悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

すえつむ はな

文字の大きさ
77 / 404
第二章 ゲーム開始

037-2

しおりを挟む
 * * *

「ほら、起きて。やっぱすぐ帰った方がよかったんじゃない? ゆうべ完徹だったもんね」

 ん……誰?
 目を開けると、やけにザワザワした見覚えがある店内。
 あれ? ここ、どこだっけ。

「やだ、寝ぼけてるの?」

 あれ、ヨッちゃん?
 ここ、イベントの後にいつも寄る、新橋の焼き鳥屋だ。
 そうだ、冬コミが終わって、打ち上げに来てたんだ。

「んー、なんか夢見てた……」

「もう、大丈夫? そろそろ帰ろっか」

「うん」

 会計を済ませて、外に出る。
 アルコールで火照った顔に、ひんやりとした冬の空気が心地いい。

「今年ももう終わりだね」

「明日は職場の大掃除だ。うえー」

「実家、いつ帰る? 一緒に帰ろうよ」

「そだね。新幹線の中で、次の新刊の打合せもできるしね」

「今日コミケ終わったのに、もう次? うちらアルたんのこと、好き過ぎじゃない?」

 たわいもない会話。
 いつもの、ヨッちゃんとの会話。

「ゲーム、やってる?」

「うん、やっぱネタ思いつくのって、プレイ中が多いしね」

「ミュリエルが誰ともくっつかない『失敗ルート』を選びたいのに、なかなか上手くいかないんだよねー」

「わかる。ちょっと気を抜くと、すぐアルたんとくっつこうとするし」

「そういう時は、あいつが出てくると、『やった!』ってならない? いい感じに邪魔してくれて、マジで救世主だよね」

「あの子でしょ? 悪役令嬢のメ

 * * *

「しっかりしてください! メリーローズ様あ!」

(ん……、メリーローズ? 誰のこと?)

「メリーローズ、僕だよ。わかるかい?」

(アルたんの顔が超アップで見える。何ここ、天国?)

「メリー、大丈夫かい?」

(おまけにメルヴィンまで。うほーい! …………)

 メリーローズはここでやっと我に返り、ガバッと起き上がった。

「こら、そんなに勢いよく起きたら、また倒れるぞ」

 メルヴィンの腕が伸びて、体を支えてくれる。

「え? 倒れ……?」

 ゆるゆると記憶が蘇ってきた。

(そうだ、食堂でクローディアが事故に遭ったって聞いて、そして…………)

 フェリクスの顔を思い出す。
 同級生が怪我をしたという知らせを聞いて、なぜか笑みを浮かべていたフェリクスを。

 背筋に悪寒が走り、両腕で自分の体を抱きしめる。

 怖くて顔を上げられないが、多分この場にフェリクスもいるのだろう。
 あのとき一緒にいた皆が、自分の近くにいるのがわかる。

「お熱はないようですね」

 医務室付きの医師が、声を掛けた。

「お顔の色が悪いので、貧血を起こしたのだと思われます」

 そのとき鐘の音が響いた。午後の授業が始まる合図だ。

「よし、午後に授業を取っている者は、教室に向かうんだ。ここは俺だけでいい。勉学を疎かにしてはいけないぞ」

 メルヴィンの言葉に、メンバーたちは三々五々医務室を後にした。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

乙女ゲームの悪役令嬢は前世の推しであるパパを幸せにしたい

藤原遊
ファンタジー
悪役令嬢×婚約者の策略ラブコメディ! 「アイリス・ルクレール、その波乱の乙女ゲーム人生――」 社交界の華として名を馳せた公爵令嬢アイリスは、気がつくと自分が“乙女ゲーム”の悪役令嬢に転生していることに気づく。しかし破滅フラグなんて大した問題ではない。なぜなら――彼女には全力で溺愛してくれる最強の味方、「お父様」がいるのだから! 婚約者である王太子レオナードとともに、盗賊団の陰謀や宮廷の策略を華麗に乗り越える一方で、かつて傲慢だと思われた行動が実は周囲を守るためだったことが明らかに……?その冷静さと知恵に、王太子も惹かれていき、次第にアイリスを「婚約者以上の存在」として意識し始める。 しかし、アイリスにはまだ知らない事実が。前世で推しだった“お父様”が、実は娘の危機に備えて影で私兵を動かしていた――なんて話、聞いていませんけど!? さらに、無邪気な辺境伯の従兄弟や王宮の騎士たちが彼女に振り回される日々が続く中、悪役令嬢としての名を返上し、「新たな人生」を掴むための物語が進んでいく。 「悪役令嬢の未来は破滅しかない」そんな言葉を真っ向から覆す、策略と愛の物語。痛快で心温まる新しい悪役令嬢ストーリーをお楽しみください。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜

みおな
恋愛
 私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。  しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。  冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!  わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?  それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?

何やってんのヒロイン

ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。 自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。 始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・ それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。 そんな中とうとうヒロインが入学する年に。 ・・・え、ヒロイン何してくれてんの? ※本編・番外編完結。小話待ち。

誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。

木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。 彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。 こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。 だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。 そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。 そんな私に、解放される日がやって来た。 それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。 全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。 私は、自由を得たのである。 その自由を謳歌しながら、私は思っていた。 悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。

処理中です...