悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

すえつむ はな

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第二章 ゲーム開始

040 公爵令嬢、休日の予定を立てる

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 翌日はちょうど午後に「魔法学」の授業がある日だった。
 授業の終わり時間を見計らって、メリーローズが教室にやってくる。

「あーっ! メリーローズ様ぁ!」

 授業中、睡眠をとって絶好調になったアデレイドが、メリーローズを見つけて元気に手を振った。
 その声に気がついたミュリエルも、にっこり笑って会釈してくる。
 ミュリエルの隣のヘザーも、笑顔こそ作らないが小さく頭を下げた。

「今日はどうしたんですかー?」

 嬉しそうに聞いてくるアデレイドに、「あなたをダシに使うの」とは言えず、曖昧に笑う。

「先日、ランズダウン邸の庭に魔物が出たという騒ぎがあった件で、ソーントン先生へ質問しに来られたのです」

 嘘も方便とばかり、堂々とシルヴィアが答えた。

「ええっ! 魔物が出たんですかあ?」

 アデレイドの表情が恐怖で凍りつく。
 一緒にいたミュリエルも恐ろしげに眉を顰めたが、ヘザーは相変わらず無表情だった。

「いえ、魔物じゃないかって騒ぎになっただけですの。後で司教様に見ていただいたし、魔除けの結界もはっていただいたので、もう大丈夫なのですが……」

 言いながらメリーローズは(アデレイドをだしにしなくても、このセンでいいのでは?)と考えた。

「メリーローズ様」

 そこにミュリエルが真剣な眼差しで、声をかけてくる。

「え? な、何かしら、ミュリエルさん」

(まさか、一緒に来るとか言い出さないわよね?)

 一瞬不安になったが、ミュリエルは全く違う考えを持っていたようだった。

「もし魔物がお家に出たとしたら、もしかしたら『大精霊教』への信心が足りないのかも知れません。今度、私と一緒に王都の大きな聖堂にお参りに行きましょう!」

(うん、わたくしには全くない発想だわ)

「そうね、いいかも知れませんわ。でも、ミュリエルさんも何か、不安なことがおありですの?」

「はい。実は……」

 先日はアデレイドの邪魔が入ったために、聞くことができなかった「ミュリエルがこの学院に入ることになったきっかけ」を、図らずも本人から教えてもらう形になった。


「あの、私がこの学院に入ることになったのは、私が奇跡を起こした、と地元の司教様に言われて、その話がその、恐れ多くも大司教様や宰相様のお耳に入ったそうで……」

「ええー! すごいですねえ!」

 素直にアデレイドが感嘆の声をあげる。

(わたくしが直接地元に行って、評判を聞きまわったことまでは知らないようだな)

 こっそりシルヴィアが胸をなでおろした。

「本当に私は、そんな大層な者ではないのですが、……それで、大司教様や宰相様から奇跡の力を期待されて、この学院に入るよう仰せつかったのです」

「充分、すごいことだと思います。それで、どんな奇跡を期待されていらっしゃるのでしょうか?」

 しめしめと、シルヴィアが話を進める。

「はい。宰相様からのお手紙によると、王宮の中に限られた方しか入れない『禁断の温室』があって、そこに奇跡を起こすバラがあるそうなんです」

「『禁断の温室』……。聞いたことはありますわ。わたくしも入ったことはありませんが、その存在は存じています」

 メリーローズの言葉を聞いて、意外にもヘザーが反応した。

「ほほう。さすがは第二王子殿下のご婚約者。我々庶民はそんな話、聞いたこともありませんね」

「ふふん!」

 なぜかアデレイドが偉そうに笑った。

「いえ、わたくしも温室のことしか知りませんわ。『奇跡を起こすバラ』の話は初耳です」

 そう言いつつ前世の記憶をたどる。

(『奇跡のバラ』。……そういえば、ゲームのタイトル『レジェンダリー・ローズ』の名前の由来だわ。忘れてた。てへ)

 ミュリエルは悲しそうに俯き、話を続ける。

「大司教様や宰相様は、私の力で、その『奇跡を起こすバラ』を咲かせて欲しいと望まれているようなのです。でも、最近そのバラの花の蕾の成長が止まってしまったとかで……」

「奇跡って、何を起こすつもりなんでしょうねえ? その偉い方々は」

 ヘザーが興味津々といった様子で、ミュリエルにズズッと迫る。

「そこまでは聞いていないの。何か、ローデイル王国にとって、とても大事なことらしいのだけど……」

(……そう、そうだった。奇跡のバラで、何か大事なことを願うんだった。…………何だったかなあ)

 もう何度もプレイしたはずのゲームの、根幹に関わることであるはずなのに、何も思い出せない。

(所詮、腐った女わたしにとって興味があったのは、アルたんとそのダーリンズの恋模様だけだからなあ)

 断っておくが、ゲームの中にアル受BLルートは存在しない。
 まったく存在しない。

「それでその、『早くどうにかできないのか』と、学院を通してお叱りを受けていまして……」

「まあ、それは肩身の狭いことでしょうね」

「そうなんです……」

 ミュリエルと、彼女に同情するメリーローズの会話を聞きながら、シルヴィアは鼻白んだ。

(こんな小娘に国家の問題を押しつけていないで、大層な肩書をお持ちの方々が、もっと頑張ればよろしいのに)

「ああ、それで一緒にお参りに行こうと仰ったのね」

「はい、そうなんです」

「じゃあー、こんどのお休みの日、皆で行きましょうよ!」

 アデレイドがピクニックにでも行くように提案してくる。

「アデレイド様、ミュリエル嬢にとっては遊びではありませんから……」

 慌ててシルヴィアが止めたが、当のミュリエルの表情が明るくなった。

「いいアイデアですね! 皆さまでご一緒しませんか!」

「大精霊様にお祈りを捧げるのは、皆さまにとっても悪いことではございません。聖堂でお祈りをすると、私はいつも心が洗われるんです」

「いいんじゃないですか?」

 ヘザーも賛成する。

 というわけで、今度の日曜日に大聖堂へお参りに行くことが決定し、メリーローズとシルヴィアは皆と別れてランドルフ・ソーントン教師の部屋に向かった。
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