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第二章 ゲーム開始
045 公爵令嬢のライバル令嬢、豹変する
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医務室に向かう間、ミルドレッドはぶつぶつと独り言を呟いていた。
「うーん、わたくしがミルドレッド・ブロムリーで、後ろにいるのがクローディア・パクストンだったかしら?……見事にモブね、ウケる」
――モブって何? ウケるって何? 意味がわからない。わからなくて、怖い。
「それにしても『レジェロ』か。あー、懐かしい。青春だったなあ、今思えば」
――ニヤニヤしながら独り言を言っている。怖い、とても怖い。
クローディアは泣きたい気分で、ミルドレッドの後をついていった。
医務室に着くと、ミルドレッドは急に泣きだして、更にクローディアを混乱させる。
「……申し訳……ございません……。わたくし、階段から……落ちてしまいまして……」
泣きべそをかきながら小声で医師に訴える姿は、いつものミルドレッドだ。
「大変でしたね。腕や足の打撲以外に、頭を打ったりはしませんでしたか?」
「大丈夫……です……しくしく」
わざとらしい。すごくわざとらしい。
しかし医師はまんまと騙されているようだ。
「頭を打っていないのは何よりですが、寮まで自分で帰れますか?」
いや、ここまで普通に歩いてきたのだから大丈夫だと、クローディアが言おうとしたその時だった。
診察室と寝台が並ぶ場所の間を仕切るカーテンが、シャッと音を立てて開いた。
「誰か、怪我をしたんですか? よければ僕が寮まで送りますよ」
顔を出したのはアルフレッドである。
第二王子という高貴な身分ではあるが、生徒会の副会長として、学生たちに何か問題が起きたときには、何かと対応しているのである。
今も授業中に具合が悪くなったクラスメイトを、この医務室まで付き添ってきていたのだった。
「まあ、アルフレッド様……」
容姿は端麗、紳士な態度、成績も優秀、そのうえ性格も穏やかで、彼を慕う学生は男女を問わず大勢いる。
クローディアにとっても、アルフレッドは憧れの上級生だ。
メリーローズという婚約者さえいなければ、猛烈にアピールしたい相手でもある。
(まったく、なんであんな四角四面な女が、この麗しのアルフレッド様の婚約者なのよ! 絶対わたくしの方が相応しいのに!)
クローディアはミルドレッド同様、メリーローズのことも見下していた。
そんな彼女の心の声が、アルフレッドに届かなかったのは幸いである。
科を作り、媚た声で「大丈夫ですわ」と、言いかけた瞬間、ミルドレッドの声が響き渡った。
「い・たあーい! ……足が……痛いです。……しくしく……歩けないかも……知れないです……」
ミルドレッドが、突然悲鳴のような大声を上げた後、小声で泣き出したのである。
最初の「い・たあーい!」の余りの大きさに、アルフレッドはギョッとしたものの、それくらい痛かったのだろうと逆に心配になった。
「これは、歩けなさそうですね。僕が寮の玄関まで送りましょう。女子寮だから中までは入れませんが、ここからずっと歩いてもらうよりはいいと思います」
「あ、ありがとう……ございます……しくしく……しくしく……」
クローディアは唖然とした。
ここに来るまで、不気味な独り言を言いながら、何の苦も無く一人で歩いてきたのを見ているのである。
(な、何……、この女……?)
更におんぶできるよう、アルフレッドがしゃがんで背中を向けると、また変なことを言いだした。
「あのお……できれば……『お姫様だっこ』を……していただきたいの……ですけど……」
「『お姫様だっこ』? 何だい、それは?」
アルフレッドがキョトンとすると、慌てて手を振る。
「あ、……なんでも……ござい……ません……。おんぶを……お願い……いたします……」
そしていそいそとアルフレッドの背中によじ登ると、クローディアに向かってニヤリと笑った。
「うーん、わたくしがミルドレッド・ブロムリーで、後ろにいるのがクローディア・パクストンだったかしら?……見事にモブね、ウケる」
――モブって何? ウケるって何? 意味がわからない。わからなくて、怖い。
「それにしても『レジェロ』か。あー、懐かしい。青春だったなあ、今思えば」
――ニヤニヤしながら独り言を言っている。怖い、とても怖い。
クローディアは泣きたい気分で、ミルドレッドの後をついていった。
医務室に着くと、ミルドレッドは急に泣きだして、更にクローディアを混乱させる。
「……申し訳……ございません……。わたくし、階段から……落ちてしまいまして……」
泣きべそをかきながら小声で医師に訴える姿は、いつものミルドレッドだ。
「大変でしたね。腕や足の打撲以外に、頭を打ったりはしませんでしたか?」
「大丈夫……です……しくしく」
わざとらしい。すごくわざとらしい。
しかし医師はまんまと騙されているようだ。
「頭を打っていないのは何よりですが、寮まで自分で帰れますか?」
いや、ここまで普通に歩いてきたのだから大丈夫だと、クローディアが言おうとしたその時だった。
診察室と寝台が並ぶ場所の間を仕切るカーテンが、シャッと音を立てて開いた。
「誰か、怪我をしたんですか? よければ僕が寮まで送りますよ」
顔を出したのはアルフレッドである。
第二王子という高貴な身分ではあるが、生徒会の副会長として、学生たちに何か問題が起きたときには、何かと対応しているのである。
今も授業中に具合が悪くなったクラスメイトを、この医務室まで付き添ってきていたのだった。
「まあ、アルフレッド様……」
容姿は端麗、紳士な態度、成績も優秀、そのうえ性格も穏やかで、彼を慕う学生は男女を問わず大勢いる。
クローディアにとっても、アルフレッドは憧れの上級生だ。
メリーローズという婚約者さえいなければ、猛烈にアピールしたい相手でもある。
(まったく、なんであんな四角四面な女が、この麗しのアルフレッド様の婚約者なのよ! 絶対わたくしの方が相応しいのに!)
クローディアはミルドレッド同様、メリーローズのことも見下していた。
そんな彼女の心の声が、アルフレッドに届かなかったのは幸いである。
科を作り、媚た声で「大丈夫ですわ」と、言いかけた瞬間、ミルドレッドの声が響き渡った。
「い・たあーい! ……足が……痛いです。……しくしく……歩けないかも……知れないです……」
ミルドレッドが、突然悲鳴のような大声を上げた後、小声で泣き出したのである。
最初の「い・たあーい!」の余りの大きさに、アルフレッドはギョッとしたものの、それくらい痛かったのだろうと逆に心配になった。
「これは、歩けなさそうですね。僕が寮の玄関まで送りましょう。女子寮だから中までは入れませんが、ここからずっと歩いてもらうよりはいいと思います」
「あ、ありがとう……ございます……しくしく……しくしく……」
クローディアは唖然とした。
ここに来るまで、不気味な独り言を言いながら、何の苦も無く一人で歩いてきたのを見ているのである。
(な、何……、この女……?)
更におんぶできるよう、アルフレッドがしゃがんで背中を向けると、また変なことを言いだした。
「あのお……できれば……『お姫様だっこ』を……していただきたいの……ですけど……」
「『お姫様だっこ』? 何だい、それは?」
アルフレッドがキョトンとすると、慌てて手を振る。
「あ、……なんでも……ござい……ません……。おんぶを……お願い……いたします……」
そしていそいそとアルフレッドの背中によじ登ると、クローディアに向かってニヤリと笑った。
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