63 / 206
第二章 ゲーム開始
028-2
しおりを挟む
「まあ、つい独り言を言ってしまい、申し訳ございません」
鼻をふくらませるフィルバートに、メリーローズが丁寧に頭を下げた。
今日辺り、ミュリエルが他の生徒会メンバーに紹介される日だと目星をつけ、見学に来ていたのである。
メリーローズがメルヴィンの妹でアルフレッドの婚約者であるということは、フィルバートもさすがに知っているので、あまり邪険にはできないようだが、ブツブツと独り言を言う声が耳障りだったらしい。
「メリー、一応部外者なんだから、静かにしていてくれ」
「はあい、お兄様」
顔見知りが多いので、つい寛いでしまうメリーローズである。
その横で、シルヴィアは緊張MAXな顔をしていた。
……「兄」の伝手で生徒会室に来ているのは、メリーローズだけではない。
この日はメリーローズにとって最大の障害となるかも知れない相手、フェリクス・ロード第三王子も顔を出していたのだ。
(お嬢様はよく、フェリクス様の前でマイペースにふるまえるものだ)
一歩対応を間違えれば、命を狙ってくる危険人物である。
(一見そうは見えないが……)
黒い巻き毛に、大きくて丸い瞳。まだどこか少年のあどけなさを残した、愛らしい顔立ち。長い間療養のために室内で過ごしたせいなのか、肌の色が白く、ビスクドールのようだ。
一方、メリーローズもまた、フェリクスをチラ見する。
(確かに危険人物ではあるのだけれど……)
端正な横顔に、思わず笑みが零れる。
(はーん。やっぱり美少年だわー。アルたんの弟にしておくには、惜しい。惜し過ぎる)
もし二人の血が繋がっていなければ、絶対カップリングを楽しんでいたのに……理性的で常識人な己が憎い……と、シルヴィアが聞いたら顎が外れそうなことを、平気で考えるメリーローズだった。
フェリクスがアルフレッドの弟でさえなければ、妄想の幅が大きく広がるのだ。
なにしろ、フィルバートしかいない「年下攻め枠」が、もう一人増えるのだから!
フィルバートが不良系でありながらも陽の気を帯びているのに対し、フェリクスは毒気を含む陰のキャラだ。しかも美貌だけなら天使級、ただし中身は地獄に引きずり込み兼ねない、悪魔のような危うさを孕んでいる。
(たが、そこがいい!)
むふーん、と妄想に浸りかけたところでシルヴィアのじっとりとした視線を感じ、咳払いして現実に意識を戻した。
フェリクスを再びこっそり観察すると、少し眉間に縦じわが寄っているように見えて、ギョッとする。
(あれって、不機嫌な表情よね)
慌ててミュリエルの方を見ると、まだフィルバートがゴネている。
(……まずい。フィルフィルをミュリエルの敵と認定しちゃったかも! このままだとフィルフィルの命が危ない!)
……すると、フェリクスが立ち上がり、フィルバートの前に立つ。
「お前、女性に対して、さきほどから無礼なことばかり申しているな。不愉快な奴だ」
(おおっとお?)
思ってもいなかった展開が起きた。
メリーローズの認識では、フェリクスは言いたいことを表立って言うことができない分、裏に回って行動するタイプであった。
だからこそ、ミュリエルの敵と判断された者が、暗殺まがいの手口で闇に葬られていたのだ。
(なのに今、ちゃんと正面から正々堂々と、フィルフィルに『不快だ』と言いきった)
メリーローズは少し感動してしまった。
昔から知っている近所の子供の、成長を見るような気分である。
(偉いわ、フェリクス様!)
思わず小さく拍手を送っていると、突然こちらを見たフェリクスと目が合ってしまった。
拍手していたのも、わかってしまったようだ。
(え? ヤバい? どうしよう……)
反応に迷っていると、ふいっと目線を逸らされる。
自分の後ろでシルヴィアが、ホッと息をついている気配があった。
一方フィルバートも、いつもの見知ったメンバーではない年下の王族フェリクスから苦言を呈され、やりすぎたと感じたようだ。
「……まあ、さすがに俺も言い過ぎたかも知れないな。…………あー……すまない」
気まずそうに差し出した右手を、ミュリエルもにっこり微笑み握手を交わす。
こうして多少波乱含みであった生徒会メンバーの顔合わせだったが、最後は和やかに終わった。
鼻をふくらませるフィルバートに、メリーローズが丁寧に頭を下げた。
今日辺り、ミュリエルが他の生徒会メンバーに紹介される日だと目星をつけ、見学に来ていたのである。
メリーローズがメルヴィンの妹でアルフレッドの婚約者であるということは、フィルバートもさすがに知っているので、あまり邪険にはできないようだが、ブツブツと独り言を言う声が耳障りだったらしい。
「メリー、一応部外者なんだから、静かにしていてくれ」
「はあい、お兄様」
顔見知りが多いので、つい寛いでしまうメリーローズである。
その横で、シルヴィアは緊張MAXな顔をしていた。
……「兄」の伝手で生徒会室に来ているのは、メリーローズだけではない。
この日はメリーローズにとって最大の障害となるかも知れない相手、フェリクス・ロード第三王子も顔を出していたのだ。
(お嬢様はよく、フェリクス様の前でマイペースにふるまえるものだ)
一歩対応を間違えれば、命を狙ってくる危険人物である。
(一見そうは見えないが……)
黒い巻き毛に、大きくて丸い瞳。まだどこか少年のあどけなさを残した、愛らしい顔立ち。長い間療養のために室内で過ごしたせいなのか、肌の色が白く、ビスクドールのようだ。
一方、メリーローズもまた、フェリクスをチラ見する。
(確かに危険人物ではあるのだけれど……)
端正な横顔に、思わず笑みが零れる。
(はーん。やっぱり美少年だわー。アルたんの弟にしておくには、惜しい。惜し過ぎる)
もし二人の血が繋がっていなければ、絶対カップリングを楽しんでいたのに……理性的で常識人な己が憎い……と、シルヴィアが聞いたら顎が外れそうなことを、平気で考えるメリーローズだった。
フェリクスがアルフレッドの弟でさえなければ、妄想の幅が大きく広がるのだ。
なにしろ、フィルバートしかいない「年下攻め枠」が、もう一人増えるのだから!
フィルバートが不良系でありながらも陽の気を帯びているのに対し、フェリクスは毒気を含む陰のキャラだ。しかも美貌だけなら天使級、ただし中身は地獄に引きずり込み兼ねない、悪魔のような危うさを孕んでいる。
(たが、そこがいい!)
むふーん、と妄想に浸りかけたところでシルヴィアのじっとりとした視線を感じ、咳払いして現実に意識を戻した。
フェリクスを再びこっそり観察すると、少し眉間に縦じわが寄っているように見えて、ギョッとする。
(あれって、不機嫌な表情よね)
慌ててミュリエルの方を見ると、まだフィルバートがゴネている。
(……まずい。フィルフィルをミュリエルの敵と認定しちゃったかも! このままだとフィルフィルの命が危ない!)
……すると、フェリクスが立ち上がり、フィルバートの前に立つ。
「お前、女性に対して、さきほどから無礼なことばかり申しているな。不愉快な奴だ」
(おおっとお?)
思ってもいなかった展開が起きた。
メリーローズの認識では、フェリクスは言いたいことを表立って言うことができない分、裏に回って行動するタイプであった。
だからこそ、ミュリエルの敵と判断された者が、暗殺まがいの手口で闇に葬られていたのだ。
(なのに今、ちゃんと正面から正々堂々と、フィルフィルに『不快だ』と言いきった)
メリーローズは少し感動してしまった。
昔から知っている近所の子供の、成長を見るような気分である。
(偉いわ、フェリクス様!)
思わず小さく拍手を送っていると、突然こちらを見たフェリクスと目が合ってしまった。
拍手していたのも、わかってしまったようだ。
(え? ヤバい? どうしよう……)
反応に迷っていると、ふいっと目線を逸らされる。
自分の後ろでシルヴィアが、ホッと息をついている気配があった。
一方フィルバートも、いつもの見知ったメンバーではない年下の王族フェリクスから苦言を呈され、やりすぎたと感じたようだ。
「……まあ、さすがに俺も言い過ぎたかも知れないな。…………あー……すまない」
気まずそうに差し出した右手を、ミュリエルもにっこり微笑み握手を交わす。
こうして多少波乱含みであった生徒会メンバーの顔合わせだったが、最後は和やかに終わった。
13
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!
アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。
「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」
王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。
背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。
受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ!
そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた!
すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!?
※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。
※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。
※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
転生の水神様ーー使える魔法は水属性のみだが最強ですーー
芍薬甘草湯
ファンタジー
水道局職員が異世界に転生、水神様の加護を受けて活躍する異世界転生テンプレ的なストーリーです。
42歳のパッとしない水道局職員が死亡したのち水神様から加護を約束される。
下級貴族の三男ネロ=ヴァッサーに転生し12歳の祝福の儀で水神様に再会する。
約束通り祝福をもらったが使えるのは水属性魔法のみ。
それでもネロは水魔法を工夫しながら活躍していく。
一話当たりは短いです。
通勤通学の合間などにどうぞ。
あまり深く考えずに、気楽に読んでいただければ幸いです。
完結しました。
婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―
鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。
泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。
まだ八歳。
それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。
並ぶのは、かわいい雑貨。
そして、かわいい魔法の雑貨。
お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、
冷めないティーカップ、
時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。
静かに広がる評判の裏で、
かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。
ざまぁは控えめ、日常はやさしく。
かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。
---
この文面は
✔ アルファポリス向け文字数
✔ 女子読者に刺さるワード配置
✔ ネタバレしすぎない
✔ ほのぼの感キープ
を全部満たしています。
次は
👉 タグ案
👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字)
どちらにしますか?
【完結】追放された子爵令嬢は実力で這い上がる〜家に帰ってこい?いえ、そんなのお断りです〜
Nekoyama
ファンタジー
魔法が優れた強い者が家督を継ぐ。そんな実力主義の子爵家の養女に入って4年、マリーナは魔法もマナーも勉学も頑張り、貴族令嬢にふさわしい教養を身に付けた。来年に魔法学園への入学をひかえ、期待に胸を膨らませていた矢先、家を追放されてしまう。放り出されたマリーナは怒りを胸に立ち上がり、幸せを掴んでいく。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる