俺は魔法使いの息子らしい。

高穂もか

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第一部 決闘大会編

百八十八話 

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「オレ、あれから考えてたんだよね」
 
 せかせかと廊下を歩きながら、二見は話す。
 
「何を?」
「うん、あのさ。今までは白状させることばっか、考えてたんだけど。ちょっとアプローチを変えるべきなのかなってね」
「ほほう。アプローチ……」
「ま、詳しいことは後で話すよ」
 
 二見は、大げさに肩を竦めてみせた。
 ちなみに、今は305に向かっている最中だったりする。ひとに聞かれたくない話を、するんだそうだ。
 廊下には、ホームルームを終えた生徒達が、のんびりと溢れてきてて。用心は、するだけしたほうがいいってなわけで。 
 
「ところで、居残りってどうしたわけ?」
「いやあ、ちょっとあってさー」
 
 はははと談笑しながら歩いて、21号館も目前ってところだった。

 
「真帆!」
 
 風紀の腕章付けた生徒が、二見を呼び止める。
 
「はい? 何ですかー」
「はい? じゃないだろ。お前、今日の昼までに提出の書類、出てないぞ」
「ええっ? そんなまさか」
 
 二見は、目を丸くしてのけ反った。風紀の人は、きりきりと眉を吊り上げて言う。
 
「まさかも何もあるか。副委員長に頼んで待ってもらってるから、早く行ってこい」
「ええ~? おっかしいなあ。絶対そんなはずないんだけど……」
 
 二見は、納得いかなそうに頭を掻いて、俺を振り返る。
 
「ごめん、ダッシュで行ってくるからさ。先に行って待っててくれる?」
「おう! 気をつけてなっ」
「それ、こっちの台詞だから。くれぐれも危ない目に合わないようにね!」
 
 びっ、と人差し指を突きつけて、二見は走り去って行った。
 俺も、風紀の人に会釈して、えっちらおっちら歩き出す。すると、予想外のことに――21号館の前に人影があった。
 
「おお?」
 
 あのピアスと、特徴的な眼鏡。どっから見ても、泰我先輩と利登先輩じゃねえか。何話してんのかわかんないけど、楽しそうに喋っている。
 それは良いんだけど、場所が悪すぎるんだぜ。
 これじゃあ、中に入れねえよ。先輩たちは、裏口のド真ん前を占領してっから、気づかれずないのは無理そうだし――
 
「先輩たちが避けてくれるの、待ってるほかないか」
 
 がっくりと肩を落として、その場をふらふらと離れたとき。見慣れた人影が、先を歩いてるのを発見する。
 あの、丸くなった背中は――

「やっぱり、森脇だぞ!」

 さっきは、片倉先輩と会えたし、今日はよく会える日だなあ!
 嬉しくなって、話しかけようと近づいてった。
 すると、森脇の前方から、背の高いバンドしてそうな奴が、歩いてくるのが見えた。そいつは森脇に近づいて、話し始めた。
 
「先こされたかあ……あれ?」
 
 あのバンドしてそうな奴、たしか、森脇のクラスメイトじゃね? どうりで、見たことある気がしたんだよな。
 
「いい加減――ろよ!」
「――!」

 それにしても、遠目にも険悪なムードがひしひし出て来てんだけど……。 

「あっ!」
 
 止めに入るか、迷ってるうちに、えらいことになった。
 背の高いバンド奴が、森脇の手首をひっ掴んでさ。森脇は、嫌がるみたいに手を振っていたんだよ。
 でも、バンド奴の脚が金色に光ってさ――次の瞬間には、その場からかき消えてしまった。
 
「……わ、」
 
 あんまり一瞬の出来事で、ポカンとしちまった。でも、遥か彼方に、森脇たちの姿があるのが見えて、我に返った。
 
「た、大変だっ!!」

 
――森脇が危ない!

 俺は、矢も楯もたまらず後を追った。
 
 
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