80 / 404
第二章 ゲーム開始
039 公爵令嬢、第三王子対策を練る
しおりを挟む
部屋に戻ったメリーローズとシルヴィアは、早速フェリクス対策会議を開いた。
「ごめんなさい、ゆうべは頭ごなしに『有りえない』とか言ってしまって」
「そんな、謝る必要はありません」
「だって、ゲームのストーリーを変えてまで、フェリクスがわたくしを好きになるなんて、あるわけないと思ったんですもの」
「そこは同意します」
「なんですと?」
ついつい、いつもの漫才を始めそうになってしまったが、それどころではないと二人とも気がつく。
「そんなことより、フェリクス様対策です。さて、どうしたものか」
「ミュリエルを好き過ぎて、私が攻撃されるのも嫌だけど、わたくしを好きになって、他の誰かを攻撃するなんて、それもすっごく嫌あー!」
ソファに座ったまま、メリーローズは子供のように腕を振り回し、声を張り上げた。
「まあでも、クローディアがひどい怪我を負わなかっただけでも、よかったということかしら」
「それなんですが……」
シルヴィアが、事故が起こった経緯を時系列でみると、不審な点があると指摘する。
「クローディア様が階段から落ちたのは、午前の授業が終わってしばらくしてからのこと。我々は授業終了後すぐ食堂に行き、メニューを注文して料理が揃い、食べようとしたところでソーントン先生が入ってきました」
「ふんふん」
「一報が入ってきたとき、事故の発生時間を聞いたところ、その十分前くらいに階段から落ちた、と」
「そうね」
「事故が起きた時間には、フェリクス様も食堂にいました。どうやってクローディア様を突き落としたのでしょう?」
これを聞くと、メリーローズは腕組みをして考え込んでしまった。
「うーん……」
「例えば、フェリクス様が誰か子飼いの人間を差し向けて、クローディア様を突き落とすよう指示したとします」
「うんうん」
「それならフェリクス様がいない場所で、事故を起こすことは可能です」
「それだ!」
「でも事故を目撃した人たちは、クローディア様の後ろには、誰もいなかったと証言しています。証言が本当なら、この方法も不可能です」
「じゃあ、どうやって事故を起こしたのよ!」
ここでシルヴィアが声を潜めた。
「わたくしは『魔力』を使ったのではないか、と推察しております」
「『魔力』ー?」
メリーローズはソファからガバッと立ち上がる。
「フェリクスは王族よ! 王子様よ! 魔力なんかあるわけないじゃない」
「でも、クローディア様の事故がフェリクス様によるものだとしたら、そうとしか考えられません。あるいは他の誰かの仕業で、フェリクス様は関係ないのか」
それを聞くと、メリーローズも再びソファに座り込んで、唸った。
「いえ……フェリクスは確実に関わっているわ。でなければ、あの笑った口元はあり得ない……」
しばらく悩んだ後、決心したようにシルヴィアの顔を見る。
「わかったわ。今度はちゃんと、あなたの話を聞くことにしましょう」
「やはり魔力に関することは、魔力に詳しい人に聞くべきです」
少し気分を変えるために、シルヴィアがお茶を運んできた。
「それはつまり、ランドルフ先生に聞くってこと?」
「ちょっと、気が進みませんが、致し方ありません」
メリーローズはお茶を口に含む。
先日、家に帰ったときに持ち込んだ、バラのドライフラワーを入れたものだ。
ダマスクローズの芳香が辺りに広がる。
「うーん、いい香り。……で、なんで気が進まないの?」
「授業の内容が、気に食わなかったので」
「ああ、『大精霊教』が正しくて、他の式神を使う魔力持ちは間違っているって内容ね」
「そうです。……自分が信じてきたものを、頭ごなしに否定するやり方には、やはり反発心を覚えます」
怒ってはみせたものの、シルヴィアもバラの香りに癒されたのか、口調が先ほどより柔らかくなっていた。
メリーローズは前世でプレイしたゲーム『レジェンダリー・ローズ』のストーリーを思い出す。あの中で、教師ランドルフ・ソーントンの設定はどんなものだっただろうか……。
