120 / 404
第二章 ゲーム開始
057-2
しおりを挟む
「他の人がBLを書いたくらいで、目くじら立てるつもりはないわ。むしろ歓迎よ」
「じゃあ……」
喜んだキンバリーの顔に、メリーローズは人差し指を突き立てた。
「ただし、この内容は納得いかないわ。なんでアルたんが攻なのよ!」
「え?」
指を引っ込めると、再び本に目を落とす。
「これ、この主人公の設定、丸々私の小説のアルバートじゃないの! それが名前だけ変えたところで攻なんかにされたら、許せないわ!」
「……そこ?」
これにはシルヴィアもキンバリーも目が点になる。
「そこは重要よ! シルヴィア、あなたならわかってくれると思っていたのに、がっかりだわ! 受か攻かは、重要な問題よ、いえ、最重要課題よ! ありえない、ありえないわ! 攻のアルたんなんてー!」
興奮したメリーローズは、その本を引き裂きかねない勢いで怒り出した。
「待って! 本を壊さないで! それにもうその作家とも契約は済んでいるから、今更発行を止めるわけにはいかないのよ!」
前世で社会人経験のあるメリーローズは「契約」という言葉の重さを知っている。
既に契約済みなら、簡単には覆せないことも。
「それなら、それなら、わたくし……」
低い、地の底から聞こえるような低ーい声に、キンバリーはゴクリと喉を鳴らした。
メリーローズとは小説一巻ごとの契約なので、「次からモリスン書房では本を出さない」と言われてしまえばそれまでである。
二兎を追う者は一兎をも得ずというが、欲張ってBL小説の新シリーズを出したばかりに、今や看板作家となったメリーローズを失うことになるかも知れないとは、とんだ大失敗だ。
後悔してもしきれないし、モリスン兄妹にもなんと言えばいいのか……。
その思いは、メリーローズの言葉にかき消された。
「こうなったら、わたくし、もっともっとアルたん受けの本を、書いて書いて書きまくりますわ!」
「……え? そっち?」
再びキンバリーとシルヴィアは目が点になる。
「そっちって、どういう意味よ」
「だからその、他の出版社に移籍する……とか?」
恐る恐るキンバリーが言うと、メリーローズは呆れた。
「こんな危ない本、どこの出版社に持っていくのよ。下手に持ち込んだら、お縄になるじゃない」
「ええ、確かに」
「だからわたくしは、アル攻本の存在を皆が忘れてしまうくらい、アルたん受本をたくさん書きまくる所存よ!」
キンバリーは安堵の息を吐くと、笑顔で揉み手をした。
「毎度ありー! 先生、よろしくお願いしゃっす!」
「じゃあ……」
喜んだキンバリーの顔に、メリーローズは人差し指を突き立てた。
「ただし、この内容は納得いかないわ。なんでアルたんが攻なのよ!」
「え?」
指を引っ込めると、再び本に目を落とす。
「これ、この主人公の設定、丸々私の小説のアルバートじゃないの! それが名前だけ変えたところで攻なんかにされたら、許せないわ!」
「……そこ?」
これにはシルヴィアもキンバリーも目が点になる。
「そこは重要よ! シルヴィア、あなたならわかってくれると思っていたのに、がっかりだわ! 受か攻かは、重要な問題よ、いえ、最重要課題よ! ありえない、ありえないわ! 攻のアルたんなんてー!」
興奮したメリーローズは、その本を引き裂きかねない勢いで怒り出した。
「待って! 本を壊さないで! それにもうその作家とも契約は済んでいるから、今更発行を止めるわけにはいかないのよ!」
前世で社会人経験のあるメリーローズは「契約」という言葉の重さを知っている。
既に契約済みなら、簡単には覆せないことも。
「それなら、それなら、わたくし……」
低い、地の底から聞こえるような低ーい声に、キンバリーはゴクリと喉を鳴らした。
メリーローズとは小説一巻ごとの契約なので、「次からモリスン書房では本を出さない」と言われてしまえばそれまでである。
二兎を追う者は一兎をも得ずというが、欲張ってBL小説の新シリーズを出したばかりに、今や看板作家となったメリーローズを失うことになるかも知れないとは、とんだ大失敗だ。
後悔してもしきれないし、モリスン兄妹にもなんと言えばいいのか……。
その思いは、メリーローズの言葉にかき消された。
「こうなったら、わたくし、もっともっとアルたん受けの本を、書いて書いて書きまくりますわ!」
「……え? そっち?」
再びキンバリーとシルヴィアは目が点になる。
「そっちって、どういう意味よ」
「だからその、他の出版社に移籍する……とか?」
恐る恐るキンバリーが言うと、メリーローズは呆れた。
「こんな危ない本、どこの出版社に持っていくのよ。下手に持ち込んだら、お縄になるじゃない」
「ええ、確かに」
「だからわたくしは、アル攻本の存在を皆が忘れてしまうくらい、アルたん受本をたくさん書きまくる所存よ!」
キンバリーは安堵の息を吐くと、笑顔で揉み手をした。
「毎度ありー! 先生、よろしくお願いしゃっす!」
11
あなたにおすすめの小説
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
悪役令嬢の独壇場
あくび。
ファンタジー
子爵令嬢のララリーは、学園の卒業パーティーの中心部を遠巻きに見ていた。
彼女は転生者で、この世界が乙女ゲームの舞台だということを知っている。
自分はモブ令嬢という位置づけではあるけれど、入学してからは、ゲームの記憶を掘り起こして各イベントだって散々覗き見してきた。
正直に言えば、登場人物の性格やイベントの内容がゲームと違う気がするけれど、大筋はゲームの通りに進んでいると思う。
ということは、今日はクライマックスの婚約破棄が行われるはずなのだ。
そう思って卒業パーティーの様子を傍から眺めていたのだけど。
あら?これは、何かがおかしいですね。
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です
hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。
夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。
自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。
すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。
訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。
円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・
しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・
はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?
【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです
ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。
女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。
前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る!
そんな変わった公爵令嬢の物語。
アルファポリスOnly
2019/4/21 完結しました。
沢山のお気に入り、本当に感謝します。
7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。
2021年9月。
ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。
10月、再び完結に戻します。
御声援御愛読ありがとうございました。
悪役令嬢は推しカプのために婚約破棄されたい 〜好感度モニターが壊れて全人類から溺愛されてます〜
りい
恋愛
悪役令嬢は推しカプのために婚約破棄されたい 〜好感度モニターが壊れて全人類から溺愛されてます〜
「もっとゲームがしたかった……!」 そんな切実な未練を残し、山積みの積ゲーと重量級の設定資料集に埋もれて物理的に「尊死」した限界オタクの私。
目が覚めると、そこは大好きな乙女ゲーム『幻想のルミナス』の世界。しかも、推しカプ(王子×聖女)を邪魔して最後には無残に断罪される悪役令嬢・リリアーナに転生していた!
普通なら破滅フラグ回避に走るところだけど、オタクの私は一味違う。 「断罪イベントを特等席(悪役席)で見られるなんて……これって最高のご褒美じゃない!?」
完璧な婚約破棄を勝ち取り、二人の愛の軌跡を「生」で拝むため、私は悪役として嫌われる努力を開始する。さらに、転生特典(?)で手に入れた**『好感度モニター』**を駆使して、二人の愛の数値をニヤニヤ見守るはずだった。
――なのに、視界に映る現実はバグだらけ。
「嫌われようと冷たくしたのに、王子の好感度が**【100(カンスト)】を超えてエラーを吐き出してるんですけど!? というか、肝心のヒロインまで私を姉様と慕って【200(唯一無二)】**ってどういうこと!?」
推しカプの二人は私を見るばかりで、お互いへの好感度は一向に上がらない。 果たしてリリアーナは、重すぎる全方位からの溺愛をはねのけ、理想の「婚約破棄」に辿り着けるのか?
勘違いとバグが加速する、異色の溺愛(?)ファンタジー開幕!
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる