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第4章 騒乱と死闘
8話 もうどこに戻れない
しおりを挟む足が次の瞬間にも崩れ落ちてしまうかもしれないと、そう思った。
それでも、俺は走った。
走って、駆けて、走って走って走って走り抜けて、俺は一心不乱にラクスマリア城へと急いだ。
もしかしたらもう手遅れかもしれない。
今更向かったところで、有りの侭の現実とは俺にただただ悲惨な現実だけを叩きつけてくるだけかもしれない。
それでもーーー俺は走った。
足が止まる頃、俺の目には有りの侭の現実は広がる。
「……何で…何でだよ…何で!!こうなるんだよ!!」
我を忘れて叫んでいた。
ただただ叫ばずにはいられなかった。
それは悲しいとか、苦しいとか、色んなものが入れ混じった感情から発せられる思いの丈であり、心の声であった。
ゾンビのようには徘徊するそれら屍とは、ついさっきまでこのルコンドに暮らしていた人々。
争いを知らずに、豊かそうな暮らしぶりの、平和ボケしていた罪なき人達だ。
そんな人達が今ではどうだ。
腕、足を失って切れ落ちて、それでも動こうとする亡者達。頭がない者もいる、眼球の抉れた者だっている、それなのにも関わらず、皆一様にはユラユラと身を揺らして闊歩していた。
感情はないようだった。
ただ操られるままには、ただ動いているに過ぎないみたいだった。
生存者は誰一人としていない。
光景一杯に広がる、動く屍と、燃え盛る建造物だけが、ただそこにはあった。
「うわぁああああああっ!!」
俺は叫び声を上げて、再び駆け出した。
急げと、誰かに命令されている気がした。
それが誰かとかではなく、自身こその命令だとは思えなかった。
それ程に俺の心はグラついていて、現実を否定したい自分と、どこまでも現実を認めようとする自分がいたのだ。
そんな俺に対し、屍の群れが一斉には反応。
俺の姿を見るや否や、我先にとは走り駆け寄ってきていた。
血を求めるゾンビのように、俺を襲いくる。
「邪魔だぁあああああ!!!」
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【通常スキル】
・剣鬼形態
[概要]
伝説の魔人ハイトリック・エストバーニが辿り着いたとされる剣の境地にして、剣技の真髄『剣鬼形態』別名『ビーストモード』。
真紅の魔力オーラを纏ったハイトリック・エストバーニはこの状態化に限定されて、常軌を逸した動きを見せたとされる。
超越した身体性能に闘争本能、にしてそこから繰り出されるは研ぎ澄まされしハイトリック流剣技殺法の真骨頂。
[逸話]
体内から真紅の特異魔力を放出させたハイトリック・エストバーニは『紅蓮の剣鬼』と恐れ、称えられたという。
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俺は無意識の内には[スキル]剣鬼形態を発動。
体に真紅の魔力ーー特異魔力を纏って、迫り来る亡者の大群を無我夢中にはなぎ倒していった。
剣に力が入りすぎてるせいか、亡者を葬るまでとはいかない。
また倒しても倒しても、何度だって起き上がってはくる亡者達に限界はない。
だからこそ続々と、次から次には迫りよってくる。
キリがない。
俺は深追いはせず、ただ前に進むことだけを考えた。
どうしてそんな事しているかも分からずに、俺は無になって、剣を振り抜いては突き進むだけだった。
ラクスマリア城へとただ真っ直ぐに、ただそれだけしか頭にはなかった。
Now loading…
----------------------------
Now loading…
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ステータス展開中…
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class : joker
【たけし】
※状態[剣鬼形態]
・MP▼ATK ▲DEF▲
LV : 22
HP : 2800 / 2800
MP : 1833 / 1932▼
ATK : 5612▲
DEF : 4108▲
MAT : 261
MAE : 182
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剣鬼形態はMP消費が激しい。
もしもノブナガとの戦闘を見据えたとすれならば、今現在の俺の選択とは酷く誤りでしかない。
頭では分かっていた。分かっているつもりだった。
それでもそれをやめないのは、俺がそれ程に怒り狂っていたからだ。
ただただ、グインとラクシャータの安否が気がかりで仕方がない。間に合え間に合えと、心の中で何回も連呼して、心はずっと落ち着かないままだった。
もしも神という全知全能なる存在がするというならば、土下座でもなんでもしてやる。欲しいものがあるってんならくれてやる…だから、だから頼む…
『もうこれ以上、俺から何も奪わないでくれ…』
奪う立場の俺が言えた台詞じゃないことは充分理解してるよ。
そんな事分かってるよ。
でもな、それでも…頼むよ、神様…
やっとできた繋がりなんだ。
命を張ってでも守りたいと剣に誓った、大切な人達なんだ。
優しくて、それでいて時に厳しくて、フラフラと脇道に逸れてしまいそうな俺を、ちゃんとした道に導いてくれる。気高く清く美しく、ラクスマリア王国精鋭隊マーガレット・アーマーズ隊長ーーグイン・アルマーニ。
まだまだ子供だし、我儘だし、好き勝手だし、気分屋だけど、それでも国の、皆の為に必死で王様として振舞っていたのを俺は知っている。だけどやっぱりまだまだ子供で、誰かに支えられてないとすぐにも崩れしまいそうな王女様ーーラクシャータ・ラクスマリア。
俺は2人と、まだまだ一緒にいたい。
できれば一生、彼らと繋がっていたい。そばに居たい、守りたい、守られたい、支えられたい、支えてあげたい…
『これからも、ずっとーーー』
「神…様……何で、何でこう…なるんだよぉ…ぅうう…」
ラクスマリア城に続く一本道、そこに辿り着いた俺。
そうして俺は、この世界に神などいないことを悟った。
どうしていいのかも分からずに、沸き立つ焦りや悲しみのやり場を見失って、ただただ俺は目を見開いていたーーーそこはラクスマリア城へ続く一本道。
今朝通ったばかりのそんな一本道で、俺の感情は絶望一色へと染まり切っていた。
何故なら俺はそこで、無残には散ったのだろう、ラクスマリア城の精鋭騎士団マーガレット・アーマーズの迫り来る屍を見たからだ。
そしてその先頭を歩く、マーガレット・アーマーズ隊長グイン・アルマーニの変わり果てた姿を、俺は見てしまった。
『もう、どこにも戻れないーーー』
そう思った。
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