能ある冒険者は、その内に秘めたる魔槍”グングニル”を隠す -北欧神話伝来の魔槍グングニルを与えられた俺という最強の存在の苦難の旅路-

泥水すする

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第2章

第7話 俺はパシリじゃない

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 平積みとなったままの問題は解消されぬまま、俺たちはどうにかして次の街[カルママルク街]へとやってきていた。途中、魔物を襲撃や食糧問題はあったりはしたが何とかここまで辿り着けた事を素直に喜ぶべきだろう。

「バンキス…私もう駄目みたい…」

 街に着いた早々にもそんな事を言い出したマルシャ。見ると確かにかなりヤバそうな顔色をしてグッタリと地面にへばりついていた。どうしてここまで焦燥感丸出しなのかは考えるまでもなく、大方お腹が空いて仕方がないのだろう。

「もう少し頑張れ!あとちょっと歩けば市場に着く!そしたら飯なんか鱈腹食わしてやっから!な!?」

「駄目…もう立てない…」

「さっきまで立って歩いてただろうが!?」

「それはそれ、今は今よ…いいからバンキス、何か買ってらっしゃい」

 いきならパシられそうになって、俺は拒否を進言する。すると、

「マルシャ様、では私が言って参りましょう。バンキス様がどうしても行きたくないというのであれば致し方ありませんからね?」

 と、まるで俺が悪いような口ぶりで言った。いや待て、俺は悪くないぞ?悪くないよな?

「いやいやいやルクス殿、ここは私が行くぞい?私はバンキス殿同様にこの通りピンピンだからな、バンキス殿がどうあっても動きたくないと言っている以上ここは私が…」

「ああもういいよ分かったよ!?俺が行けばいいんだろ!?そういうことなんだろ!?」

 結局、俺は3人の少女達に見送られ一人市場へと向かうこととなった。その足になまじ500トン程の重りをつけているような感覚を覚えたのは何故か、考えるのも虚しく思い、俺はそのうち考えることをやめた。

 市場へと着いて、俺は異様な程の人混みに圧巻されていた。というのもこのカルママルク街とはこの大陸に於いても有数の商業街の一つしては数えられていて、そんな事実とはいくら田舎者の俺でも知っていることである。

 ただ噂に聞いていたのと実際に見るのとでは全然受け取るイメージが違うわけで、その事を肌身に感じつつも俺はおずおずと人混みに紛れていった。

 そうして人混みに揉みくちゃにされながらも一軒のパン屋を見つける。すぐ様パン屋に飛び込み手頃そうなパンを五個程の購入するとまた人混みに飛び込んで行って…

 皆んなの元に戻る頃、俺はすっかり生きる気力を失っていた。

「ほ、ほら…これで…いいんだろ?」

「う、うん…ありがとうバンキス。でもあんた、何でそんな死にそうなわけ?」

 と、マルシェは速攻でパンへと齧り付く。俺はそんなマルシェを見ても最早怒りさえ湧かない程に疲弊しきっていた。

「もぐもぐ…バンキス様、やはりここから見てもわかる通り人混みは凄まじかったのですか?」

「ああ、今の俺がその成れの果てだ」

「そうですか、ではやはりあそこには近寄るべきではないと、つまりはそういうことですね?」

「全くその通り。だが待て、それを分かって於いて何故俺を行かせた?実験か?俺を使って実験したんだろ?そうなんだろ!?」

「あはははバンキス殿~、まぁまぁパンでも食べて落ち着いて…ってあれ、もうないぞい?」

 そんなガイルの言葉を受けて、皆んなの視線が一斉にマルシェへと向けられる。

「な、何よ!?」

 まだ口のつけられていないパンを両手に、そして口一杯にパンを頬張ってーーーつまりこのマルシェという女はあろうことか俺が命辛々に調達してきた5個のパンの内実に3個を一人で平らげようとしていることになる。一人1個ずつ配当したとしてそれでは数が合わない。そう、俺の分がないのだ。

「マルシャの馬鹿…馬鹿馬鹿馬鹿」

 結局、一番の功労者である俺は何も食えずじまい。泣いていいか?いいよな?なぁなぁなぁ!?





 宿に着いた。久しぶりにベッドの上で横になれると思うと涙が出そうになる。それぐらいに辛い旅路であった事は言うまでもない。

「まだ昼過ぎだが俺はもうゆっくりしたいと思う。お前らはどうする?」

「私はこのままギルドに行くわ。この周辺について情報収集したいし?だって私冒険者だし?」

 と、すっかり元気を満点といった様子のマルシャ。この馬鹿はとりあえずそれでいいとして、他二人はどうだろうか?

「私は少し街を見回ってみたいと考えております」

 とはルクス、その瞳はキラキラと輝いている。どうも俺と同じ田舎者であるルクスとはこれ程にデカイ街へとやって来るのは初めての様で今すぐにでも街を探検したいとはその瞳が存分に語っている。

「そうか。で、お前は?」

「私は…適当に過ごすぞい?」

 ガイルはそう言って、視線は近くのブティック店へと向けられていた。こいつもこいつでどうやら魔王城にはない新鮮な街並みに心奪われているみたいだ。さっきから街行く人々の服装にばっかりに言及しているあたり、こっちの服装に何やら興味がある様子。うん、中々女の子らしくていいんじゃない?ただ言わせてもらうがそういうの普段から見せてもらってもいいんだからな?

「よし、それじゃあ一旦パーティは解散ということでいいな。今日は各々自由時間ということで」

 こうして俺は宿屋へ、他3名は各々が行きたい場所へと向かっていった。

 束の間の休息。思えば一人になれたのはかなり前、冒険者として旅に出たすぐ辺りぐらいだったな?あの時はまさかこんな事になるなんて想像すらしていなった。それ故にもしもあの頃の俺に一言助言できるのであれば、「今のうち一人を満喫しとけ」と、そう言っておきたい所存である。

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