悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

すえつむ はな

文字の大きさ
144 / 404
第三章 BL小説の存在、世に知られる

070 公爵令嬢は、あまりに貞淑な貴婦人だった!(嘘だけど)

しおりを挟む
「シルヴィア、いつの間に?」

「俺の行為の何にメリーが興奮するって?」

「たった今ですわ、アルフレッド殿下。とりあえずその話は後で、メルヴィン様」

 シルヴィアはソファに横たわっているメリーローズの顔を覗き込みながら、アルフレッドに向かって確認する。

「首尾よく、お嬢様とお口づけを済まされたということで、宜しいでしょうか?」

「『お口づけ』って……何だか妙に恥ずかしい感じがしない?」

「したした、二回もしたそうだよ。俺もこっそり見ていたが、なかなかにいい雰囲気だった」

 照れるアルフレッドに対し、メルヴィンが代わりに報告した。

「それは重畳にございます。……それで何故、メリーローズ様はひっくり返っておいでなのでしょうか?」

「うむ。俺としては、アルフレッドがこっそり舌を入れたのでは? と疑っているのだが……」

「だから、してないって言っているじゃないか! それより僕の方こそ、君とメリーローズの間に、人に言えない何かがあるのではないかと、疑いを持っているぞ!」

 シルヴィアが目を離している間に、なぜかアルフレッドとメルヴィンの仲が険悪になっている。

「一体、何があったのでしょうか? 順番にお聞かせくださいませ」

 男二人は言い争うように、シルヴィアに状況を説明してくれた。

「つまりメリーローズ様は、アルフレッド様とお互いにファーストキスだったと聞いた途端、『お兄様、ごめんなさい』という、謎の言葉を残して気絶された、と」

「まとめると、そうだね」

「ねえ、シルヴィア。君も怪しいと思わないか? なぜ僕にキスされて、メルヴィンに謝るんだ?」

「……アルフレッド様。乙女心というものは、殿方には理解しがたいものなのでございます」

 やれやれ、と内心溜息をつきつつ、適当なことをいって男達を煙に巻く。

(どうせ、『アルたんのファーストキスを奪ってしまったわー、ごめんなさい、お兄様』とか、そんなところでしょうね)

 シルヴィアはこの場にいる誰よりも適格に、メリーローズの気絶の理由に思い至った。

「ねえ、一体どんな心理作用が働いて、メリーはそんなことを言ったんだ? 今後、女性とのつき合いの為にも是非聞いて、参考にしたいんだが」

「今後の君の、いつ実用にこぎ着けるかわからない未来より、僕の方が切実だよ。シルヴィア、君ならわかるのか? 彼女が気絶してしまったわけを」

「そうですね。……わたくしも、確実なことは申せませんが」

(本当のことは、申せませんが)

 心の中でこっそりとそう考えながら、再びシルヴィアは適当なことを説明する。

「お嬢様は公爵家の令嬢として、貞操観念を厳しく躾けられていらっしゃいます。もしかしたら、わたくしが考えるよりもっと、貞淑な貴婦人だったのかも知れません……。だから口づけだけとはいえ、そしてお相手がご婚約者のアルフレッド殿下だったとはいえ、唇を守れなかったご自分を、とりあえず今身近にいる肉親のメルヴィン様に謝られたのではないでしょうか」

 我ながらよくもこれだけ、事実と全然違うことがペラペラと出てくるものだ、と自分に感心するシルヴィアだった。

「なるほど、完璧な推理だ!」

 メルヴィンが手を叩けば、

「そうか、僕のメリーローズはそんなに貞淑な女性だったのか」

 アルフレッドもまた、メリーローズへの思いを募らせている。

(アホなのかな、この人たち。この騙されやすさ、ランズダウン家とローデイル王国の未来が危ぶまれる)

 そんなことを考えつつも、シルヴィアはしれっと済ました顔で頭を下げた。

「お二人様の仰る通りにございます。あとはわたくしがお世話致しますので、お部屋に運ぶことだけ、お手伝いいただけませんでしょうか?」
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした

黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)

はじめまして、私の知らない婚約者様

有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。 見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。 けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。 ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。 けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。 この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。 悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに? ※他サイトにも掲載しています。

村娘になった悪役令嬢

枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。 ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。 村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。 ※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります) アルファポリスのみ後日談投稿しております。

〘完〙前世を思い出したら悪役皇太子妃に転生してました!皇太子妃なんて罰ゲームでしかないので円満離婚をご所望です

hanakuro
恋愛
物語の始まりは、ガイアール帝国の皇太子と隣国カラマノ王国の王女との結婚式が行われためでたい日。 夫婦となった皇太子マリオンと皇太子妃エルメが初夜を迎えた時、エルメは前世を思い出す。 自著小説『悪役皇太子妃はただ皇太子の愛が欲しかっただけ・・』の悪役皇太子妃エルメに転生していることに気付く。何とか初夜から逃げ出し、混乱する頭を整理するエルメ。 すると皇太子の愛をいずれ現れる癒やしの乙女に奪われた自分が乙女に嫌がらせをして、それを知った皇太子に離婚され、追放されるというバッドエンドが待ち受けていることに気付く。 訪れる自分の未来を悟ったエルメの中にある想いが芽生える。 円満離婚して、示談金いっぱい貰って、市井でのんびり悠々自適に暮らそうと・・ しかし、エルメの思惑とは違い皇太子からは溺愛され、やがて現れた癒やしの乙女からは・・・ はたしてエルメは円満離婚して、のんびりハッピースローライフを送ることができるのか!?

虐げられた人生に疲れたので本物の悪女に私はなります

結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
伯爵家である私の家には両親を亡くして一緒に暮らす同い年の従妹のカサンドラがいる。当主である父はカサンドラばかりを溺愛し、何故か実の娘である私を虐げる。その為に母も、使用人も、屋敷に出入りする人達までもが皆私を馬鹿にし、時には罠を這って陥れ、その度に私は叱責される。どんなに自分の仕業では無いと訴えても、謝罪しても許されないなら、いっそ本当の悪女になることにした。その矢先に私の婚約者候補を名乗る人物が現れて、話は思わぬ方向へ・・? ※「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています

記憶を失くした悪役令嬢~私に婚約者なんておりましたでしょうか~

Blue
恋愛
マッツォレーラ侯爵の娘、エレオノーラ・マッツォレーラは、第一王子の婚約者。しかし、その婚約者を奪った男爵令嬢を助けようとして今正に、階段から二人まとめて落ちようとしていた。 走馬灯のように、第一王子との思い出を思い出す彼女は、強い衝撃と共に意識を失ったのだった。

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~

魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。 ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!  そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!? 「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」 初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。 でもなんだか様子がおかしくて……? 不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。 ※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます ※他サイトでも公開しています。 【無断転載・AI利用禁止 / No Unauthorized Use or AI Training】 本作品の無断転載・複製・AI学習利用を禁じます。 Unauthorized reproduction or use for AI training is strictly prohibited. © 魯恒凛 / RoKourin

処理中です...