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第1章 舞い降りた復讐人
第1話 降りたつ復讐人
しおりを挟む50年を時を遡り、僕は過去へとやってきた。
忘れもしない50年前のあの日、あの場所へ、再び僕は舞い戻ってきたのだ。天高い時計台の上へと僕は降りたった。
やはり50年前のあの日と同様に、[ルスタチア王国]は戦火に焼き尽くされていた。
視界に広がる逃げ惑う人々の姿も、聞こえてくる悲痛な悲鳴も、あの時と何一つ変わっちゃいない。
変わったすれば、僕。姿形は12歳のあの時のままではあるが、その中身は50年という長きに渡る苦行の軌跡が刻まれていた。
そして[ルスタチア王国第7王子]である僕こと、[デイトナ・カースト]が最強のドラゴンを従え帰ってきた。
僕が50年の歳月を費やし考え、そして生み出した最強のドラゴン[アヴァロン]ーー太古には滅びたとされる伝説の三大竜王の遺伝子を組み換えて作り出されたアヴァロンは実質地上の覇者である。
体長は6メートル程とドラゴンにしては小さな部類だが、その内に秘めた能力値の高さは計り知れない。
そしてその最強のドラゴンーーアヴァロンを従える僕は、この世界を征服するに足る偉大なる存在…
「そうだと思わないかい、ルーシェ?」
「いえ、そうは思いませんデイトナ様。あくまでもアヴァロンが強いのであって、デイトナ様はちょっと強いぐらいの人間風情に過ぎませんと思います、こほん」
アヴァロンの背から顔を覗かせ、嫌味な言い方をするこいつは[ルーシェ]ーーーかの三大竜王が一角[マスターアイズヘッドドラゴン]の末裔であるとされる竜族の娘だ。
今は人間形態として10代半ば程の(15~16歳程度]人間の少女を彷彿させる容姿をしているが、彼女は瞬時に[竜化状態]へと移り変わることができる。
「いやいやルーシェ、竜族である君を服従させるだけの力はあるんだから、僕を人間風情呼ばわりするのはよしてくれないかい?」
「…違います。私は別にデイトナ様に負けたわけじゃありません。あの時はただ体調が悪く、そんな時にデイトナ様が私を襲うもんだから仕方なく負けてやっただけなのです。契約印さえなければデイトナ様なんか速攻で殺してます、てか早く死んでください」
ルーシェは自身の手の甲に刻まれた契約印を覗いては言った。
そう、このルーシェと僕との間には契約印が結ばれており、僕に反発しようもんならルーシェは契約違反とみなされすぐ様消滅してしまう。
「死んだらルーシェ、お前も死ぬぞ?」
「構いません。デイトナ様に従うぐらいなら死んだ方がマシです」
「ひどい嫌われようだな…僕がなんかしたか?」
「しました。超しました。ね、アヴァロン?」
「………」
「馬鹿、アヴァロンは僕としか喋らないの!」
「アヴァロン、こんな奴さっさと殺せばいいのよ?自由になりたくはないの?」
「………」
「こら、アヴァロンを誘惑するな!ほーらアヴァロン、お前は僕と世界征服するんだもんな?な?」
「……ウン」
そう、アヴァロンは喋る。今はドラゴン形態で声にドスが効いているが、人間形態の時はかなり可愛い声で喋ってくれる。ただ俺と以外は喋りたくないらしく、ルーシェに対してはいつも無視を決め込んでいた。
それでもルーシェはアヴァロンに対しては妙な愛情が湧くらしく、それはアヴァロンの中に自分の遺伝子が混ざっていることが原因であるみたいだ。いわゆる母性の本能が働いてる、というやつらしい。
何はともあれ、僕こと[デイトナ・カースト]と最強のドラゴン[アヴァロン]と、オマケの[ルーシェ]による世界征服は始まった。
まずは僕の生まれ故郷[ルスタチア王国]に入り込んだ逆賊どもを殺戮しようではないか…
僕らはアヴァロンに背に跨ると、一気に地上へ向けて急降下していった。
◆
「ところでデイトナ様、何故[ルスタチア王国]が襲われる前に遡らなかったのですか?間違ったんですか?」
「いやいや、間違えるわけないでしょ?」
「いやほら、デイトナ様って少し抜けてるとこあるじゃないですか?」
「ルーシェ、君はほんと失礼極まりないよな…」
実を言うとそれも考えた。が、どうしてか50年よりもっと前、この[ルスタチア王国]が滅びる前には戻る事ができなかった。
これは僕の憶測だが、僕の生み出したアヴァロンには僕の意思が組み込まれてある。つまり僕の抱いた復讐を引き継いでいるということになるのだ。
だから僕の復讐を抱いたきっかけ、この[ルスタチア王国の破滅]がなければそもそも僕が復讐をすることもなかったし、またアヴァロンが生まれてくることもなかったーーだからこそアヴァロンは自分の生まれるきっかけとなった日までしか遡れないと、つまりはそういうことで大方正しいはず。
詳しくはよく分からない。
アヴァロンを作り出したのは確かに僕ではあるが、アヴァロンの能力については未だ全部を把握しきれてはいない。
今分かっている範囲でも充分アヴァロンは最強と言えるだろう、まだまだ進化の可能性を秘めているというのだから驚きだ。
「全く、君は凄いよアヴァロン…」
「……ソウカナ?」
褒められて照れているのか、アヴァロンはぎこちない口調で返事をした。
◇
地上に降りたった僕らに対し、驚愕の眼差しを送る彼らーー魔族以外の種族からなる[連合アークスター軍]の軍勢はその場に犇めき合っていた。
僕らの存在を警戒するかのように、[ルスタチア王国]の城下町を進軍する[連合アークスター軍]の軍勢の動きがピタリと止まっていたのだ。
「…ドラゴン…だと?」
[連合アークスター軍]の誰かが呟いた。その口振りは信じらないとは言いたげであった。
「ええ、ドラゴンですが…何か?」
僕は答えて、軍勢を見回した。
兵士達は恐れ、戸惑い、焦燥と、どうとでもとれる顔色を浮かべては視線を僕らに集中させていた。
「何者だ?」
そう言った彼ーー『連合アークスター軍』の兵士達の中から大きな足音を立てて前に出てきた一人の男ーー小柄な体型にゴツゴツとした岩肌のようなボディ、そして目を引く真っ赤な鎧のその男を僕はよく知っていた。
魔族以外の種族からなる連合軍アークスター、その内の一種族ではあるドワーフ族の代表[ゴルフ]だ。
「やぁゴルフ、久しぶりだね?」
「……お前など知らん」
「あ…そうか、今はまだ…会ったことないんだったね」
「何を言っている?」
ゴルフは怪訝そうには僕を睨みつけた。そうして手に持ったバトルアックスを構え直すと、低い声色で、
「…誰だかは知らんが、貴様も敵とあらば…アークスターは容赦はしないぞ」
バトルアックスを構えて牽制。どうやら本気のようだった。
「ゴルフ…僕はやはり君を好きにはなれないみたいだ。あの時も、そして…今も」
「さっきから意味不明なことをゴチャゴチャと…皆の者!!奴らを即刻始末しろ!!」
ゴルフの号令を皮切り、にアークスターの軍勢は一斉に動き出した。先行したのは大体50名程のドワーフ族、総勢にして二千はいるだろうこのアークスター軍勢の中でもとりわけ力自慢の怪力野郎達だ。
「あらあら、デイトナ様。怒らせちゃいましたけど?」
[ルーシェ]は呆れたようには呟いた。
「いいんだよルーシェ、どうせやることは変わらないのだから。分かってるね、アヴァロン?」
アヴァロンは無言でお辞儀をした。そうした次の瞬間にも翼を2、3回程を羽ばたかせ、竜巻を発生させるーー強烈な勢いのままにはドワーフ族の軍勢を飲み込んでいった。
まさに一瞬の出来事。信じられないといった様子で[ゴルフ]は佇んでいた。
「あ、あり得ない…」
「あり得ない…か…ふふふ、確かに有り得ないと思われても仕方がないだろうね。ドラゴンが竜巻を生むだなんて、まさに神話でも見ているようだろ…なぁ、ゴルフ…」
「き、貴様は…一体…」
「うーんとね、あれに住んでた人間だよ」
僕があれと指差した先に、[ルスタチア城]とは聳え立つ。ただかつての壮観な城構えはなく、業火によって焼き崩れ落ちていく城壁が無残には映る。
最早あの城は滅びたも同然だ。城内の人間はもちろんのこと、兄弟も、親も、既に殺されたに違いない。ゴルフがこの場にいることとは、そういうことだ。
「お前が皆を殺したのは知ってるんだよ、ゴルフ…」
そう、家族の敵こそがこいつゴルフだ。
忘れもしない50年のあの日、城内へと攻め入ってきては僕の家族を殺していくゴルフの昨日の出来事のようには思い出すことができる。
「そう、僕はかつてルスタチア王国の王子だった男さ」
「…名を、何という?」
恐る恐るいった様子ではそう尋ねたゴルフに、僕は笑みを交えて答えた。
「ルスタチア王国第七王子、デストナ・カースト…貴様を、殺す男の名だ…くくく、ふははははははははは!!」
こうして僕の復讐の火蓋は、切って落とされたーーー
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