どうしても宝くじ高額当選したいから異世界行っても宝くじを買い続ける

たろたろぬ

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一章

宝くじひゃっほおおぉぉぉぉいい!!

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「宝くじ買ってきたぜええぇぇぇぇぇ!! ひゃっほおおぉぉぉぉいい!!」
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁ痴漢よ!!」
「ふぇ!?」

 俺の予想だにしないマドコの反応。
 いつものあの人を見下したような口調ではない。なんというかまだあどけない、少女のような(まあ見た目少女なのだが)声。

 突如ざわざわと周りが騒ぎ始める。
  

 えっ、ちょやめてくれませんかね。なんか変態とかロリコンとかホモとかいう言葉が聞こえてくるのだが。いやちょっと待てよ!! 変態とかロリはわかるぜ? いやわからねえけども。なんだよホモって!? そんな要素一つもねえだろ。

「ちょっと君いいかい?」

 そんな脳内突っ込みを盛大に張り巡らせているとき、俺は見知らぬ男にガシッと力強く肩をつかまれた。

「ちょっと来てくれるかな?」
「ちょ!? 勘違いですって!! なあマド…………………………ていねええぇぇぇぇぇぇぇ」

 すっと後ろを振り向くともう影すら残っていない。
 あれぇ。おかしいなさっきまではそこにいましたよね(汗

「怪しいな。君こっちにくるんだ!」

 い、痛い!
 俺の肩をつかむ手が強くなる。

 こ、このままではまずい。
 なんとかして切り抜けねば。

「う、うあわあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ。か、肩がああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーー」

 俺は大げさに声を荒立て発狂する。
 す、すまん(えっそんなに強く握ったか?)と男が肩をつかむ力を弱めた瞬間。

「さ、さらばだあぁぁぁ」

 俺は男とは反対方向に向かって思いっきり走る。
 
「ああ、くそ待て!!」

 少し離れたところから慌てて出した声が発せられる。
 俺は声がしても振り向かず、行く先もわからず駆ける。




 はあはあ。
 たぶん追っ手はまいた……と思う。

 俺はいつのまにか迷いこんでいた薄暗い路地の青いゴミ箱の隣でうずくまっていた。
 ちくしょう。マドコの野郎。なんであんなこと言ったんだよ。冗談になってねえって。

 これからどうなるのだろう。そう考えると少し気持ちが重くなった。
 はぁ。俺は小さくため息をつく。
 何やってんだか。


「こっちに来たという証言があったぞ! 探せ」

 その声のあと、数人の足音がカサカサと音をたてる。
 ま、まずい。さっき俺の肩をつかんでいたやつの声だ。
 俺は口元を手で覆い、呼吸の音が漏れないようにする。

 
「まだこっちは探してないよな」
 
 一人男が近付いてくる。

 やばい。
 とっさに男が近付いてくる方向とは別の方に視線を向ける。
 そうだ行き止まりだ。
 さっきと違ってあっちには数人の仲間がいる。もうまくことはできないだろう。

 ……………………万事休すか。
 そう思ったときだった。

「坊主、こっちへきな」

 突如後ろからきぃ、と音を立ててドアが開いた。

「ほら早く!」

 俺は勢いにのまれ、こっそりと家の中に入った。


「危なかったな坊主。一体何をしたんだ。がはは」

 俺を助けてくれた老人は陽気そうに笑いながら告げる。

「いやちょっとした濡れ衣で」
「わかる。わかるぜ坊主。やつらもきっとここまでは踏み込んでこないだろうからゆっくりしてけや」
 
 また老人は明るく笑う。
 俺は愛想笑いを浮かべながら老人のことをそっと見る。
 ぼろぼろの衣装に身を包まれ、もうながく剃ってないのだろうか。髭が不規則に伸びている。
 そのまま俺は家の中を見渡す。
 質素という言葉を使っていいのだろうか。壊れかけの木のいすと机。ところどころにある蜘蛛の巣、とてもじゃないがいい暮らしをしているとは思えない。


「どうして俺を助けてくれたんですか?」
「困ってる人を助けるのに理由がいるかね」
「そうだ。まだお礼がまだでした。先ほどは助けていただき本当にありがとうございました」

 俺は慌てて頭を下げる。

「いいっていいって。こんなことはしょっちゅうさ」
「そんなにここら辺の治安はよくないんですか?」
「そうだな、まあいい方ではないことは確かだな」

 老人はそう言いながら机に二つコップを置く。

「そんなところに立ってないでこっちにきなさい。疲れただろう。座って、これでも飲むといい」

 老人のまねきに従い俺はギシギシと音を立てるイスに慎重に座る。
 そしてコップに入った謎のうす茶色がかった液体を見る。

「どうしたそんな不思議そうな目で見て。水を知らんのかね」

 こ、これが水だと!?
 思わず声に出そうになったが俺はぐっとこらえる。

「し、知っていますよ。ただ俺の国の水とは少し違うみたいだったので」
「そうか、君は他国の出身者だったか。わしと一緒じゃな」

 先ほどまでの陽気な雰囲気が少し吹き飛んでいた。
 その感じに思わず影響を受けていると。

「すまぬすまぬ。重い話なぞするつもりはなかったのだ。飲みづらいのなら飲まんでもよいぞ。わしが二つ飲ませてもらうだけじゃ」
「いや、飲みます!」

 さすがに出されたものを飲まないなんて失礼すぎる。
 俺はごくりと唾をのみ、小さく息を吐く。



 …………………………いざ!!!


 覚悟を決め水(のようなもの)を一気にのどに流し込む。


 なんだこの少し硬いようで辛さのある飲み物は。
 水だと思って飲んでしまった分ギャップが…………おえ。


「お、おいしいですね。へへ」

 俺は感情を目いっぱい押し殺し笑顔で告げる。


「ほう、おぬしなかなかやるのう。ほほほ。おぬしとはまたどこかで会える気がするのう」

 そう老人が告げた後だった。
 とんとんとドアをたたく音が室内に響き渡る。
 俺は追っ手がここまできたのかと思い、びくっと体が思わず震えあがる。

「安心せい。あれはお前さんの迎えじゃよ」

 どうしてそんなことがわかるのですか? そう聞こうと思ったとき

「さあ早く行くがよい。わしも用事を思い出してのう。大事な用じゃ。どうして忘れておったのかのう。ほっほっほっ」

 なんだか聞くのを遮るように老人が告げた気がした。
 そんなもんだから俺は黙って老人の元を後にした。

 
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