エンドロール〜BLゲームの悪役モブに設定された俺の好きな子の話〜

高穂もか

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第一章 おけつの危機を回避したい

三話

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『ほーっら、ごらん! 私の言った通りになったでしょ?』
 
 電話越しに、姉やんの高笑いが聞こえてくる。
 
「やから、ごめんて言うてるやん!」
 
 あのな。
 休み時間――晴海と二人、被服室に引っ込んで作戦会議をしててんな。
 もちろん、議題は転校生・愛野くんのことやけど。おれらBLとか知らんし、すぐに行き詰ってしもたんよ。
 で、今後のアドバイスを求め、姉やんに電話をかけてみることにした。そしたら、昨日のことを根に持っとったんか――姉やんの勝ち誇りが、えぐいんですわ。
 
「姉やん、どうしたらええの? おれ、おけつ破壊されるの嫌やねんけど」
『んー? でも、私の思い違いかもしれないしねえ。事故のせいで、単位のやばい授業もあるし……』
 
 姉やん、ひどい。弟のおけつがどうなってもええんか。
 べそかきそうになっとったら、晴海に肩をつつかれる。え、何? 「スピーカーにせえ」?
 
「あの、すんません。お姉さん?」
『ひえっ?』
「お久しぶりです。俺、よう一緒にポケモンやらしてもろた、晴海ですけど。覚えてます?」
『あっ、えっ。はっ晴海くん? あはは、久しぶり。シゲルがお世話になってははは」
「姉やん、なんで笑ってんの?」
『黙れ! いきなりDKと話したら、誰でもこうなるわよ! ていうか、シゲルあんた、このこと晴海くんに』
「言うたけど」
 
「があっ!」と一声叫んで、それっきり。姉やんは謎にしおらしなってしもた。
 ここぞとばかり、晴海は畳みかける。
 
「シゲルのことなんすけど。ほんまに、やばいんすか。まだ、会計のルートに入ったとは限らんすよね?」
 
 ん? どういうこと。
 首傾げとったら、ゲームの話で復活したらしい姉やんが、答える。
 
『――残念ながら、ほぼ確だと思う』
「その心は?」
『シゲルと晴海くんが、関西弁だから……』
「は?」
 
 おれと晴海は顔を見合わせる。
 
『……『ばらがく』は、安いゲームのせいか――モブキャラの使いまわしが凄いの。シゲルの立ち絵も、茶髪の不良っぽいイケメンでね。「一般生徒B」になって「あの転校生ならいけっかも」と言ったかと思えば、同室の不良の「友達」になって「お前、最近楽しそ」って声をかけたり、大活躍よ』
「えー。おれ、そんなモブ顔なんや」
「めっちゃ可愛いで?」
「きしょ! 何言うてん」
『ちょっと、聞いてよ!? 大事なとこだから。この茶髪不良モブはね――会計ルートで出てくるときだけ、ちょっと個性がついてるの。名前が「シゲル」で、黒髪の優等生風イケメンのモブを連れてて』
「黒髪の優等生でイケメン? 俺やん」
「自分で言うんかい」
『しかも、二人とも関西弁よ。他みんな、標準語なのに関わらず』
「俺らやん」
「おれらやな」
 
 言われて見れば、不思議なことや。おれも晴海も関西出身ちゃうのに、何故かこんな喋り方なんよな。家族は普通に標準語やのに。だれも突っ込まへんからこのまま来とるけど。
 姉やんいわく、それもまたこの世界がゲームであることの証左らしい。ゲーム内の常識は、作者がおかしいと思わない限り、まかり通ってくそう。
 
『シゲルと晴海くんが関西弁で、いつもつるんでるでしょ? 茶髪モブにそんな個性がつくのは会計ルートだけよ。だから』
「俺らのキャラ付けがこうなっとる以上、会計ルートに足踏み入れとるいう事っすか」
 
 姉やんの言葉に、晴海が神妙に頷く。
 
「それじゃ、おれは人参を突っ込むしかないん?」
 
 おしまいやん。しょげとったら、晴海が電話を掴み上げて、言う。
 
「お姉さん、どうもならんのですか」
『その前に、聞くけど――主人公とは、まだ一言も話してないのよね?』
「はあ。俺らのクラスに、今日来たとこなんで」
『なら、大丈夫。これから、シゲルの尻破壊フラグを、片っ端から叩き折って行くわよ』

 姉やんは、自信たっぷりに言いきった。
 
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