98 / 206
第二章 ゲーム開始
047-3
しおりを挟む
そのうちにアデレイドがツツ……、とアーネストに近づく。
「あのぉ、気になっていたんですけど、ヘザーさんは伯爵令嬢ですわよ」
「…………え!」
アーネストは慌てたようにヘザーに質問した。
「お前……あ、いや、君は伯爵家のご令嬢なのか?」
「ええまあ。身分的には」
アーネストは顔を忙しく赤くしたり青くしたりと、自慢の美しい顔を変化させた挙げ句、最後に逆切れした。
「ヘザー・アシュビー伯爵令嬢におかれましては、先ほどから無礼な態度の数々、申し訳ございませんでした。……しかしだな、こういうことがあるから、やはり身分に応じた服装というのは必要なんだ!」
「……アーネスト様は、一体どうなさったのでしょうか?」
本気で何を言われているのかわからない、といった様子のヘザーに、メリーローズが口をはさんだ。
「アーネスト様は、ヘザーさんが自分より身分が下だと思い込んでいたのに、実は実家の爵位が上だと気がついて慌てているのですわ」
「……その……口の利き方も悪かった。本当に申し訳ございません」
苦虫を嚙みつぶしただような表情のアーネストに、ヘザーは手をひらひらさせ、こともなげに言う。
「ああ、全然気にしていませんから」
「君が気にしていなくても、僕が気にするんだ!」
なんとも嚙み合わない二人である。
苦笑したメリーローズはまたアーネストに助言した。
「アーネスト様。そんなに仰るなら、ヘザーさんにドレスをプレゼントしたらよろしいのではないかしら?」
「わあ、素敵です!」
アデレイドが無責任に同意する。
「いえ、結構です」
にべもないヘザーに、メリーローズが食らいついた。
「この先、何かとドレスを着用しなければいけない場面もございますわ。それにアーネスト様だって、このまま何も謝罪できなければ、お気が済まないことでしょう。むしろアーネスト様を助けると思って、受け取ってはいかがかしら?」
「ほほう、人助けですか」
(それはちょっと違うんだけど……)
メリーローズは苦笑したが、アーネストは少しホッとした表情で改めてヘザーに申し込む。
「そうですね。……僕の気持ちが済むように、あなたの衣装を仕立てさせてください」
「まあ、そこまで仰るなら……」
渋々といった口調のヘザーにアデレイドが聞いた。
「どうしてそんなに、嫌そうなんですか? わたくしはドレスを作るとき、いっつも楽しみですよお」
「…………派手な服は、似合いませんので」
(おや、まるで興味がないというわけでもないのだろうか?)
ヘザーの返事を聞いて、シルヴィアは意外に思った。
「派手にしたくないのなら、色味を抑えるといいと思いますわ」
メリーローズが助言する。
「例えば、茶色の光沢があるグロリア地なら、赤い髪に馴染みやすいでしょう。そしてふくらんだ袖のデザインがいいわ。これはマストね!」
「ほほう、袖をふくらませて、船のマストにくくりつける……」
「違います!」
ヘザーの天然ボケに、秒で突っ込むメリーローズだ。
「そういえば、最近流行り始めているんですよお、パフスリーブ。さすがメリーローズ様、流行に敏感ですわあ」
おしゃれに敏感な(でもそのセンスはどこかズレているらしい)アデレイドが感心した。
「(へ、へえー、そうだったんだ)勿論ですわ。ほほほ……」
メリーローズの脳内に浮かんでいたのは、この世界でのファッションの流行ではなく、前世の少女時代の愛読書である。
(せっかくの赤毛に三つ編み。ヘザーには茶色いふくらんだ袖のドレスを是非着てもらわなくちゃ!)
心の中でこっそり、ヘザーに「眼鏡を掛けたアン」というあだ名をつけているメリーローズであった。
「あのぉ、気になっていたんですけど、ヘザーさんは伯爵令嬢ですわよ」
「…………え!」
アーネストは慌てたようにヘザーに質問した。
「お前……あ、いや、君は伯爵家のご令嬢なのか?」
「ええまあ。身分的には」
アーネストは顔を忙しく赤くしたり青くしたりと、自慢の美しい顔を変化させた挙げ句、最後に逆切れした。
「ヘザー・アシュビー伯爵令嬢におかれましては、先ほどから無礼な態度の数々、申し訳ございませんでした。……しかしだな、こういうことがあるから、やはり身分に応じた服装というのは必要なんだ!」
「……アーネスト様は、一体どうなさったのでしょうか?」
本気で何を言われているのかわからない、といった様子のヘザーに、メリーローズが口をはさんだ。
「アーネスト様は、ヘザーさんが自分より身分が下だと思い込んでいたのに、実は実家の爵位が上だと気がついて慌てているのですわ」
「……その……口の利き方も悪かった。本当に申し訳ございません」
苦虫を嚙みつぶしただような表情のアーネストに、ヘザーは手をひらひらさせ、こともなげに言う。
「ああ、全然気にしていませんから」
「君が気にしていなくても、僕が気にするんだ!」
なんとも嚙み合わない二人である。
苦笑したメリーローズはまたアーネストに助言した。
「アーネスト様。そんなに仰るなら、ヘザーさんにドレスをプレゼントしたらよろしいのではないかしら?」
「わあ、素敵です!」
アデレイドが無責任に同意する。
「いえ、結構です」
にべもないヘザーに、メリーローズが食らいついた。
「この先、何かとドレスを着用しなければいけない場面もございますわ。それにアーネスト様だって、このまま何も謝罪できなければ、お気が済まないことでしょう。むしろアーネスト様を助けると思って、受け取ってはいかがかしら?」
「ほほう、人助けですか」
(それはちょっと違うんだけど……)
メリーローズは苦笑したが、アーネストは少しホッとした表情で改めてヘザーに申し込む。
「そうですね。……僕の気持ちが済むように、あなたの衣装を仕立てさせてください」
「まあ、そこまで仰るなら……」
渋々といった口調のヘザーにアデレイドが聞いた。
「どうしてそんなに、嫌そうなんですか? わたくしはドレスを作るとき、いっつも楽しみですよお」
「…………派手な服は、似合いませんので」
(おや、まるで興味がないというわけでもないのだろうか?)
ヘザーの返事を聞いて、シルヴィアは意外に思った。
「派手にしたくないのなら、色味を抑えるといいと思いますわ」
メリーローズが助言する。
「例えば、茶色の光沢があるグロリア地なら、赤い髪に馴染みやすいでしょう。そしてふくらんだ袖のデザインがいいわ。これはマストね!」
「ほほう、袖をふくらませて、船のマストにくくりつける……」
「違います!」
ヘザーの天然ボケに、秒で突っ込むメリーローズだ。
「そういえば、最近流行り始めているんですよお、パフスリーブ。さすがメリーローズ様、流行に敏感ですわあ」
おしゃれに敏感な(でもそのセンスはどこかズレているらしい)アデレイドが感心した。
「(へ、へえー、そうだったんだ)勿論ですわ。ほほほ……」
メリーローズの脳内に浮かんでいたのは、この世界でのファッションの流行ではなく、前世の少女時代の愛読書である。
(せっかくの赤毛に三つ編み。ヘザーには茶色いふくらんだ袖のドレスを是非着てもらわなくちゃ!)
心の中でこっそり、ヘザーに「眼鏡を掛けたアン」というあだ名をつけているメリーローズであった。
1
あなたにおすすめの小説
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
公爵令嬢は、どう考えても悪役の器じゃないようです。
三歩ミチ
恋愛
*本編は完結しました*
公爵令嬢のキャサリンは、婚約者であるベイル王子から、婚約破棄を言い渡された。その瞬間、「この世界はゲームだ」という認識が流れ込んでくる。そして私は「悪役」らしい。ところがどう考えても悪役らしいことはしていないし、そんなことができる器じゃない。
どうやら破滅は回避したし、ゲームのストーリーも終わっちゃったようだから、あとはまわりのみんなを幸せにしたい!……そこへ攻略対象達や、不遇なヒロインも絡んでくる始末。博愛主義の「悪役令嬢」が奮闘します。
※小説家になろう様で連載しています。バックアップを兼ねて、こちらでも投稿しています。
※以前打ち切ったものを、初めから改稿し、完結させました。73以降、展開が大きく変わっています。
アホ王子が王宮の中心で婚約破棄を叫ぶ! ~もう取り消しできませんよ?断罪させて頂きます!!
アキヨシ
ファンタジー
貴族学院の卒業パーティが開かれた王宮の大広間に、今、第二王子の大声が響いた。
「マリアージェ・レネ=リズボーン! 性悪なおまえとの婚約をこの場で破棄する!」
王子の傍らには小動物系の可愛らしい男爵令嬢が纏わりついていた。……なんてテンプレ。
背後に控える愚か者どもと合わせて『四馬鹿次男ズwithビッチ』が、意気揚々と筆頭公爵家令嬢たるわたしを断罪するという。
受け立ってやろうじゃない。すべては予定調和の茶番劇。断罪返しだ!
そしてこの舞台裏では、王位簒奪を企てた派閥の粛清の嵐が吹き荒れていた!
すべての真相を知ったと思ったら……えっ、お兄様、なんでそんなに近いかな!?
※設定はゆるいです。暖かい目でお読みください。
※主人公の心の声は罵詈雑言、口が悪いです。気分を害した方は申し訳ありませんがブラウザバックで。
※小説家になろう・カクヨム様にも投稿しています。
断罪イベント返しなんぞされてたまるか。私は普通に生きたいんだ邪魔するな!!
柊
ファンタジー
「ミレイユ・ギルマン!」
ミレヴン国立宮廷学校卒業記念の夜会にて、突如叫んだのは第一王子であるセルジオ・ライナルディ。
「お前のような性悪な女を王妃には出来ない! よって今日ここで私は公爵令嬢ミレイユ・ギルマンとの婚約を破棄し、男爵令嬢アンナ・ラブレと婚姻する!!」
そう宣言されたミレイユ・ギルマンは冷静に「さようでございますか。ですが、『性悪な』というのはどういうことでしょうか?」と返す。それに反論するセルジオ。彼に肩を抱かれている渦中の男爵令嬢アンナ・ラブレは思った。
(やっべえ。これ前世の投稿サイトで何万回も見た展開だ!)と。
※pixiv、カクヨム、小説家になろうにも同じものを投稿しています。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
悪役令嬢を陥れようとして失敗したヒロインのその後
柚木崎 史乃
ファンタジー
女伯グリゼルダはもう不惑の歳だが、過去に起こしたスキャンダルが原因で異性から敬遠され未だに独身だった。
二十二年前、グリゼルダは恋仲になった王太子と結託して彼の婚約者である公爵令嬢を陥れようとした。
けれど、返り討ちに遭ってしまい、結局恋人である王太子とも破局してしまったのだ。
ある時、グリゼルダは王都で開かれた仮面舞踏会に参加する。そこで、トラヴィスという年下の青年と知り合ったグリゼルダは彼と恋仲になった。そして、どんどん彼に夢中になっていく。
だが、ある日。トラヴィスは、突然グリゼルダの前から姿を消してしまう。グリゼルダはショックのあまり倒れてしまい、気づいた時には病院のベッドの上にいた。
グリゼルダは、心配そうに自分の顔を覗き込む執事にトラヴィスと連絡が取れなくなってしまったことを伝える。すると、執事は首を傾げた。
そして、困惑した様子でグリゼルダに尋ねたのだ。「トラヴィスって、一体誰ですか? そんな方、この世に存在しませんよね?」と──。
乙女ゲームの破滅フラグしかない悪役令嬢に転生してしまった俺
島風
ファンタジー
ブラック企業で過労死した男がいた。しかし、彼は転生し、ある貴族の侯爵令嬢として再び生を受けた。そして、成長につれて前世の記憶を取り戻した。俺様、クリスティーナ・ケーニスマルク公爵令嬢七歳。あれ? 何かおかしくないか? そう、俺様は性別がおかしかった。そして、王子様の婚約者に決まり、ここが前世ではやっていた乙女ゲームの世界であることがわかった。
自分が悪役令嬢になってしまっている。主人公がハッピーエンドになると死刑になり、バットエンドになるとやっぱり死刑・・・・・・あれ、そもそも俺様、男と結婚するの嫌なんだけど!!
破滅エンド以前に、結婚したくない!!!
これは素晴らしい男性と結ばれるの事をひたすら回避しようとして・・・ドツボにハマっていく物語である。
私はざまぁされた悪役令嬢。……ってなんだか違う!
杵島 灯
恋愛
王子様から「お前と婚約破棄する!」と言われちゃいました。
彼の隣には幼馴染がちゃっかりおさまっています。
さあ、私どうしよう?
とにかく処刑を避けるためにとっさの行動に出たら、なんか変なことになっちゃった……。
小説家になろう、カクヨムにも投稿中。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる