがそれに弱いとわかってしてるなら、もう悪魔やんか。
――『成己……俺は……』
陽平の悲しい声が、頭の中から離れてくれなくて、ううと唸る。
……陽平は、いつだってそうや。
不機嫌に人を跳ねのける癖に、ぼくが怒ると、なんだか寂しそうにする。やから、ぼく……気になって放っておけなくなっちゃうん。
今だって、頭では絶対に許せないって思ってるのに。心が、ズキズキって痛くて、苦しい。
「ううっ……」
……でもね、陽平。
その悲しいような、ばつの悪い顔をしていれば、今度もぼくが許すって思ってるなら、甘いんよ。
ぎゅっと瞑った目尻から、ぬるい涙が伝う。
――いつもの喧嘩じゃ、ない。ぼくは、ぜったいに謝らへんねんから……
あの頃は、陽平との未来を守りたかった。
やから、ぼくは……
ピリリリ!
ぐすんと鼻を啜ったとき――唐突に、スマホの着信音が鳴り響く。
ぼくは、弾かれたように顔を上げた。カウンターの上で震えるスマホを手に取れば、宏ちゃんからの電話やった。
「あ……!」
ぼくは、はっとして頬を拭う
泣いていたことがバレないように、乱れた呼吸を整えると、すぐに受話器を上げた。
「……もしもし、宏ちゃん?」
『成?』
穏やかな低い声が、耳元に響く。
それだけで、胸の奥が安堵に温もっていくみたいやった。ぼくは、スマホに頬を寄せ、優しい声に聞き入ってしまう。
『今から帰るよ。何も変わりないか?』
「あ……うんっ。宏ちゃんは、大丈夫? あの男の人は……」
宏ちゃんは、穏やかに頷いた。
『ああ、その件は何とかなったよ。彼はあのまま、入院することになったんだが――詳しい話は、また家に着いてから話すよ』
「わかった。気をつけてね」
『戸締りに気をつけてな』
通話を切り、ほう、と安堵の息を吐いた。
がちがちに強張っていた体が、一気にしゃんとした気がする。――宏ちゃんが帰ってきてくれるから、一人じゃなくなる。
そう思うだけで、なんて心強いんやろう。
「宏ちゃん……くしゅっ!」
安堵した途端、くしゃみが出てしまった。雨に濡れた服が、にわかに冷たく重く感じる。ぼくは自分を抱いて、がたがたと身震いした。
「い、いけない……宏ちゃんが帰ってくる前に、着替えなきゃ。それと、床も拭き直して…………ああっ、晩ごはんの支度も、途中やった!」
濡れた靴の跡がついちゃった床とか、作りかけの晩ごはんが目に入り、ぼくは青くなる。
疲れて帰ってくる宏ちゃんを迎えよう、って思ってたのに。思わぬアクシデントのせいで、ちっとも出来てへん。
「急いで、片付けなきゃっ」
大急ぎでぜんぶ綺麗にして、宏ちゃんのことを迎えよう。
手始めに、濡れた服を着替えることにして、ぼくは階段を駆け上がった。
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