5 / 6
第4話 人々の思惑
しおりを挟む「いつから気づいてたんだ?」
「顔が同じなのよ?」
「髪型違うし、俺は分からなかったけど。」
「私が生まれる少し前に亡くなったって聞いたことあるの。」
「へー。」
「母がよく言ってたわ、ミナと兄は顔が同じだって。」
「なら、感動の再開だろ?どうして長はお前に告げなかったんだ?」
「分からない。」
「俺だったら嬉しさのあまり言うけどな…。」
違う。言わなかったのは長なりの優しさなのだろう。
死んだ人間は記憶を失うことが多い。
しかし、兄は全て覚えていたはずだ。
その記憶を私に話さなかったのは、酷すぎる死だったから。
私は1度、亡くなっているはずの兄とあったことがあった。
兄だと確信できたのは、自分と瓜二つの顔だったから。
そして、私はそこで死んだのだ。
ハルの持っていた、スナイパー用の銃で…。
死ぬ直前に見えた兄の顔は殺意に満ちていた。
side OSA
俺の目の前で妹が死んでいく。
妹の背後には銃を持っている男が無邪気に笑っていた。
「許さない。」
俺の妹を殺したこの男を、殺す。
でも人間とは不思議な生き物で人生における新たな分岐ができ、一方ではハルが死に、もう一方ではハルは生き続け未来へ繋がるという出来事が起こるらしかった。
その分岐は幾重にも連なり、まるでハルが生き返って存在しているように思えた。
俺はそれらの分岐に存在しているハルを何度も何度も殺してきた。
それは、ほとんど無意識にも近く、ハルを殺すために自分がここにいると錯覚するほどだ。
俺はハルを殺し続けると共に情報収集も手掛けていた。
調べていくうちにとある真実に行き当たった。
ハルの所持していた十字架とスナイパー用の銃は、現在ここの死者をまとめている長の特別な力で変化させたものだったのだ。
長に詰めよった結果、長は暇つぶしに持たせたのだと白状した。
例えどんな答えであっても許せなかったとは思うが、暇つぶしに妹を殺された俺の怒りは測りきれないものだった。
その日から数日かけて、俺はそこにいた死者を殺して回った。
長だけを殺せばすむ話なのだが、長殺しは大罪であるため俺も死ななければならない。
それを回避するため、ここに存在していた死者を皆殺しにする必要があったのだ。
そしてその日から俺は長となり、この死者の地を治めることになった。
暫くすると、俺の妹であるミナがここ、死者の地に現れたことは予想外の出来事だった。
出会えたことの嬉しさのあまり声を掛けようと試みたが、死者の多くは記憶をなくしている。
ミナの死の記憶を呼び起こすことは躊躇われた。
俺は長としてミナを自分の従者として指名することで安全を守ってきた。
それなのに、ミナは自分を殺したハルを庇い自らの命を投げ出した。
いくらミナだからとはいっても掟を守ってもらわなければこの地の秩序がなくなってしまう。
(だからと言っても、どうしてミナが死ぬ理由には値しない。)
目の前で息絶えていく少年を見て言う。
「お前の犯した罪は、消えない。」
何度、俺の手から妹を奪う?
何度、奪えばお前は満足なんだ?
* * * * *
私はこの死者の地で唯一成長しなかった。
私がここに来てから手にかけたハルでさえもう大人になっているというのに。
「私は相変わらず、5歳の姿のまま。」
そう呟くと悲しくなる。
まるで自分だけ、時間が止まった中にいるように思えた。
「仕事を投げ出して何をしているかと思えば…何かあったのか?」
「長、どうして私は成長しないんですか?」
「……思い残したことでもあるんじゃないか?」
なるほど、その思考には行きつかなかった。
「思い残したこと、か…。」
「まあ、焦らなくてもお前には無限に時間がある。ゆっくり解決すればいい。」
「…はい。」
そう言い残すと長は立ち去る。
「…おにいちゃん。」
長には聞き取れないくらいの小さな声で呟いてみる。
私には、生前の記憶が残っていた。
しかし長は、気づいていないだろう。
「逆、だったりして…。」
思い残したことがある人が成長するのではないか。
そうなると、私以外の人は思い残したことがあるということになるが…。
「まあ、いいか。」
そう思い、慌てて長の後を追う。
(少なくとも今、考えるべきじゃない。)
* * * * *
「俺も一緒に死ぬか?」
「え?」
昔のことを思い出していると、いきなりハルが変なことを言い出した。
「だってお前がいないんじゃ、つまらないしな。」
「じゃあ、頼み事してもいい?あの小さいハル君が高校生になって、もし私の妹と接触するようなことになったら、この手紙を届けてほしいの。」
「俺は引き受けるなんて言ってないぞ。」
「その後に死にたいなら死んでいいから!せめてこの手紙を届けてほしいの。」
「……わかったよ。届ければいいんだな。」
「うん、ありがとう。」
0
あなたにおすすめの小説
彼の巨大な体に覆われ、満たされ、貪られた——一晩中
桜井ベアトリクス
恋愛
妹を救出するため、一ヶ月かけて死の山脈を越え、影の沼地を泳ぎ、マンティコアとポーカー勝負までした私、ローズ。
やっと辿り着いた先で見たのは——フェイ王の膝の上で甘える妹の姿。
「助けなんていらないわよ?」
は?
しかも運命の光が私と巨漢戦士マキシマスの間で光って、「お前は俺のものだ」宣言。
「片手だけなら……」そう妥協したのに、ワイン一杯で理性が飛んだ。
彼の心臓の音を聞いた瞬間、私から飛びついて、その夜、彼のベッドで戦士のものになった。
人狼な幼妻は夫が変態で困り果てている
井中かわず
恋愛
古い魔法契約によって強制的に結ばれたマリアとシュヤンの14歳年の離れた夫婦。それでも、シュヤンはマリアを愛していた。
それはもう深く愛していた。
変質的、偏執的、なんとも形容しがたいほどの狂気の愛情を注ぐシュヤン。異常さを感じながらも、なんだかんだでシュヤンが好きなマリア。
これもひとつの夫婦愛の形…なのかもしれない。
全3章、1日1章更新、完結済
※特に物語と言う物語はありません
※オチもありません
※ただひたすら時系列に沿って変態したりイチャイチャしたりする話が続きます。
※主人公の1人(夫)が気持ち悪いです。
短編【シークレットベビー】契約結婚の初夜の後でいきなり離縁されたのでお腹の子はひとりで立派に育てます 〜銀の仮面の侯爵と秘密の愛し子〜
美咲アリス
恋愛
レティシアは義母と妹からのいじめから逃げるために契約結婚をする。結婚相手は醜い傷跡を銀の仮面で隠した侯爵のクラウスだ。「どんなに恐ろしいお方かしら⋯⋯」震えながら初夜をむかえるがクラウスは想像以上に甘い初体験を与えてくれた。「私たち、うまくやっていけるかもしれないわ」小さな希望を持つレティシア。だけどなぜかいきなり離縁をされてしまって⋯⋯?
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
強面夫の裏の顔は妻以外には見せられません!
ましろ
恋愛
「誰がこんなことをしろと言った?」
それは夫のいる騎士団へ差し入れを届けに行った私への彼からの冷たい言葉。
挙げ句の果てに、
「用が済んだなら早く帰れっ!」
と追い返されてしまいました。
そして夜、屋敷に戻って来た夫は───
✻ゆるふわ設定です。
気を付けていますが、誤字脱字などがある為、あとからこっそり修正することがあります。
夫が妹を第二夫人に迎えたので、英雄の妻の座を捨てます。
Nao*
恋愛
夫が英雄の称号を授かり、私は英雄の妻となった。
そして英雄は、何でも一つ願いを叶える事が出来る。
そんな夫が願ったのは、私の妹を第二夫人に迎えると言う信じられないものだった。
これまで夫の為に祈りを捧げて来たと言うのに、私は彼に手酷く裏切られたのだ──。
(1万字以上と少し長いので、短編集とは別にしてあります。)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる