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しおりを挟むお腹が一杯です。もう食べれません。動きたくもありません。
天気も良いですし、このまま横になった昼寝したいぐらいです。
食後直ぐに寝るのは体に良くないようですが、知りますかってぐらいには今の私は悪い子ちゃんだったのです。
私がそうなのですから、ピコに関して言えばもっと悪い子ちゃんです。
「あらあら、よく眠っていますね」
既に、ピコは特大の鼻提灯(ちょうちん)が作って横になっていました。
無駄だとは思いましたが、肩を揺すってみるのです。
無駄でしたね、はい。
暫くはこのままにしておいてあげましょう。起きる気配は微塵もありませんからね、仕方なくというやつです。
ピコがこの有様ですから、私まで横になってしまうわけにはいけません。それでは、苦労してまで山登りを敢行(かんこう)した意味そのものが失われてしまうからです。
言って、私達は別にピクニックに来たわけではないのです。
絶滅に瀕しているニジマスの、その原因追求が今回私に課せられたお仕事であります。際して、ニジマスを暴食しているだろうと予想されるモンスターの処理をーー
と、そのつもりではやってきたのですが。
「実に穏やかなものです」
特にこれと言った異常は見られませんでした。
川の中を覗き込んでもニジマスが減少しているようには見えませんし、むしろ多過ぎるぐらいでは?
だったらですよ、ニジマス減少の原因は上流ではないということですね。
少しばかり、川伝いに降ってみましょうか。
「スラちゃん、ピコの事をお願いね?」
正しく伝わっているかは判りませんが、ピコの膨れ上がったお腹の上で跳ねるスラちゃんにお願いするのでした。
「お、これは……」
見つけました。
大した捜索もなく、上流下の少し先にモンスターの寝床と思われる穴倉(あなぐら)を発見したのです。
また、穴倉の前には辺り一帯に散乱し尽くされたニジマスの骨達です。大量です。
村の人間に毎日ニジマス振舞ったとしても、こうはならないでしょう。
つまりですよ、やはり何処ぞのモンスターがニジマスを乱獲、捕食していたようですね。
「これは見過ごせませんねぇ……」
いくら繁殖力を高いニジマスと言えど、無限ではないのです。
そうです、自然とは有限のある貴重な資源なのです。
『自然の恵みは尊重しなければならない』
それはお爺さんが私に教えてくれた自然界の鉄則であり、決して犯すことなかれルールなのです。
故に、私は自然と肩を並べて共存するものとして、ルール違反を犯したモンスターに正義の鉄槌を下すのです。
躊躇いは一切なく、穴倉へと入ります。
手には剣を。因みに、これはお母さんの形見の剣でして、物凄い切れ味を誇ります。分厚いグリーズの脂肪をいとも容易く貫いたように、どんなモンスターとて切断できぬものはいないでしょう。
自慢の剣を握り締め、顔も知らないお母さんに感謝します。
有難うお母さん。私が今日も元気でいられるのは、超凄腕のハンターであったとされた貴女様の遺してくれたこの剣あってこそなのです。
さて、穴倉の中はかなり暗いですね。しかも結構奥深いです。
また、いつモンスターが襲ってきても不思議ではないぐらいには広いです。
一旦足を止め、松明に火を灯し探索再開です。
一体、奥にはどんなモンスターが潜んでいることやら……
久々、手に汗滲む緊張感。
緊張感を募らせ、奥へ、奥へ……
いませんね。
でも、油断はできません。不意打ちを受けては命取りですから。
より一層に緊張の糸を張ります。
緊張改め、再び奥へ、奥へ……
「いないじゃないですか?」
穴倉を這い出て、私の気苦労とは無駄に終わったようです。
モンスターの気配は微塵も感じ取れませんでした。
モンスターの根城である事は間違いないようでしたが、どうも今は外出中のようですね。
はてはて、困り果てました。
待ってみますか?
YESかNOか。
無論、答えは既に決まっています。
「このまま待っていては日が暮れてしまいますね」
自らモンスターを探しましょう。その方が手っ取り早いです。
「問題は何処を探すかによりますが、」
と、当てずっぽうに歩き出したーー
その時です。
ズドンッ!!!と、けたたましい轟音が鳴り響いたのです。
ズドン、ではありません。ズドンッ!!!、なのです。
未だ嘗て聞いたこともない激しく鳴り響く音とは、どうやら森の中から響いてきたようです。
もしかしたら、そこにモンスターがいたりして……
「ちょっぴり、怖いですね……」
そうも言ってはいられませんが。
兎にも角にも、私は森中の音の発生源へと向かうのでした。
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