能ある冒険者は、その内に秘めたる魔槍”グングニル”を隠す -北欧神話伝来の魔槍グングニルを与えられた俺という最強の存在の苦難の旅路-

泥水すする

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第1章

第10話 そして、俺たちの冒険は続く!

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 剥がれ落ちた鎧について、[魔鋼式霊術装]と彼女は語る。

「マコウシキ、レイジュツソウ?何だそれ?」

「聞いた事があります…何でもこの世界には純粋なる魔力だけで形成を成した鎧があると。見るのは初めてですが…でもそうですか、これがその魔鋼式霊術装…いやぁ凄いですね…」

 と、ルクスは感嘆めいた口振りで言ってその魔鋼式霊術装とやらをまじまじと見つめていた。どうもかなりの稀少品であるらしく、ルクスの興味一切がそこに向かっているようである。

「ガイル様、因みにこれに質量はありますか?」

 ルクスが尋ねて、ガイルは「ふふん」と得意げには花を鳴らす。

「良くぞ聞いてくれたね!!実はそれ、質量もなければ重量もないんだぞい!!魔力の鋼で形成されたそれはそれはスペシャルな装備だからね?」

「な、なんと!?で、では装着していても何らその感覚はないと!?言わば全裸でいる状態で近いと!?つまりはそういうことですかガイル様!?」

「ええ、全くその通りだぞい!!どうだ、凄いであろう!?ぶははははははは!!」

 ガイルは誇らしげにはしていた。うん、それ自体は別にいい。実際に凄い装備らしいから自慢したくなるお前の気持ちも充分理解できる。ただな、ガイル?

「だからといって実際に全裸でいる奴があるか馬鹿」

 そう、というのも俺の目に映るガイルとは全裸に限りなく近い、言わば下着姿なのであった。目にやり場に困るからホントまじ勘弁してくれ。俺の純真を穢さないでくれ。

「おう、これはすまなかったぞい!」

 と、ガイルは「ほれ!」と人差し指を立てた。するとあら不思議、地面でバラバラとなっていた鎧が宙に浮いてはガイルへと纏わりついたではないか!しかもだ、

「何だその鎧、服にもなるのか?」

「その通りだ!鎧だろうが服だろうが私の意のまま、チョチョイのチョイ、なのである!」

 えらく便利なもんだなぁおい。

「ほーん、じゃあどうしてまたごっつい鎧なんかにしてたんだ?」

「だってさ、その方が強そうだろ?」

「…ああ、ごもっともだな」 

 要するに見た目的な問題ということか。でも確かに鎧を着たガイルの風格とは並々ならぬ威厳を醸し出していたし、ルクスが先ほど申したように歴戦の戦士とは言い得て的を得ている。

ただそのせいで中身がゴリゴリマッチョの筋肉野郎の毛深いゴリラ風味のオッサンと誤解していたのは俺の勘違いで、またガイルの声がオッサン風の野太い声に聞こえたのも鎧越しで声が曇っていたからだとは今にしてわかった事である。
 
「いやな、実際は別に鎧にする必要もないんだけどね?重要なのは形ではなく中身だからさ?でもそのせいでオッサンと勘違いされたのは軽く凹みましたぞい…」

 そう言ってガイルはがっくしを肩を落とした。かなりの落ち込みようである。

「まぁまぁ、その点については謝るよ。悪かったな…ほら、二人も」

 と、マルシャとルクスを見流して、

「ガイル様、申し訳ありませんでした。貴女様は立派な女の子ですよ!自信をもって下さい!?」

「ふん、勘違いされる方が悪いと重んだけど?」

 各々が謝罪のような謝罪じゃない事を口走る。何とまとまりのないことか。普通に謝れないのかこいつらは…

「いえいえ、誤解が解けたのならそれでよろし。私こそ紛らわしい格好して貴殿らの意識をオッサンと錯覚させてしまったことを深く詫びたいと思う、悪かった」

 ガイルが頭を下げて言った。回りくどい言い方であったが少なからず自分にも非があるとは自覚してくれたらしい。まぁ悪い奴ではなそうなんだが…

 果たして、実際はどうなんだろうか?

「で、聞いていいかガイル?」

「ん?なんぞ?」

「お前は…その…どんなタイプの人?」

「と、いうと?」

「いやな、その…あれだよあれ!見た目的にはさ、お前は俺らと同じ[ヒューマン]っぽいじゃん?」

 そう、鎧をパージしたガイルとはみた感じだけで言えばどことなく人間っぽい。身長は鎧装着時で2メートル以上に見えたが実際のところは俺より少し低いぐらいで、体格はかなりの華奢。マルシャとルクスとで比べればルクスよりの幼い体型である。

「な、何よバンキスその目は!?今どことなく私を蔑んだ目で見たでしょ!?」

「いやいや誤解さ。別に俺はお前を見て案外デッカいんだなぁなんてこれっぽっちも思ってないからな?安心しろ?」

「安心できるか馬鹿!!」

 ま、体型だけで言えばそんな感じ。今は鎧ではなく白いドレスのようなどこぞの民族衣装なものを見に纏っている。鎧の時は真っ黒なのに服の時は真っ白なのね…うん、分かりやすくていいんじゃない?

 で、肌は小麦色に焼けた褐色肌という奴だ。そして赤髪でツインテール。顔はかなり整っている。美人さん。ツヤツヤとした鋭いツノが額に一本。八重歯。グレー色の瞳…と、今、明らかに余分な要素が混じっていたことにお気付きだろうか?そうなんだよ、俺の疑念はそこにこそ集中しているわけさ。

「その…やはりそれは、ツノということで間違いはないのか?」

 ガイルの額から伸びるそれを指指して尋ねてみた。すると、

「ああ、これか?いる?」

 ポキンと容易には取りやがったガイルである。いや待て、そのツノ着脱式なわけ!?

「まぁその日の気分次第で取ったり着けたりと出来るわけだよ。これでも私ファッショナブルだから」
 
 ファッショナブルについて小一時間ぐらい談義したいところである。

「でもでも、一日でまた新しいツノが生えてくるぞい」

 何それ?髭剃り感覚なわけ?

「痛くないのか?」

「ん?まぁ多少はね?」

 痛いんかい!!

「じゃ、じゃあ遠慮しとくよ…そのツノはもしもの時の為に大事に保管でもしておけ」

「いやだからまた生えてくるんだってば」

「ガ、ガイル様!ではそのツノを是非私に…」

「あ、ルクス殿いる?じゃあはい。大事に使うんだそい?」

「き、恐悦至極!!やたぁああああ!!!」

 はぁ、呆れた。

「話を戻すぞガイル。じゃあお前はヒューマンではないってこと、なんだよな?」

「そうである!」

「そ、そうだよなぁ…」

 分かってはいた。もちろん充分には分かっていたさ。何せ俺はガイルの素性についてを知っている。先程ガイルは自身が元魔王軍とは語った。であるならばまずその時点でヒューマンという線は消えている。というのも魔王軍と一番敵対している種族こそがヒューマンだからね、いたら大問題になるからね。

 そして俺はあのツノを見てしまった。もしかしたら獣人族である[ビースト]の可能性を疑ってみたりもしたが…何か違う気がする。これは多分、気のせいじゃない。

「聞いて驚くでないぞい!?この私こそが今この世で最も稀少かつ絶滅危惧人種とは囁かれる高等種[ダークプリマ]である!!」

 ほらな、気のせいが確信へと変わった。予定調和過ぎる展開に俺もうお腹一杯だよ…

「だ、ダーク=プリマですってぇええ!?」

 すかさずそう叫んだマルシャの反応とはさも正しい。俺もあらかじめガイルの素性さえ知らなければ同様の反応を見せていただろうしな。新鮮な驚きをありがとうマルシャ、俺も現状の異常性について見失わずにすんだよ。

「だ、ダークプリマ…ですか?マルシャ様、それは一本?」

 首を傾げて尋ねるルクス。いや待てその前に額のツノどうにかしてくれる。そういうの馬鹿っぽいからやめてくる?

 と、俺の冷めた目線に気付いたのかルクス、

「…えへへ…バンキス様、やはりその…似合いますか?」

 照れていた。うん、もうそれでいい思うよ。

「ダークプリマ…又の名を魔人と呼ぶわ。表面上はヒューマンのそれと変わりはないように見えるけど、実際は全然違う。それは身体構造についてもそうなんだけど、ヒューマンが大気中の酸素を吸って息をするように、ダークプリマは大気中の魔素を吸っているというわね。つまりよ、ダークプリマの肉体の凡そは魔素と魔力にて形成されている高純度魔造体型とは呼ばれていて、」

「まままま、待ってくださいマルシャ様!?頭が追いつきません!!」
 
 そう言って頭を抱えるルクスに対して俺は言ってやった。

「要するに人間の形をした魔力というやつだ。魔力でできた人間とも呼べるがな?」

「す、すご~い…」

 ああそうさ。凄いんだよ。いや凄いなんてもので片付けられるのか?否、そんなわけない。これは何か裏がある…そんな気がする。気のせいであれとは、願望を夜空の星々に願わざるを得ない。 
 
「皆様、今後は仲間としてよろしく頼みますぞい?ぶははははははははは!!!」

 とガイルが高笑いした。俺は失笑した。
 
 こうして、俺の日常を今後は思いも寄らぬ方向へと導いてくれる最後のピースは揃った。

 マルシャという勇者の子孫に、ルクスという大精霊の加護を受けた少女に、ガイルという魔王軍より脱走してきたと語る魔人(仮)、ご覧の珍妙なパーティーで俺の冒険者ライフは本格的に動き出した。

『俺たちの冒険はこれからだ!!!おしまい!!!』

 そう誰かが言ってくれる日を、俺は切に願う。

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