悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

すえつむ はな

文字の大きさ
58 / 404
第二章 ゲーム開始

026 公爵令嬢と攻略対象たち

しおりを挟む
「そうね。わたくしの目から見ても、お兄様はいつものお兄様だった気がするわ」

「わたくしも同意です。それからアルフレッド殿下に関しては、まずお嬢様の態度がいつも以上に積極的だったため、殿下のご様子もいつもと違いましたが……」

「え? わたくし、何か積極的だったかしら?」

 シルヴィアは思わず半眼になり、言葉を切る。

「どうかして?」

「いえ、ご自覚がないのですか? 貴族令嬢としては少々はしたないご様子で、アルフレッド様に愛の言葉を告げておられましたが」

 非難めいたシルヴィアの言い様に、メリーローズは頬を膨らませる。

「えー! あんなの、いっつも思ってることだわ! 『アルたん、可愛い! アルたん、美しい! アルたん究極の受姫うけひめ!』って」

「お嬢様、『美しい』はともかく、殿方に『可愛い』は失礼ですし、ましてや『受姫』など言語道断です。決して声に出して言わないように!」

「ういっす」

 理解してくれたのか、いないのか、ふざけた返事をよこす。
 そんな主人に一瞬眉を寄せた後、シルヴィアは「ふっ」と鼻で笑った。

「あー、馬鹿にしてるー」

「いえ、違います。今日のアルフレッド様とお嬢様のやり取りは、貴族令嬢としては褒められたことではございませんでしたが、今後については、良い方に転んだのではないかと思います」

「…………そうなの?」

 きょとんとするメリーローズを見て、(あ、わかってないな)と思うシルヴィアである。

 今日のランチタイムで、メリーローズはアルフレッドを正面からじっと見つめ「美しい」と告げ、「他の女子に取られたくない」と言った。
 それに対しアルフレッドは大いに照れた後、「自分の視界に入る女性はメリーローズだけだ」と答えた。

 これはもうお互い、愛の告白である。

(これまで、てっきりアルフレッド殿下は、お嬢様のことを大切にはしてくださっていても、義務感によるものだと思っていた。しかし今日のあのご様子は、お嬢様に恋していらっしゃると判断して間違いない)

 メリーローズにとって、これは良い材料だ。

 もしこの先ミュリエルの恋愛対象がアルフレッドへと舵が切られたとしても、そう簡単にことは進まないだろう。

 ゲームの強制力に、充分対抗できる要素である。

(しかし、アルフレッド殿下にとっては……)

 少なくとも今現在、彼がどれだけメリーローズに純情を捧げようと、当のメリーローズは「アルたん、萌え!」「BL萌え!」という有様である。

「アルフレッド殿下。ご愁傷様にございます」

 シルヴィアがそっと漏らした呟きを、メリーローズが耳ざとく聞き取って叫んだ。

「えっ! アルたん、死にそうなの? やだ、うそ!」

「誰がそのような不吉なことを言いましたか。アルフレッド殿下がこれからも苦労されそうだと思い、お見舞いの言葉を言っただけでございます」

「なあーんだ、良かったー」

 胸を撫でおろしたかと思いきや、何やら思案した後、ニヤニヤしている。

「うん、そうね。余命ものとか、いいんじゃない? 読者さんが思わず涙する、切ないラブストーリー。……あー、でも、フィクションとはいえアルたんが死んじゃうのは嫌だな。……そうだ! 闘病ものにして、最後に回復の兆しが見えるのは、どうかしら。愛の力で奇跡を呼び起こすの。デュフ」

 早速ネタにしているようだ。

(たくましいことだ)

 先日までの、何かと悪い予想に引っ張られていたときのことを思い出すと、やはりメリーローズはこのくらい図太い方がいい。
 が、ここはまず、やるべきことをやらねば。

「お嬢様!」

「『アルたん、俺を置いて逝くな』『僕だって……生きたい。やっと……君に想いが通じたというのに……ケホッコホッ』再び咳の発作が起きたアルたんが、苦しげに崩れ落ちる。『アルたん、俺にお前の病気を、分けてくれ』は力の抜けた細い体を抱き上げ、その唇を…………呼んだ? シルヴィア」

「はい、呼びました。アルフレッド殿下とメルヴィン様以外の『攻略対象』たちの様子も確認したいので、彼らの名前と、ミュリエル嬢とのフラグが立つタイミングを教えていただけませんか?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

悪役令嬢の独壇場

あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。 彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。 自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。 正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。 ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。 そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。 あら?これは、何かがおかしいですね。

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

乙女ゲームの悪役令嬢は前世の推しであるパパを幸せにしたい

藤原遊
ファンタジー
悪役令嬢×婚約者の策略ラブコメディ! 「アイリス・ルクレール、その波乱の乙女ゲーム人生――」 社交界の華として名を馳せた公爵令嬢アイリスは、気がつくと自分が“乙女ゲーム”の悪役令嬢に転生していることに気づく。しかし破滅フラグなんて大した問題ではない。なぜなら――彼女には全力で溺愛してくれる最強の味方、「お父様」がいるのだから! 婚約者である王太子レオナードとともに、盗賊団の陰謀や宮廷の策略を華麗に乗り越える一方で、かつて傲慢だと思われた行動が実は周囲を守るためだったことが明らかに……?その冷静さと知恵に、王太子も惹かれていき、次第にアイリスを「婚約者以上の存在」として意識し始める。 しかし、アイリスにはまだ知らない事実が。前世で推しだった“お父様”が、実は娘の危機に備えて影で私兵を動かしていた――なんて話、聞いていませんけど!? さらに、無邪気な辺境伯の従兄弟や王宮の騎士たちが彼女に振り回される日々が続く中、悪役令嬢としての名を返上し、「新たな人生」を掴むための物語が進んでいく。 「悪役令嬢の未来は破滅しかない」そんな言葉を真っ向から覆す、策略と愛の物語。痛快で心温まる新しい悪役令嬢ストーリーをお楽しみください。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

処理中です...