いつでも僕の帰る場所

高穂もか

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第六章~鳥籠の愛~

四百三話【SIDE:宏章】

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 俺は思わず、額を打った。
 自分には関係なかったもんで、忘れてた。 
 
 ……一般的にオメガを国から買い取る際は、配偶者となる引受人の他に後見人を置く。
 支払い能力のない未成年でもオメガを引き取れるのは、後見人がいるおかげだ。また、失業、大病など――引受人の身に何かあって、一時的に上納金を支払えなくなったときの救済措置でもある。
 大抵は引受人の保護者や、オメガの実家が担う。第三者と密約を交わし援助してもらうこともあるが、これは法的に認められていないので、論ずるに値しないが――。
 宍倉さんを見ると、頷いている。
 
「晶様の場合は、蓑崎家が後見になる条件で、椹木家と婚約を結んでいます。ですから……」 
「晶さんが嫁いでも、蓑崎家との縁が切れることはないということですか。なるほど……でも、意外ですね。椹木家の規模であれば、向こうが後見になることも出来たのでは?」

 普通は、オメガへの責任感を見せるため、引受人となる家の方が後見を名乗り出るものだ。もちろん、家の規模が小さい場合はオメガの実家に頼むこともなくはないが。
 オメガ愛護主義で知られている椹木家が、後見になるのを躊躇うとは思えない。

「おっしゃる通りです」

 宍倉さんは微笑した。いくぶん、疲れて見える笑みだった。
 
「椹木家は、そのように申し出て下さったそうです。ですが……現当主が断ったそうなのです。――晶様の身柄を、蓑崎に残すためだと言って。後見になれば、オメガの身柄を椹木と蓑崎で半分ずつ支えることになりますから。晶様が婚家で不当な扱いを受けたとき、すぐに抗議できる立場でなければならないと……断固として譲らなかったそうです」
「なんと……まあ。過保護ですね」

 思わず、口をついて出た。
 いくつになっても、嫁いでも、可愛い子供ということか。
 
「はい。椹木家はそれもあって、城山との一件があってもすぐに破談とはいかないようです。もちろん、アルファとオメガのこと、それだけではないでしょうが……」
「……」
 
 城山との一件を持ち出され、思わず体に力が籠った。城山陽平と蓑崎晶の不貞で、成は心身共にぼろぼろにされたのだから。
 俺はアルファだから、城山が一番憎い。だが……蓑崎。

――あの子に捨てられる恐怖を味わわせた。それなのに、自分はゆうゆうと守られているわけか……

 怒りを堪えるため腕を組み、深く息を吐く。

「申し訳ありません、ご不快な話を……ですが、どうかお聞きください」

 宍倉さんは頭を下げると、言葉を続けた。
 
「現当主は、晶様があれほどのことをしでかしたと言うのに、叱りもしませんでした。椹木の監督不行き届きを責め……あろうことか、子どもである若様に尻拭いをせよと命じました」
「醜いですね……ああ、失礼」
「いいえ、その通りです。そのとき、悟ったんです……この男は、絶対に変わらないのだと。自分の満足の為、玻璃様のことも、蓑崎のことも利用し続けると……」
 
 言葉を切った宍倉さんは、深く俯いた。
 そして――次に顔を上げたとき、彼の目には決意が満ちていた。
 
「宏章さん、お願いがあります。玻璃様を救うため――共に、蓑崎晶を失墜させませんか?」
 
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