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第一章 おけつの危機を回避したい
四話
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『いい? 悪役に転生しちゃっても、フラグの回避をすればバッドエンドは避けられるわ』
姉やんは、ネット小説を読み漁って得た知識で、おれの今後の行動を指示した。
――まず、死亡フラグの原因となる行動をせえへんこと。
「シゲルの場合は、まず愛野に絡まへんことやな」
『その通り。まず主人公と絡まなきゃ、会計ルートは始まらない。化学教師に目を付けられもしないわ』
「なるほど」
でも、それやったら簡単や。
ゲームのおれは、どうか知らんけど。このおれは愛野くんに恨みなんかないし、絡む予定もない。
姉やんは、回避するべき最初のイベントを話してくれた。
愛野くんと会計のルートは……茶髪モブ(おれ)に絡まれてるのを助けることから始まる。
自分に惚れへん愛野くんにときめいた会計は、すぐさまキスをぶちかまし、恋のゴングが打ち鳴らされるそうや。
おれは、真剣にストーリーを頭に叩き込んだ。
「それにしても、出会い頭にキスて。展開早すぎん?」
『いや、普通でしょ。エンディングまでに二回はヤんなきゃいけないし。会長ルートなんて、肩ぶつかっただけでセックスよ』
「BLやばいっすね」
最初の方針が決まったところで、おれと晴海はいっぺん電話を切った。姉やんの単位がヤバいし、おれらも腹が減ったしな。
被服室を出て、たらたら廊下を歩く。
「晴海ー、今日の定食何やろなぁ」
「ホイコーローちゃう? 食堂の裏にキャベツのダン箱、山積みやったから」
「ほんま? 楽しみやわ……」
――ドンッ!
「あぎゃ!」
「うわぁ!?」
笑顔で振り返った拍子に、なんか腰にぶつかってきた。後ろを歩いとった晴海の胸に、ダイブする。
「ちょお、何? 痛いやんけ」
ぶつけた鼻をさすりつつ、文句を垂れておれは目を丸くする。
そこには、おデコを赤くした愛野くんが仁王立ちしていた。仁王立ちいうても、おれより頭ひとつちっさいから、子供がイキっとるみたいなんやけど。さっき、ぶつかってきたんは、愛野くんの頭やったらしい。
「なんだとっ! そっちがぶつかって来たんだろ!」
愛野くんは、黄色い声で怒鳴ると、いきなりパンチを繰り出してきた。ドフッ! と重いのを腹にくらい、おれは「オエッ」と呻いた。
「シゲル、大丈夫か!」
「小さいからって、馬鹿にすんなよ!」
愛野くんは、得意になってシャドーボクシングなんぞしとる。
何や、こいつ! いきなり、人のどてっぱら狙う奴があるか! おれは、頭がカーッとなる。
「なにすんねん、あほっ」
「いたっ!」
ぱちん、と平手で頭をはたいた。
びっくりしたんか、愛野くんのでっかい目がウルっとする。ちょっと胸がすいたところで、背後に妙な気配がした。
なんやろう、周囲がざわざわしとるんやけど。
「――ちょっと、何してんのー?」
ゆるーい喋り方に、ギクッとする。
恐る恐る振り返ると、そこにおったんは予想通りの人物やった。
ミルクティみたいな色の、ゆるく巻いたロン毛。背ぇのひょろっと高い、たれ目の美形。「歩くそごうの一階」と異名を取るこの男は――
「会計やんけ……」
晴海が、ぎょっとした感じに呟く。
会計は、ガッチガチになったおれの肩を掴むと、にやりと笑って囁いてきた。
「ださいよ、お前……男の子の口説き方も、知らねーの?」
何言うてんの?
絶句しとったら、「普通知らんやろ」と晴海が言った。そうやんな。
ドン引きのおれらの横を、会計は髪をかき上げながら通り過ぎ――愛野くんの肩を抱いた。
「きみ、大丈夫? 変な奴らに絡まれて、怖かったねぇ」
「……はぁ!? ガキ扱いすんなよっ?」
よしよしと頭を撫でられて、愛野くんは涙目を見開く。バシン、と手を振り払い、会計を睨みつけた。
愛野くんの反抗的なふるまいに、会計は目を丸くした。
「あらら、気が強いんだねー? すっごく可愛いのに」
「可愛くねーっ! 俺は男だぞ!」
ぎゃんぎゃん喚く愛野くんに、会計は「フッ」と意味深に笑い――身を屈めて。
「――んむう!?」
がっつり、マウスツーマウスをぶちかます。
ギャオオ! と周囲から野太い悲鳴が上がった。
おれは、呆然としながら、となりの晴海の袖を引く。
「は、は、晴海……あれ」
「おう……舌までガッツリやな」
「ちゃうねん! 最初のイベント、起こってしもたで!」
「あっ、ほんまや!」
晴海はかっと目を見開いた。遅いねん、もう!
姉やんは、ネット小説を読み漁って得た知識で、おれの今後の行動を指示した。
――まず、死亡フラグの原因となる行動をせえへんこと。
「シゲルの場合は、まず愛野に絡まへんことやな」
『その通り。まず主人公と絡まなきゃ、会計ルートは始まらない。化学教師に目を付けられもしないわ』
「なるほど」
でも、それやったら簡単や。
ゲームのおれは、どうか知らんけど。このおれは愛野くんに恨みなんかないし、絡む予定もない。
姉やんは、回避するべき最初のイベントを話してくれた。
愛野くんと会計のルートは……茶髪モブ(おれ)に絡まれてるのを助けることから始まる。
自分に惚れへん愛野くんにときめいた会計は、すぐさまキスをぶちかまし、恋のゴングが打ち鳴らされるそうや。
おれは、真剣にストーリーを頭に叩き込んだ。
「それにしても、出会い頭にキスて。展開早すぎん?」
『いや、普通でしょ。エンディングまでに二回はヤんなきゃいけないし。会長ルートなんて、肩ぶつかっただけでセックスよ』
「BLやばいっすね」
最初の方針が決まったところで、おれと晴海はいっぺん電話を切った。姉やんの単位がヤバいし、おれらも腹が減ったしな。
被服室を出て、たらたら廊下を歩く。
「晴海ー、今日の定食何やろなぁ」
「ホイコーローちゃう? 食堂の裏にキャベツのダン箱、山積みやったから」
「ほんま? 楽しみやわ……」
――ドンッ!
「あぎゃ!」
「うわぁ!?」
笑顔で振り返った拍子に、なんか腰にぶつかってきた。後ろを歩いとった晴海の胸に、ダイブする。
「ちょお、何? 痛いやんけ」
ぶつけた鼻をさすりつつ、文句を垂れておれは目を丸くする。
そこには、おデコを赤くした愛野くんが仁王立ちしていた。仁王立ちいうても、おれより頭ひとつちっさいから、子供がイキっとるみたいなんやけど。さっき、ぶつかってきたんは、愛野くんの頭やったらしい。
「なんだとっ! そっちがぶつかって来たんだろ!」
愛野くんは、黄色い声で怒鳴ると、いきなりパンチを繰り出してきた。ドフッ! と重いのを腹にくらい、おれは「オエッ」と呻いた。
「シゲル、大丈夫か!」
「小さいからって、馬鹿にすんなよ!」
愛野くんは、得意になってシャドーボクシングなんぞしとる。
何や、こいつ! いきなり、人のどてっぱら狙う奴があるか! おれは、頭がカーッとなる。
「なにすんねん、あほっ」
「いたっ!」
ぱちん、と平手で頭をはたいた。
びっくりしたんか、愛野くんのでっかい目がウルっとする。ちょっと胸がすいたところで、背後に妙な気配がした。
なんやろう、周囲がざわざわしとるんやけど。
「――ちょっと、何してんのー?」
ゆるーい喋り方に、ギクッとする。
恐る恐る振り返ると、そこにおったんは予想通りの人物やった。
ミルクティみたいな色の、ゆるく巻いたロン毛。背ぇのひょろっと高い、たれ目の美形。「歩くそごうの一階」と異名を取るこの男は――
「会計やんけ……」
晴海が、ぎょっとした感じに呟く。
会計は、ガッチガチになったおれの肩を掴むと、にやりと笑って囁いてきた。
「ださいよ、お前……男の子の口説き方も、知らねーの?」
何言うてんの?
絶句しとったら、「普通知らんやろ」と晴海が言った。そうやんな。
ドン引きのおれらの横を、会計は髪をかき上げながら通り過ぎ――愛野くんの肩を抱いた。
「きみ、大丈夫? 変な奴らに絡まれて、怖かったねぇ」
「……はぁ!? ガキ扱いすんなよっ?」
よしよしと頭を撫でられて、愛野くんは涙目を見開く。バシン、と手を振り払い、会計を睨みつけた。
愛野くんの反抗的なふるまいに、会計は目を丸くした。
「あらら、気が強いんだねー? すっごく可愛いのに」
「可愛くねーっ! 俺は男だぞ!」
ぎゃんぎゃん喚く愛野くんに、会計は「フッ」と意味深に笑い――身を屈めて。
「――んむう!?」
がっつり、マウスツーマウスをぶちかます。
ギャオオ! と周囲から野太い悲鳴が上がった。
おれは、呆然としながら、となりの晴海の袖を引く。
「は、は、晴海……あれ」
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