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しおりを挟む夢の終わりは意識の覚醒と同義でした。
仄かな朝日が、木々の隙間から差し込んでいました。
朝のようです。
私は目覚めて、自分が今森中にいる事を再確認します。
そういえばそうでしたね。昨晩は焼き芋を6つばかり食べて、毛布に包まってそのまま寝ってしまったのです。
いやぁ、それにしても不思議な夢でした。やけにリアリティのある夢でしたので、今でも甘くとろけそうなソフトクリームの味をよく思い出せるわけです。
また夢の中で出会ったお母さん(仮)のセリフも、ちゃんと覚えています。
『展望台で、待っているからーーずっと』
です。
展望台とは確かこれから私が向かおうとしている江ノ島の、その頂上のことですね。
つまりです、私は江ノ島を渇望するあまり変な夢を見てしまったのでしょう。
何とロマンチストな私。流石です。
「さて、取り敢えず……」
と、辺りを見回したーー
その時でした。
「あれ?」
私は木々の合間に、その人影を見つけました。
一瞬目の錯覚か何かと勘違いしてしまいそうでしたが、二度見して、その人影が単なる幻視でないことを理解します。
見間違えるわけありませんでした。何せ、その人影とは私のよく知る人物だったわけですから。
私は寝惚けた頭を起こし、その人影へと近づきます。
そして、
「ベルウルフ、貴方生きていたのですか?」
そうは尋ねるわけです。
何ということでしょう、私の目の前には見まごうとなきベルウルフがいたのでした。
夢ではありません。リアルです。リアルベルウルフなのです。
ただ、少しばかり様子が変ですね。
「ベルウルフ?」
ベルウルフは立ち尽くしたまま、何も言わないのです。
まるで正気のないお人形さんのようには、ボーと虚ろな目を向けるだけ。
しかもです、見ると全身血塗れではありませんか。
もしかしたらモンスターとの激戦の末、命辛々生き延びてきたのもしれません。故の見てとれる疲弊感、焦燥感。
これはいけない。
「ベルウルフ、再開を喜び分かち合いたいのも山々ですが、取り敢えず、怪我の手当てを致しましょう。ささ、こちらへーー」
と、ベルウルフの手を握ります。
握って、その以上とまで呼べる冷たさに一瞬身震いしてしまいました。
冷た過ぎでは?まるで死体のようじゃないですか?
「ベルウルフ、貴方……」
何かがおかしいと、そうは思ったのです。
ベルウルフの虚ろな瞳と目が合います。そして、見てしまったのです。
瞳の中で蠢く、得体の知れない何かを。
やばいーー私はすぐ様ベルウルフから手を離そうとしました。
が、いきなりです。ベルウルフが冷え切った掌が、ガッチリと私の手を握りしめたのです。
その際にも、ベルウルフの口元が緩みました。
ニヤニヤと、怪しげには笑っていたのです。
ここでやっと私は理解しました。ああ、彼は姿形こそベルウルフであれど、実際はそうじゃないんだとーー
言って、彼は既に以前の彼ではありませんでした。
では問題その1、一体彼は何者なのか?
「……ハイエンド、みぃつけたぁああ……」
解、私はこのベルウルフが誰であれ関わるべきではないと判断。
私はベルウルフの手を振り払い、みぞおちに前蹴りを1発お見舞いしてやりました。
クリーンヒット、悶絶することに間違いありません。
ですが、
「……残念でしたぁあ……」
効いてないんですね、これが。
ベルウルフはニタリ顔で、平然とした素振りを見せるわけです。
「酷いじゃないかぁ……なぁ、ハイエンド?」
「すみません。再開が嬉し過ぎましたので、ついつい悪い足癖が飛び出てしまいました。嬉しさ余っての事ですので、許して下さいね?」
「ああ、そういうことなら許そうか……でも、二度目はないぞ?」
「そうですか。なら、」
私はベルウルフの顔面に1発、渾身の右ストレートをお見舞いです。
「拳ならオッケーといいことで」
もちろん、その拳も効いてないのでしょう。
「ハイエンドぉおおおおおッ!!!!」
ベルウルフは咆哮しました。
咆哮して、握り拳を作るわけです。
どうしてか、なんてのは今更愚問過ぎますね。
というのも、この状況下に於いて彼が握り拳を振り上げる理由など一つしかないからです。
そうです、私を殴る為ーー
ですよね?
「ぐふッ…」
私は強烈な一打をモロに受けてしまいました。心臓部です。痛いです。
そのまま私は宙へと吹っ飛ばされてしまったようです。拳一つで人一人吹っ飛ばすって、それ最早人外でしょう。
心臓が止まってしまったらどう責任を取って貰おうかーー宙へと投げ出された最中にも私は考えました。
そんな私の心中を察してか、ニタリ顔のベルウルフは口を開きました。
「……大丈夫、ハイエンド。お前に心臓など、そもそもないから。だって、お前はーー」
俺たちと同じ、モンスターなんだからさ。
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