いつでも僕の帰る場所

高穂もか

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第六章~鳥籠の愛~

三百九十七話【SIDE:玻璃】

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 それから、私達は時間が許すかぎり話をした。お互いの近況とか、話せばきりがないみたいだった。離れていたのは、ほんの短い期間のはずなのに不思議だ。

「ええっ、ここに倒れていたんですか?!」
「ええ、恥ずかしながら……」

 宍倉さんは、驚いたことに野江さんご夫妻のお店――この場所で倒れていたところを助けられたらしい。
 主従そろって、商売仇の野江さんに助けられるなんて!

「おじいさまが知ったら、怒髪天ですね」
「全くです。竹刀を持って追いかけられたかもしれません」

 思わず、顔を見合わせて笑ってしまった。
 でも、本当はさ。おじいさまも宍倉さんが無事なら、何も怒らないとは思ってるんだよね。親父と違って、情に篤い人だから。
 
「……それで今は、住み込みで働いているんですか。落ち着かれて良かったです」
「はい、仲の良いご夫婦が営むうどんのお店でして。力仕事のできる若者を探していたとかで、運が良かったです」
 
 宍倉さんは、爽やかに笑った。「若様も近くに寄ることがあれば、食べに来てください」と店の名刺を渡される。白い長方形の紙片に、店の住所と電話番号が書かれていた。宍倉さんのスマホは、壊されたついでに解約してしまったらしいのだ。それで、連絡も出来なかったんだってさ。

「本当に、ご心配をおかけしました」
「心配は当然ですし……こうしてお会いできたんだし、いいじゃありませんか」

 宍倉さんは申し訳なさそうだったけど、私は安堵した。ひょっとして、私に連絡を取りたくないんじゃないかって――そういう可能性を一ミリも考えなかったわけじゃないからさ。
 結局は全くの杞憂で。これからは、このお店に行けば連絡が取れると解ったからいいのだ。
 有能な宍倉さんは、うどんのお店でも重宝されているらしい。
 
 ――いずれはエンジニアに戻るのか、聞いてみたいけれど……今は言うべきじゃないよな。
 
 宍倉さんに会ったら、聞こうと思ってたことだけどね。
 よく考えたら、聞いてどうできるわけでもないし、私の自己満足だよなって。生活がいったん落ち着いたときに、未来のことを聞くのは無粋の極みな気がするし。 
 
「店主いわく、私はうどんを踏むのがうまいそうですよ」
「そうなんですか。特技発見ですね」
 
 宍倉さんは、ことさら前向きに話してくれていた。私に、気負わせまいとしてくれているんだって、わかる。「私の責任は自分で持つ」と言われたことが、胸にすこし寂しい影を呼ぶ。
 でも、きっと……子ども扱いされることは、歯がゆくも有難いことだ。
 
 ――いまは、力をつけよう。
 
 私は子供だ。大人になるまでの、道のりはまだまだ長い。――でも、その分たくさんの力が貯められるはずだ。
 いつか……彼が手助けが必要だと言ってくれたときに、力になれるように。
 
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