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一章
デビルバード
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「ふひぃ、疲れたぜ」
すっかりあたりは暗闇に包まれていた。
日払いの仕事から帰ってきた俺は家に戻ってくると両手に抱えている紙袋を机におく。
紙袋には食料の類が入っている。一応今日の分と明日の分だ。
「一応おかえりなさいといってあげます」
「一応ってなんだよ一応って。でもよなんだかこうしてると夫婦みたいだよな」
「そんなに殴られたいですか?」
「待て待てやめろ。マジ怖いからやめろって!!」
相変わらずこいつは笑顔でなんて物騒なことを言いやがる。
「それで私へのお土産はあるのですか?」
「はっ? だってお前食べなくても死なないんだろ?」
「死なないとは言いましたが食べないとは言ってません。私はグルメです」
なんだよその頓智は。一休さんじゃねえんだから。
しかもすごい目をキラキラさせてまあ。しかたねえな。
「わかったわかった。このすげえうまそうな、デビルバードの目というものをだな」
「いらないです」
「人の話は最後まで聞けい!! それにこれは栄養価がとても高く、素晴らしい食材だとハンターのおっちゃんが言ってたぞ」
「そうですね、栄養価は満点ですが世界で三本の指に入る不味さを持っています。それでも食べたいならどうぞ」
「……………………………ま、まじか」
おい、あのじじいそんなこと一言も言ってなかったぞ!!
確か「お兄さんやつれた表情してるね。ぜひデビルバードの目でも食べたらどうだい。栄養満点食べたら超元気よ!」とか言ってたぞ。あっ、一言もうまいとは言ってないな。
ごくりと唾をのみ、デビルバードの目を見つめる。
細い棒状のものにデビルバードという生物の目が刺さっている。
つか見つめるとなんだか目があってなんか食いづらいな。
「さあ早く食べたらどうですか」
「わかってるって」
ええい! 俺は決心を決め口に放り込む。
もぐもぐもぐ。ふむふむ噛みごたえはそこそこ。
噛むが噛むほど一点に残り続けるにがみ、そして口のなかに残り続けるべっちょりとした何か。
これはなかなかいける………………
なんてわけあるかあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー。
「ま、不味い」
俺は大急ぎで紙袋の中から水を取り出し口の中に流し込む。
「はあはあ。助かった」
マジで死ぬかと思った。あっ、もう一回は死んでるのか。てそんなことはどうでもいい。なんだこの不味さ。人生においてこんな不味さ一度も体験したことないぞ。さすがデビルバード。
「さすが新太郎ですね。出○さんばりのリアクションですよ」
「お前よく知ってるな」
はあはあ。
まだ不味さがある。俺は残りの水をぐびっと一気に飲み干す。
「私はこのデリシャークの卵をいただきましょう」
紙袋をごそごそ漁っていたマドコが一つの容器を取り出す。
「あっそれは」
俺の静止を聞かず、マドコは容器を開けそれを豪快にすべて口の中に入れる。
これは俺が後で食べようと思っていた、今日買ってきた中で一番お高いもの。
いくらみたいなもので、ぷちぷちしてて、噛むとふわっと甘みが口の中に広がるらしい絶妙の一品。俺の今日の給料が四千デルベ。でこいつは八百デルベもした、いわば高級食材。
「実においしかったですよ」
「お、俺のデリシャーク。しくしく」
「まあまあ。ほらみてください。もう一つありますよ。デビルバードの目」
「俺を殺す気か!!」
まあいい俺にはまだ、ストレートフィッシュという超旨そうな魚が……………………
「ふぁっ!?」
「ほうしらんれふか?」
もぐもぐもぐもぐとマドコの口が動く。
そして口から飛び出ている魚の尻尾が上下にゆれていた。
「俺のストレートフィッシュ!!!」
ううっ、ダメだもう立ち直れない。ガックシ。
「元気らしてふらはい」
「まず飲み飲んでから話せや」
「どうぞデビルバードの目です」
「そんなもの食うかあぁぁぁぁぁぁーー」
いまさらだが俺すごい疲れてるはずなのに、すごい元気ある気がする。デビルバードの目の効果かもな。あなどれないな。デビルバードの目。
しかたないから俺は安物の食料を腹の中に詰め込んだ。確かオウディ草の干物とロノニ牛とかいうやつだ。味は可もなく不可もなくといったところだった。
そして俺がちょうど満腹になった頃だろうか。
「そう言えばまだ話してませんでしたが、もしも私を裏切って逃亡とかしたら容赦なく抹殺しますのでよろしくお願いしますね☆」
「ずいぶん物騒なこと言うな。逃げねえよ。逃げ場なんてねえだろ」
「時々いるんですよね、働いてお金手に入れたら逃げる人が。抹殺とかすると書類の作成がとてもめんどうなのでやめてください」
「大丈夫だよ。それにな、俺は少し嬉しいんだ。あんな宝くじが当たるのを願っていたころと違って、今は誰かのために何かをしている。なんだか嬉しいもんだよ」
えへへと俺ははなすじをこする。
「気持ち悪いですね。きっとギャルゲーのやりすぎで、好感度上げるためのセリフを心の中で選択したとは思うのですが逆効果です。ごめんなさい」
「やってねえよ!! ………………少ししか」
「少しはやってるんですね。気持ち悪いです」
「いいじゃねえか、やってても」
そんなつまらない話を続けて今日は終わった。
すっかりあたりは暗闇に包まれていた。
日払いの仕事から帰ってきた俺は家に戻ってくると両手に抱えている紙袋を机におく。
紙袋には食料の類が入っている。一応今日の分と明日の分だ。
「一応おかえりなさいといってあげます」
「一応ってなんだよ一応って。でもよなんだかこうしてると夫婦みたいだよな」
「そんなに殴られたいですか?」
「待て待てやめろ。マジ怖いからやめろって!!」
相変わらずこいつは笑顔でなんて物騒なことを言いやがる。
「それで私へのお土産はあるのですか?」
「はっ? だってお前食べなくても死なないんだろ?」
「死なないとは言いましたが食べないとは言ってません。私はグルメです」
なんだよその頓智は。一休さんじゃねえんだから。
しかもすごい目をキラキラさせてまあ。しかたねえな。
「わかったわかった。このすげえうまそうな、デビルバードの目というものをだな」
「いらないです」
「人の話は最後まで聞けい!! それにこれは栄養価がとても高く、素晴らしい食材だとハンターのおっちゃんが言ってたぞ」
「そうですね、栄養価は満点ですが世界で三本の指に入る不味さを持っています。それでも食べたいならどうぞ」
「……………………………ま、まじか」
おい、あのじじいそんなこと一言も言ってなかったぞ!!
確か「お兄さんやつれた表情してるね。ぜひデビルバードの目でも食べたらどうだい。栄養満点食べたら超元気よ!」とか言ってたぞ。あっ、一言もうまいとは言ってないな。
ごくりと唾をのみ、デビルバードの目を見つめる。
細い棒状のものにデビルバードという生物の目が刺さっている。
つか見つめるとなんだか目があってなんか食いづらいな。
「さあ早く食べたらどうですか」
「わかってるって」
ええい! 俺は決心を決め口に放り込む。
もぐもぐもぐ。ふむふむ噛みごたえはそこそこ。
噛むが噛むほど一点に残り続けるにがみ、そして口のなかに残り続けるべっちょりとした何か。
これはなかなかいける………………
なんてわけあるかあぁぁぁぁぁぁぁーーーーーー。
「ま、不味い」
俺は大急ぎで紙袋の中から水を取り出し口の中に流し込む。
「はあはあ。助かった」
マジで死ぬかと思った。あっ、もう一回は死んでるのか。てそんなことはどうでもいい。なんだこの不味さ。人生においてこんな不味さ一度も体験したことないぞ。さすがデビルバード。
「さすが新太郎ですね。出○さんばりのリアクションですよ」
「お前よく知ってるな」
はあはあ。
まだ不味さがある。俺は残りの水をぐびっと一気に飲み干す。
「私はこのデリシャークの卵をいただきましょう」
紙袋をごそごそ漁っていたマドコが一つの容器を取り出す。
「あっそれは」
俺の静止を聞かず、マドコは容器を開けそれを豪快にすべて口の中に入れる。
これは俺が後で食べようと思っていた、今日買ってきた中で一番お高いもの。
いくらみたいなもので、ぷちぷちしてて、噛むとふわっと甘みが口の中に広がるらしい絶妙の一品。俺の今日の給料が四千デルベ。でこいつは八百デルベもした、いわば高級食材。
「実においしかったですよ」
「お、俺のデリシャーク。しくしく」
「まあまあ。ほらみてください。もう一つありますよ。デビルバードの目」
「俺を殺す気か!!」
まあいい俺にはまだ、ストレートフィッシュという超旨そうな魚が……………………
「ふぁっ!?」
「ほうしらんれふか?」
もぐもぐもぐもぐとマドコの口が動く。
そして口から飛び出ている魚の尻尾が上下にゆれていた。
「俺のストレートフィッシュ!!!」
ううっ、ダメだもう立ち直れない。ガックシ。
「元気らしてふらはい」
「まず飲み飲んでから話せや」
「どうぞデビルバードの目です」
「そんなもの食うかあぁぁぁぁぁぁーー」
いまさらだが俺すごい疲れてるはずなのに、すごい元気ある気がする。デビルバードの目の効果かもな。あなどれないな。デビルバードの目。
しかたないから俺は安物の食料を腹の中に詰め込んだ。確かオウディ草の干物とロノニ牛とかいうやつだ。味は可もなく不可もなくといったところだった。
そして俺がちょうど満腹になった頃だろうか。
「そう言えばまだ話してませんでしたが、もしも私を裏切って逃亡とかしたら容赦なく抹殺しますのでよろしくお願いしますね☆」
「ずいぶん物騒なこと言うな。逃げねえよ。逃げ場なんてねえだろ」
「時々いるんですよね、働いてお金手に入れたら逃げる人が。抹殺とかすると書類の作成がとてもめんどうなのでやめてください」
「大丈夫だよ。それにな、俺は少し嬉しいんだ。あんな宝くじが当たるのを願っていたころと違って、今は誰かのために何かをしている。なんだか嬉しいもんだよ」
えへへと俺ははなすじをこする。
「気持ち悪いですね。きっとギャルゲーのやりすぎで、好感度上げるためのセリフを心の中で選択したとは思うのですが逆効果です。ごめんなさい」
「やってねえよ!! ………………少ししか」
「少しはやってるんですね。気持ち悪いです」
「いいじゃねえか、やってても」
そんなつまらない話を続けて今日は終わった。
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