「彼は確か、何か事情があってこの学院で教師をしているはずなのよね……。『これを教えたい』とか、『これを研究したい』とか自発的な理由ではなくて、…………うーん、何だったかな」
「いいです。わたくしの個人的な感情は置いておいて、とりあえずソーントン先生に話を聞きにいってみましょう」
「そうね。でも、何て言って聞き出す?」
正直に、フェリクスがクローディアを突き落とした犯人だとか、王族のフェリクスが魔力を使っただとか、そんな風に聞くわけにはいかない。
「…………そう言えば、高位貴族には表れにくいと言われる魔力を、アデレイド様もお持ちですよね」
「そうね。彼女は侯爵家の令嬢だから、ちょっと例外的よね」
「その辺りから、それとなく聞いてみましょうか」
「ごめんなさい、ゆうべは頭ごなしに『有りえない』とか言ってしまって」
「そんな、謝る必要はありません」
「だって、ゲームのストーリーを変えてまで、フェリクスがわたくしを好きになるなんて、あるわけないと思ったんですもの」
「そこは同意します」
「なんですと?」
ついつい、いつもの漫才を始めそうになってしまったが、それどころではないと二人とも気がつく。
「そんなことより、フェリクス様対策です。さて、どうしたものか」
「ミュリエルを好き過ぎて、私が攻撃されるのも嫌だけど、わたくしを好きになって、他の誰かを攻撃するなんて、それもすっごく嫌あー!」
ソファに座ったまま、メリーローズは子供のように腕を振り回し、声を張り上げた。
「まあでも、クローディアがひどい怪我を負わなかっただけでも、よかったということかしら」
「それなんですが……」
シルヴィアが、事故が起こった経緯を時系列でみると、不審な点があると指摘する。
「クローディア様が階段から落ちたのは、午前の授業が終わってしばらくしてからのこと。我々は授業終了後すぐ食堂に行き、メニューを注文して料理が揃い、食べようとしたところでソーントン先生が入ってきました」
「ふんふん」
「一報が入ってきたとき、事故の発生時間を聞いたところ、その十分前くらいに階段から落ちた、と」
「そうね」
「事故が起きた時間には、フェリクス様も食堂にいました。どうやってクローディア様を突き落としたのでしょう?」
これを聞くと、メリーローズは腕組みをして考え込んでしまった。
「うーん……」
「例えば、フェリクス様が誰か子飼いの人間を差し向けて、クローディア様を突き落とすよう指示したとします」
「うんうん」
「それならフェリクス様がいない場所で、事故を起こすことは可能です」
「それだ!」
「でも事故を目撃した人たちは、クローディア様の後ろには、誰もいなかったと証言しています。証言が本当なら、この方法も不可能です」
「じゃあ、どうやって事故を起こしたのよ!」
ここでシルヴィアが声を潜めた。
「わたくしは『魔力』を使ったのではないか、と推察しております」
「『魔力』ー?」
メリーローズはソファからガバッと立ち上がる。
「フェリクスは王族よ! 王子様よ! 魔力なんかあるわけないじゃない」
「でも、クローディア様の事故がフェリクス様によるものだとしたら、そうとしか考えられません。あるいは他の誰かの仕業で、フェリクス様は関係ないのか」
それを聞くと、メリーローズも再びソファに座り込んで、唸った。
「いえ……フェリクスは確実に関わっているわ。でなければ、あの笑った口元はあり得ない……」
しばらく悩んだ後、決心したようにシルヴィアの顔を見る。
「わかったわ。今度はちゃんと、あなたの話を聞くことにしましょう」
「やはり魔力に関することは、魔力に詳しい人に聞くべきです」
少し気分を変えるために、シルヴィアがお茶を運んできた。
「それはつまり、ランドルフ先生に聞くってこと?」
「ちょっと、気が進みませんが、致し方ありません」
メリーローズはお茶を口に含む。
