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第六章~鳥籠の愛~
三百九十四話【SIDE:宏章】
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宍倉さんが蓑崎に近い人間だと言うのは、何となく気づいていた。
味方としてか、敵としてかは判別がつかなかったが。少なくとも、”あんな映像”を手中におさめるほどには、経営者の一族に近い人間なのだろうと。
――ただ、彼が口にした「報恩謝徳」という言葉。あれは、蓑崎の先代が大事にしていた理念だ。ポロッと出るくらいには、蓑崎に愛着のある人だろうとは思ってたんだよな。
肩を震わせる少女を抱き留める宍倉さんの目には、温かな情がたたえられている。やさしい風景を傍観しつつ、俺は安堵の息を吐いた。
感じの良い人が非道だとは思いたくないし、子どもが裏切られる姿も見たくはない。
と――カウンターをそっと出てきた成が、俺の袖を軽く引く。
「……宏ちゃん」
はしばみ色の目が心配そうに、宍倉さん達と俺とを行き来している。「どうしよう?」と顔に書いてあって、思わず頬がほころぶ。こういうとき、いたずらに声をかけることも、すっかり放っておくこともしない成が、好きだ。
俺は、胸のあたりにあるふわふわした頭に、ぽんと手を置いた。
「二人は大丈夫だよ。事情がありそうだし、そっとしといてあげよう」
「……そうやねっ。それがいいよね」
安心させるよう微笑みかけると、成は表情を和らげた。強張っていた華奢な肩から力が抜ける。
それから、心配そうな他のお客たちに、二人で頭を下げた。人差し指を唇に当て「そっとしてあげましょう」とジェスチャーすると――みな、ホッとした笑顔で頷いてくれる。
杉田さんはハンカチで目尻を拭いながら、声を滲ませた。
「……喉が渇いたねえ。成ちゃん、コーヒーのおかわりくれるかい?」
「はい、ただいま」
成が笑顔で応じ、カウンターに戻っていく。ひらひら、とエプロンのリボンが腰で揺れる。
しだいに、何事も無かったようにおしゃべりが復活し、店内が賑わいを取り戻した。みな、彼らが感動の再会の真っ最中と察してくれているのだ。
――いいお客さん達だよなぁ。
しみじみとそう思い、俺も仕事に戻るべくカウンターに入る。――親切なお客さん達に、ちょっとした焼き菓子でも振舞おうか。
成に「ちょっと外すな」と倉庫を指さすと、にっこりと笑顔が返ってきた。
ストックしてるクッキーをいくつか見繕い、箱を抱えて戻ると、すでにお客の数ぶんの小皿を用意してくれてあった。
「あとは、ぼくが。店長は軽食のほうお願いしますっ」
「ああ、ありがとうな」
箱を渡しながら、本当に俺を良く知る幼馴染を愛しく思う。――長くそばに居るから、何も言わなくてもなんでも伝わるような気がする。幸せな錯覚だ。
「……」
手を洗い、カウンターの隅の席に何気なく目をやった。宍倉さんと蓑崎さんは、落ち着いた様子で話しているようだった。
何の言葉を交わしているかはわからないが――和やかに終われば良いと思う。
味方としてか、敵としてかは判別がつかなかったが。少なくとも、”あんな映像”を手中におさめるほどには、経営者の一族に近い人間なのだろうと。
――ただ、彼が口にした「報恩謝徳」という言葉。あれは、蓑崎の先代が大事にしていた理念だ。ポロッと出るくらいには、蓑崎に愛着のある人だろうとは思ってたんだよな。
肩を震わせる少女を抱き留める宍倉さんの目には、温かな情がたたえられている。やさしい風景を傍観しつつ、俺は安堵の息を吐いた。
感じの良い人が非道だとは思いたくないし、子どもが裏切られる姿も見たくはない。
と――カウンターをそっと出てきた成が、俺の袖を軽く引く。
「……宏ちゃん」
はしばみ色の目が心配そうに、宍倉さん達と俺とを行き来している。「どうしよう?」と顔に書いてあって、思わず頬がほころぶ。こういうとき、いたずらに声をかけることも、すっかり放っておくこともしない成が、好きだ。
俺は、胸のあたりにあるふわふわした頭に、ぽんと手を置いた。
「二人は大丈夫だよ。事情がありそうだし、そっとしといてあげよう」
「……そうやねっ。それがいいよね」
安心させるよう微笑みかけると、成は表情を和らげた。強張っていた華奢な肩から力が抜ける。
それから、心配そうな他のお客たちに、二人で頭を下げた。人差し指を唇に当て「そっとしてあげましょう」とジェスチャーすると――みな、ホッとした笑顔で頷いてくれる。
杉田さんはハンカチで目尻を拭いながら、声を滲ませた。
「……喉が渇いたねえ。成ちゃん、コーヒーのおかわりくれるかい?」
「はい、ただいま」
成が笑顔で応じ、カウンターに戻っていく。ひらひら、とエプロンのリボンが腰で揺れる。
しだいに、何事も無かったようにおしゃべりが復活し、店内が賑わいを取り戻した。みな、彼らが感動の再会の真っ最中と察してくれているのだ。
――いいお客さん達だよなぁ。
しみじみとそう思い、俺も仕事に戻るべくカウンターに入る。――親切なお客さん達に、ちょっとした焼き菓子でも振舞おうか。
成に「ちょっと外すな」と倉庫を指さすと、にっこりと笑顔が返ってきた。
ストックしてるクッキーをいくつか見繕い、箱を抱えて戻ると、すでにお客の数ぶんの小皿を用意してくれてあった。
「あとは、ぼくが。店長は軽食のほうお願いしますっ」
「ああ、ありがとうな」
箱を渡しながら、本当に俺を良く知る幼馴染を愛しく思う。――長くそばに居るから、何も言わなくてもなんでも伝わるような気がする。幸せな錯覚だ。
「……」
手を洗い、カウンターの隅の席に何気なく目をやった。宍倉さんと蓑崎さんは、落ち着いた様子で話しているようだった。
何の言葉を交わしているかはわからないが――和やかに終われば良いと思う。
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