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第六章~鳥籠の愛~
四百一話【SIDE:宏章】
コトン、と細身のグラスがテーブルに二個置かれる。「ごゆっくり」と一声かけて友人が退室した後……宍倉さんが、口を開いた。
「野江さん、トマトジュースなんですね」
「車で来たもので……それに恥ずかしながら、酒癖が悪いらしいんですよ。宍倉さんはどうぞ。お気遣いなく」
嘘である。
車くらい代行を頼めばいいし、俺はどれだけ飲んでも、酔っぱらったことはない。
ただ、真面目な話をしたいときに、あまり飲みたくはないよな。飲みの席で、シラフでいようとする奴は警戒されるから、絡み酒のふりをしているが。
「いえいえ、私は下戸でして。それに、こういう場所のミックスジュースに目が無いんですよ」
宍倉さんはグラスを手元に引きよせて、穏やかに目を細めた。俺も「わかります」と笑った。
――……夜に会いたいって誘いをして、飲めない人は初めてだな。
二人して、酒を飲まない飲み会か。
こりゃ、大真面目な話になるな――と思いながら、俺もグラスを持ち上げた。
「この店は、店主が果物にこだわってましてね。酒が飲めなくても楽しめると評判なんですよ」
「そうなんですか。どうりで瑞々しくて、良い香りがします」
つらつらと話しつつ、おのおの黙って口を潤す。「乾杯をしよう」とどちらも言いださなかったのは、そういう会でもないと、互いに解っていたからかもしれない。
コトンとグラスを置き、相手を見据える。
「さて。早速ですが、本題に入らせて頂いても構いませんか?」
わざわざ、ジュースを飲みに来たわけじゃないものな。宍倉さんもグラスを置き、微笑した。
「はい、もちろんです」
「では……まず、ここに俺を呼び出した理由を、聞かせて頂きたいですね」
単刀直入に切り込む。小説ならともかく、前置きは短いに越したことはない。
「それは――野江さんと、お話がしたかったからです」
「ん?」
目を丸くすると、宍倉さんはにこりとし、手のひらで自分を指す。
「私は、天涯孤独の身の上なんです。ああ……親戚はいるので厳密には違いますが、早いうちに愛すべきものは家族ではなく「他人」だなと悟っておりまして。ですから、信頼できる人と見れば、アプローチすることにしています。――私と友人になって欲しい、とね」
「……はあ」
直球すぎる言葉に、俺は少々面食らう。ジュースひと口でする会話でもない気がするが、そういうタイプなのか。
それとも、まず胸襟を開いて見せて、こちらのガードを緩めようと言う戦略か?
よくわからんが、ともかく微笑み返す。
「光栄ですね。俺も気が合いそうだなあって思ってました」
「おや、それは嬉しいです」
「しかし、俺達のルーツは商売敵の野江と蓑崎ですがね。俺はとっくに家を出ていますし、家業にはとんと疎いもので……とくに、面白いことも話せないと思いますが」
と、一応釘をさしておく。
野江の情報を掴もうとしてるなら無駄だ。俺は自慢じゃないが、野江については株を少し持ってるくらいで、経営のことは全く関わっていない。
「野江さん、トマトジュースなんですね」
「車で来たもので……それに恥ずかしながら、酒癖が悪いらしいんですよ。宍倉さんはどうぞ。お気遣いなく」
嘘である。
車くらい代行を頼めばいいし、俺はどれだけ飲んでも、酔っぱらったことはない。
ただ、真面目な話をしたいときに、あまり飲みたくはないよな。飲みの席で、シラフでいようとする奴は警戒されるから、絡み酒のふりをしているが。
「いえいえ、私は下戸でして。それに、こういう場所のミックスジュースに目が無いんですよ」
宍倉さんはグラスを手元に引きよせて、穏やかに目を細めた。俺も「わかります」と笑った。
――……夜に会いたいって誘いをして、飲めない人は初めてだな。
二人して、酒を飲まない飲み会か。
こりゃ、大真面目な話になるな――と思いながら、俺もグラスを持ち上げた。
「この店は、店主が果物にこだわってましてね。酒が飲めなくても楽しめると評判なんですよ」
「そうなんですか。どうりで瑞々しくて、良い香りがします」
つらつらと話しつつ、おのおの黙って口を潤す。「乾杯をしよう」とどちらも言いださなかったのは、そういう会でもないと、互いに解っていたからかもしれない。
コトンとグラスを置き、相手を見据える。
「さて。早速ですが、本題に入らせて頂いても構いませんか?」
わざわざ、ジュースを飲みに来たわけじゃないものな。宍倉さんもグラスを置き、微笑した。
「はい、もちろんです」
「では……まず、ここに俺を呼び出した理由を、聞かせて頂きたいですね」
単刀直入に切り込む。小説ならともかく、前置きは短いに越したことはない。
「それは――野江さんと、お話がしたかったからです」
「ん?」
目を丸くすると、宍倉さんはにこりとし、手のひらで自分を指す。
「私は、天涯孤独の身の上なんです。ああ……親戚はいるので厳密には違いますが、早いうちに愛すべきものは家族ではなく「他人」だなと悟っておりまして。ですから、信頼できる人と見れば、アプローチすることにしています。――私と友人になって欲しい、とね」
「……はあ」
直球すぎる言葉に、俺は少々面食らう。ジュースひと口でする会話でもない気がするが、そういうタイプなのか。
それとも、まず胸襟を開いて見せて、こちらのガードを緩めようと言う戦略か?
よくわからんが、ともかく微笑み返す。
「光栄ですね。俺も気が合いそうだなあって思ってました」
「おや、それは嬉しいです」
「しかし、俺達のルーツは商売敵の野江と蓑崎ですがね。俺はとっくに家を出ていますし、家業にはとんと疎いもので……とくに、面白いことも話せないと思いますが」
と、一応釘をさしておく。
野江の情報を掴もうとしてるなら無駄だ。俺は自慢じゃないが、野江については株を少し持ってるくらいで、経営のことは全く関わっていない。
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