先日、家に帰ったときに持ち込んだ、バラのドライフラワーを入れたものだ。
ダマスクローズの芳香が辺りに広がる。
「うーん、いい香り。……で、なんで気が進まないの?」
「授業の内容が、気に食わなかったので」
「ああ、『大精霊教』が正しくて、他の式神を使う魔力持ちは間違っているって内容ね」
「そうです。……自分が信じてきたものを、頭ごなしに否定するやり方には、やはり反発心を覚えます」
怒ってはみせたものの、シルヴィアもバラの香りに癒されたのか、口調が先ほどより柔らかくなっていた。
メリーローズは前世でプレイしたゲーム『レジェンダリー・ローズ』のストーリーを思い出す。あの中で、教師ランドルフ・ソーントンの設定はどんなものだっただろうか……。
「彼は確か、何か事情があってこの学院で教師をしているはずなのよね……。『これを教えたい』とか、『これを研究したい』とか自発的な理由ではなくて、…………うーん、何だったかな」
「いいです。わたくしの個人的な感情は置いておいて、とりあえずソーントン先生に話を聞きにいってみましょう」
「そうね。でも、何て言って聞き出す?」
正直に、フェリクスがクローディアを突き落とした犯人だとか、王族のフェリクスが魔力を使っただとか、そんな風に聞くわけにはいかない。
「…………そう言えば、高位貴族には表れにくいと言われる魔力を、アデレイド様もお持ちですよね」
「そうね。彼女は侯爵家の令嬢だから、ちょっと例外的よね」
「その辺りから、それとなく聞いてみましょうか」
11
あなたにおすすめの小説
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
悪役令嬢は推しカプのために婚約破棄されたい 〜好感度モニターが壊れて全人類から溺愛されてます〜
りい
恋愛
悪役令嬢は推しカプのために婚約破棄されたい 〜好感度モニターが壊れて全人類から溺愛されてます〜
「もっとゲームがしたかった……!」 そんな切実な未練を残し、山積みの積ゲーと重量級の設定資料集に埋もれて物理的に「尊死」した限界オタクの私。
目が覚めると、そこは大好きな乙女ゲーム『幻想のルミナス』の世界。しかも、推しカプ(王子×聖女)を邪魔して最後には無残に断罪される悪役令嬢・リリアーナに転生していた!
普通なら破滅フラグ回避に走るところだけど、オタクの私は一味違う。 「断罪イベントを特等席(悪役席)で見られるなんて……これって最高のご褒美じゃない!?」
完璧な婚約破棄を勝ち取り、二人の愛の軌跡を「生」で拝むため、私は悪役として嫌われる努力を開始する。さらに、転生特典(?)で手に入れた**『好感度モニター』**を駆使して、二人の愛の数値をニヤニヤ見守るはずだった。
――なのに、視界に映る現実はバグだらけ。
「嫌われようと冷たくしたのに、王子の好感度が**【100(カンスト)】を超えてエラーを吐き出してるんですけど!? というか、肝心のヒロインまで私を姉様と慕って【200(唯一無二)】**ってどういうこと!?」
推しカプの二人は私を見るばかりで、お互いへの好感度は一向に上がらない。 果たしてリリアーナは、重すぎる全方位からの溺愛をはねのけ、理想の「婚約破棄」に辿り着けるのか?
勘違いとバグが加速する、異色の溺愛(?)ファンタジー開幕!
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
悪役令嬢は推し活中〜殿下。貴方には興味がございませんのでご自由に〜
みおな
恋愛
公爵家令嬢のルーナ・フィオレンサは、輝く銀色の髪に、夜空に浮かぶ月のような金色を帯びた銀の瞳をした美しい少女だ。
当然のことながら王族との婚約が打診されるが、ルーナは首を縦に振らない。
どうやら彼女には、別に想い人がいるようで・・・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる