チート能力を持って、異世界転生しました!

泥水すする

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第16話 無情

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 もう、終わった。
 全て、どうでもいい。

 大体、死んで終わりだった筈なのに、異世界転生をするとか、そっちの方がおかしかったんだ。

 上手い話には、裏があるっていうけど、本当にその通り。

 タケヒコとヒナコを救ったつもりが、実はタケヒコを殺してしまっていて、またヒナコに殺されてしまっていて、俺はまた、死んでしまって…

 地獄か、ここは?

「ははは、アクマ、俺を、殺してくれ」

 俺はアクマに、頭を下げてお願いした。

「何言ってるんですか?ダメに決まってるじゃないですか?」

 でも、アクマは殺してはくれないみたいだった。

「スバル、あなたにはまだ後2回、転生のチャンスがあります♪ここで死ぬのは、勿体無いですよ?それに、魔王を倒せば現実世界に戻れるって話は、嘘ではありません」

「…いいよ、もう。だって、現実世界に戻っても、どうせ、タケヒコとヒナコは、もういないんだし…」

 そう言った俺に、アクマは「やっぱりスバル、あなたは随分と馬鹿なようですね」と、呆れた口振りを浮かべた。

「だから、さっきも言ったでしょう?あなた方三人の世界線は、3つに分岐したと。つまりですよ?スバルが魔王を倒して、現実世界に戻った場合、スバルの戻り先は、二人を救ったα世界線。要するに、元通りになるって、そういうことです。β世界線とγ世界線は、どうしようありませんが…少なくとも、あなたの平穏だった日常は返ってきます」

 俺は、驚いた。
 また、突如として、希望の光が差したと、嬉しく思っていた。

 でも待て、まだ安心はできない。
 これはアクマの罠かもしれない。
 そもそも、そんな事をして、この女神に何のメリットがある?

「俺は、信じないぞ?」

「…ふふ、当然の反応ですよね。じゃあ、逆に尋ねますが、どうしたら、信用してくれますか?」

 アクマはクスクスと、微笑んで言った。

 正直、笑ったアクマは、滅茶苦茶可愛いかった。

 ムカつく野郎だし、許せないけど…

 付き合ってみたいなって、そうは思った。

 でも、俺はすっかり老けちゃったし、こんなヨボヨボな俺じゃあ、アクマを抱きしめることなんて…って、俺は何でアクマと付き合う気でいる!?やっぱりアホか、俺は…

「じゃあとりあえず、この体を、元に戻してくれ。話はそれからだ」

「いいですよ?そんなの、余裕のよっちゃんです♪」

 アクマが指先を、俺に向けた。

「これで、元通りです」
 
 またそう言って、手鏡を手渡してきた。

 俺はワクワクして、手鏡を覗くと…

 やっぱり俺は、老けたままだった!

「おい!?」

「あはははははは、冗談冗談♪」

 アクマは笑って、またまた俺を指差した。
 すると、手鏡に映った俺の顔は、みるみる若返っていく。

 よしよし、これでいい。

「これで私の話を、信用してくれましたか、スバル?」

「ああ、一応は、信用してやる」

「ふふふ、じゃあ、もう一度異世界に行っちゃいましょう♪あと2回チャンスがありますからね!今度は、命を大事にして下さいね?」

「当たり前だ!絶対に、お前をギャフンと言わせてやるからな…覚悟しとけよ?」

 俺は、魔王を倒して、あの世界に帰るんだ。
 タケヒコとヒナコがいる、あの日常に…

 俺は、もう諦めたりしない!

 俺は、覚悟を決めた。

「最後に、聞いていいか、アクマ?」

「はい、なんでしょう?」

「タケヒコとヒナコの…残りの転生回数は、どれくらいだ?」

「そんな事ですか?まぁいいでしょう、答えましょう。タケヒコは既に転生回数を満了し、その命を遂げました。ヒナコはあと一回、転生が可能です。ああ、あと、あなた方それぞれ、異世界転生する時期が重ならないよう、いじらせてもらいました。重なると、私のキャパがオーバーしてしまいますので。タケヒコはあなたが転生する200年前に不死の転生者として、ヒナコはスライムという魔物としてその100年後に、そしてスバルが今なのです。故に、あなた方の転生回数にズレがある、ということですね、はい♪」

 衝撃の事実だった。

 でもそうか、だからエルフ族の族長ルバは、あんな事を言っていたのか…

『遥か昔、このエルフ族の里に災いが降りかかった時、どこからともなく、一人の青年が現れて、エルフ族の里を救ったと言われています。その時、青年はこう言い残して、去っていたようなのです。『いつかまた、災厄が降りかかった時は、俺がまた助けにくる』と。そして、この剣、アルティメットソードは、その時にも青年がこのエルフ族の里に置いていった、至宝の剣なのです!冒険者スバルよ、今こそこの至宝の剣を、返す時が来たと、私はそう思っています。』

 それは以前、エルフ族の族長ルバから聞いた、伝承の話。伝承に出てくる青年は、タケヒコの事だったんだ…

 タケヒコは200年も異世界で、ずっと一人で戦っていたのか…

 そうか、そうなのか。

 ヒナコもスライムとして、人の姿まで奪われて、そして大好きなタケヒコもまで、俺に殺されて….

 今ではあの時の、ヒナコの言葉がよく理解できるよ。

『よくも…スバル…あんたがタケヒコを殺したんだ…あんたが、悪いんだ…』

 ヒナコ、お前はそう言っていたんだよな?
 ごめんな、気づけなくて…ごめんな、ごめんな…

 俺が、悪かった。
 だから、せめてもの罪滅ぼしを、俺にさせてくれ。

 俺は、もう迷わないから。

「アクマ」

「はい?まだ何か?」

「宣言するよ」

「…宣言?」

「そう、宣言だ。よく聞け」

 俺は、アクマを睨んだ。そして、

「いつかお前を、絶対に殺してやる。魔王を倒して、またここに戻ってきて、それからお前の番だ。皆の仇…お前は、俺達の敵だ!」

 そんな宣言。

 アクマは「へぇ…」と、呟いた。

「やれるもんなら、やってみたら?スバルに出来たら、だけどね?ぷークスクスwwwwwwwwwwwwwwwww」

 次の瞬間、視界が、ボヤけていくのが分かった。

「じゃあ、スバル、行ってらっしゃい♪そして、待ってるからね?」

 最後に聞いたアクマの声とは、やはり俺を馬鹿にしていた。

 どうやら、俺はこのまま再び異世界に落ちていってしまうらしい…

 今度こそは、必ず…

 俺は、異世界で生き抜いてやる!

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