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第三章 BL小説の存在、世に知られる
070 公爵令嬢は、あまりに貞淑な貴婦人だった!(嘘だけど)
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「シルヴィア、いつの間に?」
「俺の行為の何にメリーが興奮するって?」
「たった今ですわ、アルフレッド殿下。とりあえずその話は後で、メルヴィン様」
シルヴィアはソファに横たわっているメリーローズの顔を覗き込みながら、アルフレッドに向かって確認する。
「首尾よく、お嬢様とお口づけを済まされたということで、宜しいでしょうか?」
「『お口づけ』って……何だか妙に恥ずかしい感じがしない?」
「したした、二回もしたそうだよ。俺もこっそり見ていたが、なかなかにいい雰囲気だった」
照れるアルフレッドに対し、メルヴィンが代わりに報告した。
「それは重畳にございます。……それで何故、メリーローズ様はひっくり返っておいでなのでしょうか?」
「うむ。俺としては、アルフレッドがこっそり舌を入れたのでは? と疑っているのだが……」
「だから、してないって言っているじゃないか! それより僕の方こそ、君とメリーローズの間に、人に言えない何かがあるのではないかと、疑いを持っているぞ!」
シルヴィアが目を離している間に、なぜかアルフレッドとメルヴィンの仲が険悪になっている。
「一体、何があったのでしょうか? 順番にお聞かせくださいませ」
男二人は言い争うように、シルヴィアに状況を説明してくれた。
「つまりメリーローズ様は、アルフレッド様とお互いにファーストキスだったと聞いた途端、『お兄様、ごめんなさい』という、謎の言葉を残して気絶された、と」
「まとめると、そうだね」
「ねえ、シルヴィア。君も怪しいと思わないか? なぜ僕にキスされて、メルヴィンに謝るんだ?」
「……アルフレッド様。乙女心というものは、殿方には理解しがたいものなのでございます」
やれやれ、と内心溜息をつきつつ、適当なことをいって男達を煙に巻く。
(どうせ、『アルたんのファーストキスを奪ってしまったわー、ごめんなさい、お兄様』とか、そんなところでしょうね)
シルヴィアはこの場にいる誰よりも適格に、メリーローズの気絶の理由に思い至った。
「ねえ、一体どんな心理作用が働いて、メリーはそんなことを言ったんだ? 今後、女性とのつき合いの為にも是非聞いて、参考にしたいんだが」
「今後の君の、いつ実用にこぎ着けるかわからない未来より、僕の方が切実だよ。シルヴィア、君ならわかるのか? 彼女が気絶してしまったわけを」
「そうですね。……わたくしも、確実なことは申せませんが」
(本当のことは、申せませんが)
心の中でこっそりとそう考えながら、再びシルヴィアは適当なことを説明する。
「お嬢様は公爵家の令嬢として、貞操観念を厳しく躾けられていらっしゃいます。もしかしたら、わたくしが考えるよりもっと、貞淑な貴婦人だったのかも知れません……。だから口づけだけとはいえ、そしてお相手がご婚約者のアルフレッド殿下だったとはいえ、唇を守れなかったご自分を、とりあえず今身近にいる肉親のメルヴィン様に謝られたのではないでしょうか」
我ながらよくもこれだけ、事実と全然違うことがペラペラと出てくるものだ、と自分に感心するシルヴィアだった。
「なるほど、完璧な推理だ!」
メルヴィンが手を叩けば、
「そうか、僕のメリーローズはそんなに貞淑な女性だったのか」
アルフレッドもまた、メリーローズへの思いを募らせている。
(アホなのかな、この人たち。この騙されやすさ、ランズダウン家とローデイル王国の未来が危ぶまれる)
そんなことを考えつつも、シルヴィアはしれっと済ました顔で頭を下げた。
「お二人様の仰る通りにございます。あとはわたくしがお世話致しますので、お部屋に運ぶことだけ、お手伝いいただけませんでしょうか?」
「俺の行為の何にメリーが興奮するって?」
「たった今ですわ、アルフレッド殿下。とりあえずその話は後で、メルヴィン様」
シルヴィアはソファに横たわっているメリーローズの顔を覗き込みながら、アルフレッドに向かって確認する。
「首尾よく、お嬢様とお口づけを済まされたということで、宜しいでしょうか?」
「『お口づけ』って……何だか妙に恥ずかしい感じがしない?」
「したした、二回もしたそうだよ。俺もこっそり見ていたが、なかなかにいい雰囲気だった」
照れるアルフレッドに対し、メルヴィンが代わりに報告した。
「それは重畳にございます。……それで何故、メリーローズ様はひっくり返っておいでなのでしょうか?」
「うむ。俺としては、アルフレッドがこっそり舌を入れたのでは? と疑っているのだが……」
「だから、してないって言っているじゃないか! それより僕の方こそ、君とメリーローズの間に、人に言えない何かがあるのではないかと、疑いを持っているぞ!」
シルヴィアが目を離している間に、なぜかアルフレッドとメルヴィンの仲が険悪になっている。
「一体、何があったのでしょうか? 順番にお聞かせくださいませ」
男二人は言い争うように、シルヴィアに状況を説明してくれた。
「つまりメリーローズ様は、アルフレッド様とお互いにファーストキスだったと聞いた途端、『お兄様、ごめんなさい』という、謎の言葉を残して気絶された、と」
「まとめると、そうだね」
「ねえ、シルヴィア。君も怪しいと思わないか? なぜ僕にキスされて、メルヴィンに謝るんだ?」
「……アルフレッド様。乙女心というものは、殿方には理解しがたいものなのでございます」
やれやれ、と内心溜息をつきつつ、適当なことをいって男達を煙に巻く。
(どうせ、『アルたんのファーストキスを奪ってしまったわー、ごめんなさい、お兄様』とか、そんなところでしょうね)
シルヴィアはこの場にいる誰よりも適格に、メリーローズの気絶の理由に思い至った。
「ねえ、一体どんな心理作用が働いて、メリーはそんなことを言ったんだ? 今後、女性とのつき合いの為にも是非聞いて、参考にしたいんだが」
「今後の君の、いつ実用にこぎ着けるかわからない未来より、僕の方が切実だよ。シルヴィア、君ならわかるのか? 彼女が気絶してしまったわけを」
「そうですね。……わたくしも、確実なことは申せませんが」
(本当のことは、申せませんが)
心の中でこっそりとそう考えながら、再びシルヴィアは適当なことを説明する。
「お嬢様は公爵家の令嬢として、貞操観念を厳しく躾けられていらっしゃいます。もしかしたら、わたくしが考えるよりもっと、貞淑な貴婦人だったのかも知れません……。だから口づけだけとはいえ、そしてお相手がご婚約者のアルフレッド殿下だったとはいえ、唇を守れなかったご自分を、とりあえず今身近にいる肉親のメルヴィン様に謝られたのではないでしょうか」
我ながらよくもこれだけ、事実と全然違うことがペラペラと出てくるものだ、と自分に感心するシルヴィアだった。
「なるほど、完璧な推理だ!」
メルヴィンが手を叩けば、
「そうか、僕のメリーローズはそんなに貞淑な女性だったのか」
アルフレッドもまた、メリーローズへの思いを募らせている。
(アホなのかな、この人たち。この騙されやすさ、ランズダウン家とローデイル王国の未来が危ぶまれる)
そんなことを考えつつも、シルヴィアはしれっと済ました顔で頭を下げた。
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