78 / 404
第二章 ゲーム開始
038 公爵令嬢、知らないうちに美化される
しおりを挟む
メルヴィン以外の皆が出て行った後、シルヴィアが医務室にやってきた。
「遅くなりました。メリーローズ様のご様子は?」
「ああ、気がついたよ」
「ありがとう、シルヴィア」
意識が戻っているメリーローズの様子に、シルヴィアが安堵する。
「どうしますか? このまま一晩こちらで休まれますか?」
「お医者様によると貧血だそうなので、そこまでしなくても大丈夫よ。少し休んだらお部屋に戻るわ」
「そうですか。……大したことがなくて、よろしゅうございました」
「しかし、貧血で気を失うなんて初めてだよね。ちゃんと食事は摂っているかい?」
メルヴィンが心配そうに覗き込む。
「ええ、そのつもりだったのだけど……」
「わたくしの管理が行き届かなかったのだと思います。申し訳ございません」
頭を下げるシルヴィアを、メリーローズが止める。
「わたくしのやること為すこと全部に、あなたが責任を負う必要はないわ」
「しかし……」
「そうそう、メリーは先日家に帰ってきたとき、肉ばかり食べていたからね。栄養が偏っていたのかも知れない。そんなことまで自分のせいにしてはいけないよ」
メルヴィンが笑ってシルヴィアを窘めたが、シルヴィアはメリーローズの言葉の裏の意味に気がついていた。
先ほどの一件で、メリーローズも自分に対するフェリクスの気持ちを確信したのだろう、とシルヴィアは思った。
ゆうべは本気にしていなかったものの、先日カフェテリアで突っかかってきたクローディアが、わかりやすく怪我をした――しかも、「誰かに押された」という証言つきで――ことで、危機感を持ったのだろう。
そんな時に、自分の健康不良の原因がメイドの管理不足であるとしてしまったら、シルヴィアがフェリクスに狙われかねない、と危惧したわけだ。
「お兄様、わたくしもう大丈夫ですわ。お兄様も授業に戻ってください」
「本当に、大丈夫か?」
「お兄様、ランズダウン公爵家の跡継ぎとして、勉学を疎かにしてはいけませんわよ」
その言葉を聞き、メルヴィンはふっと息をはいて微笑む。
「その様子なら、大丈夫だね。シルヴィア、悪いけどメリーにつき添っていてくれるかい?」
「かしこまりました」
メルヴィンが出て行った後、頃合いを見てメリーローズとシルヴィアも医務室を辞した。
そのまま寮の部屋へ戻る。
改めて話し合わなけれがいけないことが、山積みだ。
* * *
一方、先にメルヴィンに医務室を追い出されて授業に向かった一同の中で、アルフレッドがフェリクスに目で合図をした。
「皆、ちょっとフェリクスを借りるよ。教室には先に行っていてくれないか」
アルフレッドにそう言われ、ミュリエルたちは頷く。
「では、フェリクス殿下。先に行っていますね」
彼女たちの姿が見えなくなったところで、フェリクスを伴い人気のない階段を昇った。
「遅くなりました。メリーローズ様のご様子は?」
「ああ、気がついたよ」
「ありがとう、シルヴィア」
意識が戻っているメリーローズの様子に、シルヴィアが安堵する。
「どうしますか? このまま一晩こちらで休まれますか?」
「お医者様によると貧血だそうなので、そこまでしなくても大丈夫よ。少し休んだらお部屋に戻るわ」
「そうですか。……大したことがなくて、よろしゅうございました」
「しかし、貧血で気を失うなんて初めてだよね。ちゃんと食事は摂っているかい?」
メルヴィンが心配そうに覗き込む。
「ええ、そのつもりだったのだけど……」
「わたくしの管理が行き届かなかったのだと思います。申し訳ございません」
頭を下げるシルヴィアを、メリーローズが止める。
「わたくしのやること為すこと全部に、あなたが責任を負う必要はないわ」
「しかし……」
「そうそう、メリーは先日家に帰ってきたとき、肉ばかり食べていたからね。栄養が偏っていたのかも知れない。そんなことまで自分のせいにしてはいけないよ」
メルヴィンが笑ってシルヴィアを窘めたが、シルヴィアはメリーローズの言葉の裏の意味に気がついていた。
先ほどの一件で、メリーローズも自分に対するフェリクスの気持ちを確信したのだろう、とシルヴィアは思った。
ゆうべは本気にしていなかったものの、先日カフェテリアで突っかかってきたクローディアが、わかりやすく怪我をした――しかも、「誰かに押された」という証言つきで――ことで、危機感を持ったのだろう。
そんな時に、自分の健康不良の原因がメイドの管理不足であるとしてしまったら、シルヴィアがフェリクスに狙われかねない、と危惧したわけだ。
「お兄様、わたくしもう大丈夫ですわ。お兄様も授業に戻ってください」
「本当に、大丈夫か?」
「お兄様、ランズダウン公爵家の跡継ぎとして、勉学を疎かにしてはいけませんわよ」
その言葉を聞き、メルヴィンはふっと息をはいて微笑む。
「その様子なら、大丈夫だね。シルヴィア、悪いけどメリーにつき添っていてくれるかい?」
「かしこまりました」
メルヴィンが出て行った後、頃合いを見てメリーローズとシルヴィアも医務室を辞した。
そのまま寮の部屋へ戻る。
改めて話し合わなけれがいけないことが、山積みだ。
* * *
一方、先にメルヴィンに医務室を追い出されて授業に向かった一同の中で、アルフレッドがフェリクスに目で合図をした。
「皆、ちょっとフェリクスを借りるよ。教室には先に行っていてくれないか」
アルフレッドにそう言われ、ミュリエルたちは頷く。
「では、フェリクス殿下。先に行っていますね」
彼女たちの姿が見えなくなったところで、フェリクスを伴い人気のない階段を昇った。
1
あなたにおすすめの小説
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~
Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。
走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる