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第三章 BL小説の存在、世に知られる
065-2
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* * *
アルフレッドの髪に花を挿すメルヴィン――
『きれいだよ、アルフレッド』
『メルヴィン……』
『尤も、君は花を挿していなくても、美しいけれどね』
『うれしいよ、メルヴィン』
『更に言うなら、何も着ていないときが一番美しいけれどね』
『もう……バカ』
* * *
(ぐふふふふ……、お兄様のエッチ!)
どう考えてもエッチなのは、そんな妄想をするメリーローズの方だ。
メルヴィンの方こそ貰い事故というものであろう。
そして何も知らないアルフレッドは、メリーローズが嬉しそうな様子を見て、幸せな気分になった。
「楽しそうだね、メリーローズ」
「ええ、だって……アルフレッド様が美しいんですもの」
「えっ? 僕?」
照れたようにメリーローズから目を逸らしたアルフレッドは、頬を赤らめながら聞く。
「あのさ、……時々メリーローズは僕のことを『美しい』って言ってくれるけど、どうして?」
「だって、アルフレッド様は美しいんですもの。思ったことを言っているだけですわ」
「でも、僕に言わせれば……」
そう言いながら、アルフレッドはメリーローズにちらりと視線を向けた。
「君の方が、ずっと美しいよ、メリーローズ」
「……えっ?」
メリーローズの濃い金色の髪が、風になびいている。
その毛先が頬にかかったのを、アルフレッドが指を伸ばして耳に掛け直した。
彼の、普段はしたことがない仕草に、メリーローズは驚いて立ち止まる。
二人は今、互いを見つめ合っていた。
「君の方が、ずっとずっと美しい。メリーローズ。その髪も、空の色を映したような色の瞳も、とてもきれいだ……」
「……まあ……」
「おおっ! いいね! いい雰囲気だね!」
喜び興奮するメルヴィンの横で、またしてもシルヴィアは内心突っ込みを入れていた。
(だーかーらー、なぜそこで、邪気を発するんですか! お嬢様は!)
それは勿論、妄想しているからである。
(アルフレッド様が、わたくしを『美しい』と仰る。……それはつまり、わたくしと似ていると言われるお兄様を『美しい』と言っているも同然!)
しゅぽー!
「僕は、君の顔立ちが好きだ。いつも……とても美しいと思っている」
(『僕は、メルヴィンの顔立ちが好きだ。いつも……とても美しいと思っている』)
しゅぽー! しゅぽー!
「嬉しいですわ。そのお言葉を聞けて……わたくし、とても幸せですわ」
その日メリーローズの頭から空高く発せられた邪気は、成層圏まで達したと言われている……。
「いやあ、実にいい雰囲気じゃないか! あ、二人がまた移動したぞ。さ、行くぞ! シルヴィア」
何も知らず楽しそうなメルヴィンに手を引かれながら、早くも自分の計画が頓挫しつつあるのを感じて、ヨボヨボと歩くシルヴィアであった。
アルフレッドの髪に花を挿すメルヴィン――
『きれいだよ、アルフレッド』
『メルヴィン……』
『尤も、君は花を挿していなくても、美しいけれどね』
『うれしいよ、メルヴィン』
『更に言うなら、何も着ていないときが一番美しいけれどね』
『もう……バカ』
* * *
(ぐふふふふ……、お兄様のエッチ!)
どう考えてもエッチなのは、そんな妄想をするメリーローズの方だ。
メルヴィンの方こそ貰い事故というものであろう。
そして何も知らないアルフレッドは、メリーローズが嬉しそうな様子を見て、幸せな気分になった。
「楽しそうだね、メリーローズ」
「ええ、だって……アルフレッド様が美しいんですもの」
「えっ? 僕?」
照れたようにメリーローズから目を逸らしたアルフレッドは、頬を赤らめながら聞く。
「あのさ、……時々メリーローズは僕のことを『美しい』って言ってくれるけど、どうして?」
「だって、アルフレッド様は美しいんですもの。思ったことを言っているだけですわ」
「でも、僕に言わせれば……」
そう言いながら、アルフレッドはメリーローズにちらりと視線を向けた。
「君の方が、ずっと美しいよ、メリーローズ」
「……えっ?」
メリーローズの濃い金色の髪が、風になびいている。
その毛先が頬にかかったのを、アルフレッドが指を伸ばして耳に掛け直した。
彼の、普段はしたことがない仕草に、メリーローズは驚いて立ち止まる。
二人は今、互いを見つめ合っていた。
「君の方が、ずっとずっと美しい。メリーローズ。その髪も、空の色を映したような色の瞳も、とてもきれいだ……」
「……まあ……」
「おおっ! いいね! いい雰囲気だね!」
喜び興奮するメルヴィンの横で、またしてもシルヴィアは内心突っ込みを入れていた。
(だーかーらー、なぜそこで、邪気を発するんですか! お嬢様は!)
それは勿論、妄想しているからである。
(アルフレッド様が、わたくしを『美しい』と仰る。……それはつまり、わたくしと似ていると言われるお兄様を『美しい』と言っているも同然!)
しゅぽー!
「僕は、君の顔立ちが好きだ。いつも……とても美しいと思っている」
(『僕は、メルヴィンの顔立ちが好きだ。いつも……とても美しいと思っている』)
しゅぽー! しゅぽー!
「嬉しいですわ。そのお言葉を聞けて……わたくし、とても幸せですわ」
その日メリーローズの頭から空高く発せられた邪気は、成層圏まで達したと言われている……。
「いやあ、実にいい雰囲気じゃないか! あ、二人がまた移動したぞ。さ、行くぞ! シルヴィア」
何も知らず楽しそうなメルヴィンに手を引かれながら、早くも自分の計画が頓挫しつつあるのを感じて、ヨボヨボと歩くシルヴィアであった。
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