能ある冒険者は、その内に秘めたる魔槍”グングニル”を隠す -北欧神話伝来の魔槍グングニルを与えられた俺という最強の存在の苦難の旅路-

泥水すする

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第2章

第6話 問題児達は問題を反省しない

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 やはりと言って俺の仲間達は強かった。各々が各々の役割を存分に発揮し、今この辺り一帯はマルシャとガイルによって殺戮されたレッドデビル君達の無惨に朽ち果てた屍と、ルクスの授かりし大精霊様サンちゃんお力による超絶なる回復魔法を受けた俺の、その余分すぎる回復魔法が大地に恵みを与え花々が燦然とは咲き乱れていた。

 まさに地獄と天国、今この場を見た誰かは一体この場で何があったのかと頭を悩ませることだろう。実際に全てを拝見した俺がそう言うのだから間違いはない。信じて欲しい。

「バンキス~あんた何かしたのぅ?」

 嫌味ったらしくそんな事を言ってくるマルシャ。

「いや、何も。強いて心の中で頑張るみんなを応援していた」

「バンキス様、それは良い心掛けです!例え力に成らぬとも心は共にあらんとするバンキス様の優しさが滲み出ておりますよ!?見習わなくては…」

 と、感心めいた口振りをするルクスは可愛い。可愛いがお前は全体的にどこかズレていると思うの。

「いやいや、これしきの事バンキス殿の手をわずらわせるまでも有りません!これしきの事は…ぞい!」

 何やだその口癖可愛いガイルちゃん。ガイルちゃん可愛いほんと好き愛してるいっぺん死んどく?

「はぁ、とりあえず先を急ごう…」





 かくして、俺たちの戦闘面に関して言えば順風満帆過ぎるぐらいの旅は続いた。途中、例によっては出現する魔物達を可哀想に思うぐらいには屍を築いて、俺を除く冒険者皆々様の類いまれなるポテンシャルを存分には拝んだのである。

『もうこいつらだけで充分なんじゃね?」

 と、彼等の奮闘ぶりを間近に拝見していた俺とはいつしかそう思うようになっていた。ただ、そうと言うのは先に申した通り戦闘面に関してだけに言えることであり、俺たちの旅に何ら問題がなかったわけではなかったとはここに言い残しておこう。

 そんな問題について、とある小さな洞窟にて野営している時、俺が焚き火で炙った今晩の夕食である串焼きを手にとった時だった。

「バ、バンキス!あんた、ちょっと!?」

「ん、どうしたマルシャ?」

「あんたさっきからバクバク食い過ぎでしょ!?少しは皆んなの事も考えなさいよね!?」

 と、何故か名指しでそんな事を言ってきやがったのである。そんなマルシャに対して俺が言えることとは、

「いやいや、それをお前にだけは言われたくないと思うのは俺だけか?」

 と、次にルクスとガイルを尋ねて、

「ど、どうでしょうか…でも私にはそれ程にバンキス様が欲張っていたようには見えなかったのですが…」

「ぞい」

「だそうだ。というかだマルシャ、俺からすればお前の方がよっぽどだと思うのだが気のせいか?」

 そう言った俺の目に大量の串束は映る。そんな串束とはマルシャの足元へと積み上げられたもので、つまりはそう言うことである。

「き、気のせいでしょ?」

「気のせいならいいんだ。いや俺の気のせいならどんなに良かったことか…」

「な、何よ!?言いたい事があるならはっきり言いなさいよ!?」

「自発的に気づけ、お前は目の前の串束を見て何も思わないのか!?」

「こ、これは…その…」

 マルシャは手に持った串焼きを食べる手を口元寸前では止め、自身の足元に視線を移した。移して、今度こそは俺の言葉の意味を理解したのか申し訳なさそうには膝を抱えてうずくまる。

「仕方ないじゃない…お腹が減るもんは減るんだもん!動いたらお腹が鳴るんだもん!生理現象なんだもん!」

「それが悪いとは言ってないんだ?ただな?俺達はパーティだ、パーティである以上その食糧も均等にはする必要がある。だから言っておきたい、今まさにお前の手に持った串焼きを最後に俺たちの備蓄は尽きる」

「ふぁ!?嘘でしょ!?」

「事実だ」

「何でそれを早く言っておかないの!?もう食べちゃったんだけど!?もう元には戻せないんですけど!?」

 そう叫んで、あろう事か手に持った最後の串焼きに噛り付いた。全く反省の色がない。いやそもそもそんなものがあったのならこんな事にはなっていなかったことだろう。

「…仕方ないじゃん…責めるなら育ち盛りな私の体を責めてよ…」

「つまりお前を責めたらいいんだな?」

「うっ…バンキス、あんた鬼ね…私、悲しいの…凄く悲しいの…しくしく…」

 いやいや泣く事ないだろうが!?むしろ泣きたいのは俺たちの方だぞ!?

「あーもう分かったよ!分かったからもう泣くな!ほら俺の余った分の串もやるから元気出せ」

「……ふん、バンキスのくせに優しくシナイデヨネ…」

 と、ちゃっかり俺の手から串を毟り取るマルシャにはやはり何も分かっちゃいない。最早呆れを通り越して脱帽せざるを得ない。

 こうして、俺たちは旅を開始した早々にも食糧難に陥ってしまっていた。明日からは襲ってくる魔物を倒すだけではなく、そこから採取した肉を丁重にはマルシャに奪われないよう保管する必要が生まれたみたいだ。

 これが問題その一、マルシャの大食らいによる食糧難問題である。

 そして、

「バンキス様!」

 またまた別の日、その日はとある湖の畔にてひと時の寛ぎタイムを味わっている時だった。俺が気持ちよく日光浴していると、そう弾んだ声色でルクスが俺を呼んでいた。何事かと思いルクスの方へと首を傾け、そして俺は目を疑った。

「…は、はぁ!?ルクス、お前それ何だ!?」

 そんな驚き声を上げた俺の目に一匹の悍ましい魔物は映る。見るからにグロテスクな小型の魔物を抱えて現れたルクスがそこにいた。

「ふっふっふ…どうですかバンキス様?可愛くないですか?」
 
 渡しませんよ?、そう言いたげにニヤケ顔を浮かべるルクスとは一体何をどう思ってその魔物を可愛いと判断したのか俺には甚だ理解が出来ない。てか出来たもんじゃない!

「馬鹿!今すぐ捨ててこい!」

「え、ええ!?何故そんな事を言うのですか!?理解不能ですよ!?」

「理解不能だと!?それはお前の美的感覚にそっくりそのままお返ししておいてやる!と、とにかくだ…危ないから、な?」

 俺は魔物を刺激しないようゆっくりとはルクスに近づこうとして、

「こ、こないで下さい!?」

 と、ルクスは後退りをする。由々しき事態だ。

「お、落ち着こうルクス!?一旦冷静に、な?そしたらお前も事のヤバさに理解できるから!」

「何ですかさっきから!?それじゃあまるで私がおかしいみたいな言い方じゃないですか!?」

「い、いやだから全くその通りなんだが…」

「もう!バンキス様にも見せてあげようとした私が馬鹿でした!もう結構ですよ!ゴメンねペトロちゃん?バンキス様が少し人より美的センスがズレてるみたいでゴメンね?」

 ぺ、ペトロちゃん!?もう名前までついてんの!?

「お、おいルクス!?だからいい加減ーー」

 ーーその魔物を捨てろ、そう続けようとした、次の瞬間。

「いたぁああああああああああああい!!」

 ルクスの阿鼻叫喚が響き渡る。見ると、魔物がルクスの腕へとガブリと噛み付いているではないか。うん、かなり痛そうだ。

「ほら言わんこっちゃない!」

「バンキス様ぁああああ!!痛い!!とってぇええ!!」

「わ、分かったらとにかくジッとしてろ!?」

 問題その二、ルクスとは人と大きく異なった美的感覚の持ち主だった。それが今後の旅に於いてどう影響するかは想像するも馬鹿らしくは思う次第である。ただでさえ波乱に満ちるだろう旅路にこのルクスとはとんでもないスパイスを投じてくれたのだ。
 
「うっ…うっ…ペトロちゃん…」

「よしよし、残念だったな」

 幸いにもルクスの腕の傷とは大したことなく、それは先ほどの魔物ペトロちゃん(仮)が低級種の魔物であったという何よりの証明である。

 それにしても助かった…いくら小型と言っても魔物は魔物。魔物の中には小型でも人間の腕ぐらいなら平気で喰いちぎる化け物みたいなやつもいるみたいだから今後はルクスの動向を気にかける必要がある。また変なもん拾ってきたりされても困るしな…

「はっはっは!ルクス殿、此度は災難でしたなぁ!?でも安心して下さい!この通り!奴は私が抹殺しておきましたぞい!」

 と、唐突には現れたガイルとは大剣を片手に、その大剣の先端でペトロちゃん(仮)が変わり果てた姿となってグッタリと突き刺さっていた。タイミングの悪さに俺は頭を抱える。そして、悪い予感が的中する。

「う、うわぁあああああああ!ペトロちゃぁああああああーーー」

 再度ルクスの阿鼻叫喚が岬の畔に木霊して、俺はすぐ様ガイルを手を引いて、

「ちょっとガイル、いいかな」

「な、なんぞい?」

「いいから」

「ぞい?」

 そのままルクスが見えないぐらいには離れた場所へと移り、

「ガイルよ、お前にちょっとしたお願いごとをしたいのだが…平気か?」

「き、急に改まって何かありましたかバンキス殿!?私に出来ることであれば何なりと言うぞい!?」

「じゃあ率直に言おうと思う。そいつについて、何だがな?」

 俺がそいつと言って指差した先に、ガイルの大剣によって無残にも串刺しとなったグロデスクな魔物は映る。

「えっと…この気色の悪い低級魔物をどうしろと?」

「剥製にしてほしいんだ」

「剥…製?」

 ガイルが首を傾げて魔物を見る。見て、すぐ様俺へと向き直っては「こいつ頭大丈夫か?」とはその瞳で語る。

「バンキス殿、些か申し訳にくいのですが申していいです?」

「どうぞ?」

「正気ですか?」

「さぁ、どうだろうか?」

 自分でもよく分からん。

「いやだって仕方ないだろ!?お前だってあのルクスの阿鼻叫喚を耳にした筈だろ!?ありゃあ相当きてる!今後あいつの人生を大きく左右してしまうほどの何かをそのペトロちゃん(仮)が有しているんだよ!?」

「うむ、確かに先ほどのルクス殿には狂気を感じましたね…」

「だろ?そう感じたのであればお前にも理解してほしい!そのペトロちゃん(仮)を永久保存版ペトロちゃん(改)にすればあいつの歪んだ美的感覚は傷付かずに済むんだ!その事を踏まえてもう一度聞くぞ…可能か?」

「…よく分かりませんが、別に難しいことではないぞい」

 だそうだルクス、良かったな?

「うひひ…ペトロちゃん可愛いですねぇ…よしよしよし」

 ペトロちゃん(仮)改め、永久保存版ペトロちゃん(改)を抱いたルクスは嬉しそうにしていた。そんな様子を側から見守る俺の心情とは複雑なものであった。

「はぁ、果たしてこれで良かったのか…」

「詰まるとところ、あんなにも幸せそうなルクス殿が見れたのだからそれでいいじゃないか?」

「うん、まぁな。その点だけで言えば良かったといえるだろうな。いやどうして、助かったよガイル」

 俺はガイルに微笑みかけた。普段は迷惑ばっかりな奴でもたまにはいいトコあんじゃん、という意味合いを込めて。

「バ、バンキス殿…その…照れるではありませぬか…」

「ははは、ここは素直に喜んどけって?」

「ぞい…」

 とガイルは小っ恥ずかしそうに呟いた。そして、

「でも本当に良かった!私はてっきりバンキス殿に怒られるとばかり思っていたぞい!」

「ん?どうして俺がガイルを怒る必要があるんだ?」

「いやだって、あの魔物は多分私の存在を嗅ぎつけてやってきたのだからな!そうでなければこんな穏やかそうな場所にあのような悍ましくもグロテスク魔物が出現するわけない、ぞい!」

「ん?」

 ここ、笑うとこ?

「冗談だよな?」

「冗談であったらどんなに良かったことか…くそ、あのバカ兄貴。予想はしていたがまさか魔物をけしかけて寄越すとは何たるバカ兄貴。これじゃあオチオチ寝れもしな、」

「そういう事は早く言え!」

 問題その三、[ダークプリマ]であるガイルとはどうも身体から特殊な魔力を垂れ流しているらしく、その魔力香とは遠い大地にいる魔王さんにもモロバレな程だと言う。つまりだ、魔王さんとはガイルの魔力香を魔物達に覚えさえどうやってでも連れ戻さんとしていると、

「そういうことでいいんだな?」

「ええ、全く持ってその通りぞい!」

「ふんっ!」

「いたい!ど、どうして殴るの!?」

「自分の胸に聞け」

「…胸?」

 と、ガイルは自身の胸元を見る。そして、

「触りたいの?」

 そんなことを尋ねてきた。うん、いつぞやも同じようなやり取りをした事は記憶に新しいが、その時同様には全力で小突いておくとしよう。

 
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