5 / 7
一章
ソン村脱出②
しおりを挟む
「バカ! 身をかがめなさい!! 死にたいの!?」
思わず立ち上がった俺にこいつが注意する。
こいつの声の方が大きくて危なっかしい。
「あ、ああすまない」
俺はすっと気が抜けたように腰を落とし、顔の汗をぬぐう。
「見つかったらどうなるか、見てなさい」
「あ、危ない」
ちょうどゾンビが振り向いた時、ゾンビの横を走って通り抜けようと男が駆けだした。
「はっ、はっ、はっ、この村さえ出れれああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー」
男の奇声。そして天に舞う血しぶき。
ゾンビが素早く振り返り、男の腕をひっかく。それはもはやひっかくというレベルではない。
もぐ。そう言った方が正しい。
男の腕が宙に舞い、無情にも地面にたたきつけられる。
「う、うでがああぁぁぁぁーー。お、おい、やめろ。来るな。くるなあああぁぁぁぁぁぁーーーーー」
くちゃくちゃ、くちゃくちゃ。
男肉をむさぼりだすゾンビ。
男の声はだんだんと小さくなっていき、とうとうなくなった。
「う、うそだろ…………………………。なんて力してやがる。こんな力持ってなかったはずだ。本当にこいつらは俺が開発していた…………………………ゾンビなのか?」
「開発? よくわかりませんが、奴らは音に敏感で、さらに視力もかなりたけていて、集団行動に徹しています」
視力がいい? 集団行動?
違う。俺が知っているゾンビとてんで違う。俺たちの世界でゾンビは視力がない。そして脳は完全に機能していないため、集団行動なんてのは不可能なはずだ。
俺の知っているゾンビとは違うのか?
「こっちです。食べるのに夢中になっているときは安全です。村を抜ければきっと馬車が待っているはずです。さっ、おいていかれる前に、早く」
俺はうなづき、こいつについていく。
こいつの言った通り、ゾンビはこちらを見向きもせず、食事に夢中だ。
「さあもうすぐ村の出口です。もうすぐ」
ちょうど村の出口が見えたところ。そして村の出口から少し離れた先、小さく何かが見える。きっと脱出用の馬車だろう。
少々気が抜けた瞬間だった。注意がそれた。俺は気づけなかった。
「あああーーー」
隣から聞こえてくる低い声。
しまった。
そう思ったときにはもう遅い。ゾンビの腕はもう振り上げられている。
……………………死んだか。
そう心の中で思った。別に悔いはない。
「あきらめちゃダメっ!!」
そう発せられた後、俺の体は強い衝撃を受け、地面に叩きつけられる。
そして俺が襲われていたと思しき場所にこいつ、 ミリーの姿がある。
「きゃああぁぁぁぁぁぁあぁあああーーーーー」
天をも切り裂かんばかりの悲鳴。
倒れる、ミリー。
そして、ミリーは声にはならないまでも、俺に何かを伝えようとしている。
なんだ、なんて言っているんだ。
「………………に、げ……………て」
「うああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ、くそがああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー」
俺は今日初めて、ゾンビに立ち向かった。
思わず立ち上がった俺にこいつが注意する。
こいつの声の方が大きくて危なっかしい。
「あ、ああすまない」
俺はすっと気が抜けたように腰を落とし、顔の汗をぬぐう。
「見つかったらどうなるか、見てなさい」
「あ、危ない」
ちょうどゾンビが振り向いた時、ゾンビの横を走って通り抜けようと男が駆けだした。
「はっ、はっ、はっ、この村さえ出れれああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーー」
男の奇声。そして天に舞う血しぶき。
ゾンビが素早く振り返り、男の腕をひっかく。それはもはやひっかくというレベルではない。
もぐ。そう言った方が正しい。
男の腕が宙に舞い、無情にも地面にたたきつけられる。
「う、うでがああぁぁぁぁーー。お、おい、やめろ。来るな。くるなあああぁぁぁぁぁぁーーーーー」
くちゃくちゃ、くちゃくちゃ。
男肉をむさぼりだすゾンビ。
男の声はだんだんと小さくなっていき、とうとうなくなった。
「う、うそだろ…………………………。なんて力してやがる。こんな力持ってなかったはずだ。本当にこいつらは俺が開発していた…………………………ゾンビなのか?」
「開発? よくわかりませんが、奴らは音に敏感で、さらに視力もかなりたけていて、集団行動に徹しています」
視力がいい? 集団行動?
違う。俺が知っているゾンビとてんで違う。俺たちの世界でゾンビは視力がない。そして脳は完全に機能していないため、集団行動なんてのは不可能なはずだ。
俺の知っているゾンビとは違うのか?
「こっちです。食べるのに夢中になっているときは安全です。村を抜ければきっと馬車が待っているはずです。さっ、おいていかれる前に、早く」
俺はうなづき、こいつについていく。
こいつの言った通り、ゾンビはこちらを見向きもせず、食事に夢中だ。
「さあもうすぐ村の出口です。もうすぐ」
ちょうど村の出口が見えたところ。そして村の出口から少し離れた先、小さく何かが見える。きっと脱出用の馬車だろう。
少々気が抜けた瞬間だった。注意がそれた。俺は気づけなかった。
「あああーーー」
隣から聞こえてくる低い声。
しまった。
そう思ったときにはもう遅い。ゾンビの腕はもう振り上げられている。
……………………死んだか。
そう心の中で思った。別に悔いはない。
「あきらめちゃダメっ!!」
そう発せられた後、俺の体は強い衝撃を受け、地面に叩きつけられる。
そして俺が襲われていたと思しき場所にこいつ、 ミリーの姿がある。
「きゃああぁぁぁぁぁぁあぁあああーーーーー」
天をも切り裂かんばかりの悲鳴。
倒れる、ミリー。
そして、ミリーは声にはならないまでも、俺に何かを伝えようとしている。
なんだ、なんて言っているんだ。
「………………に、げ……………て」
「うああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ、くそがああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー」
俺は今日初めて、ゾンビに立ち向かった。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣で最強すぎて困る
マーラッシュ
ファンタジー
旧題:狙って勇者パーティーを追放されて猫を拾ったら聖獣で犬を拾ったら神獣だった。そして人間を拾ったら・・・
何かを拾う度にトラブルに巻き込まれるけど、結果成り上がってしまう。
異世界転生者のユートは、バルトフェル帝国の山奥に一人で住んでいた。
ある日、盗賊に襲われている公爵令嬢を助けたことによって、勇者パーティーに推薦されることになる。
断ると角が立つと思い仕方なしに引き受けるが、このパーティーが最悪だった。
勇者ギアベルは皇帝の息子でやりたい放題。活躍すれば咎められ、上手く行かなければユートのせいにされ、パーティーに入った初日から後悔するのだった。そして他の仲間達は全て女性で、ギアベルに絶対服従していたため、味方は誰もいない。
ユートはすぐにでもパーティーを抜けるため、情報屋に金を払い噂を流すことにした。
勇者パーティーはユートがいなければ何も出来ない集団だという内容でだ。
プライドが高いギアベルは、噂を聞いてすぐに「貴様のような役立たずは勇者パーティーには必要ない!」と公衆の面前で追放してくれた。
しかし晴れて自由の身になったが、一つだけ誤算があった。
それはギアベルの怒りを買いすぎたせいで、帝国を追放されてしまったのだ。
そしてユートは荷物を取りに行くため自宅に戻ると、そこには腹をすかした猫が、道端には怪我をした犬が、さらに船の中には女の子が倒れていたが、それぞれの正体はとんでもないものであった。
これは自重できない異世界転生者が色々なものを拾った結果、トラブルに巻き込まれ解決していき成り上がり、幸せな異世界ライフを満喫する物語である。
転生したら名家の次男になりましたが、俺は汚点らしいです
NEXTブレイブ
ファンタジー
ただの人間、野上良は名家であるグリモワール家の次男に転生したが、その次男には名家の人間でありながら、汚点であるが、兄、姉、母からは愛されていたが、父親からは嫌われていた
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
あっとさん
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
ネグレクトされていた四歳の末娘は、前世の経理知識で実家の横領を見抜き追放されました。これからはもふもふ聖獣と美食巡りの旅に出ます。
☆ほしい
ファンタジー
アークライト子爵家の四歳の末娘リリアは、家族から存在しないものとして扱われていた。食事は厨房の残飯、衣服は兄姉のお下がりを更に継ぎ接ぎしたもの。冷たい床で眠る日々の中、彼女は高熱を出したことをきっかけに前世の記憶を取り戻す。
前世の彼女は、ブラック企業で過労死した経理担当のOLだった。
ある日、父の書斎に忍び込んだリリアは、ずさんな管理の家計簿を発見する。前世の知識でそれを読み解くと、父による悪質な横領と、家の財産がすでに破綻寸前であることが判明した。
「この家は、もうすぐ潰れます」
家族会議の場で、リリアはたった四歳とは思えぬ明瞭な口調で破産の事実を突きつける。激昂した父に「疫病神め!」と罵られ家を追い出されたリリアだったが、それは彼女の望むところだった。
手切れ金代わりの銅貨数枚を握りしめ、自由を手に入れたリリア。これからは誰にも縛られず、前世で夢見た美味しいものをたくさん食べる生活を目指す。
異世界に召喚されて2日目です。クズは要らないと追放され、激レアユニークスキルで危機回避したはずが、トラブル続きで泣きそうです。
もにゃむ
ファンタジー
父親に教師になる人生を強要され、父親が死ぬまで自分の望む人生を歩むことはできないと、人生を諦め淡々とした日々を送る清泉だったが、夏休みの補習中、突然4人の生徒と共に光に包まれ異世界に召喚されてしまう。
異世界召喚という非現実的な状況に、教師1年目の清泉が状況把握に努めていると、ステータスを確認したい召喚者と1人の生徒の間にトラブル発生。
ステータスではなく職業だけを鑑定することで落ち着くも、清泉と女子生徒の1人は職業がクズだから要らないと、王都追放を言い渡されてしまう。
残留組の2人の生徒にはクズな職業だと蔑みの目を向けられ、
同時に追放を言い渡された女子生徒は問題行動が多すぎて退学させるための監視対象で、
追加で追放を言い渡された男子生徒は言動に違和感ありまくりで、
清泉は1人で自由に生きるために、問題児たちからさっさと離れたいと思うのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる