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第三章 BL小説の存在、世に知られる
078-2
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娘の帰宅には、公爵夫妻も喜んだが、兄のメルヴィンもまた嬉しそうな表情を見せた。
一家揃ってのティータイムの席でのことである。
「メルヴィン、お前はメリーに毎日学院で会っているだろうに」
「そうよ。週末くらいは、わたくしたちにメリーローズを独占させてちょうだい」
そんな両親に、メルヴィンは「いえいえ」と笑顔で拒否した。
「学年が違う分、俺だってあまりメリーと一緒に過ごすことは出来ないんです。妹バカの兄の願いなんだから、一緒にいてくれるよね? メリー」
「え? そんなことはなモゴモゴ」
メルヴィンの言葉を無邪気に否定しそうになったメリーローズの口に、シルヴィアがすかさずスコーンを放り込む。
「お嬢様、本日のジャムはお嬢様のお好きなルバーブですわ。クロテッドクリームも、たっぷりのせました」
「まみまもうモゴモゴ」
多分、「ありがとう」と言ったのだろう。
「これ、食べながら話をするなんて、お行儀が悪いですよ」
「いいじゃないか。どうせ家族しかいないんだから」
「それなんだけど、遅いなあ、あいつ」
メルヴィンの呟きに、公爵が反応した。
「なんだ? 誰か呼んでいるのか?」
「ええ、実は……」
メルヴィンが言いかけたときに、メイドが報告をする。
「アルフレッド殿下がお見えになりました」
「ええ? 殿下が?」
「まあ、どうしましょう。家族だけだと思って、大したものを用意していなかったのに」
慌てる公爵夫妻に、メルヴィンが笑った。
「大丈夫ですよ。今日は第二王子としてではなく、僕の友人として招待しただけですから」
「そんなわけにいくか!」
「そうよ。……シルヴィア、何か他に良さそうなお茶菓子がないか、探してきてくれないかしら?」
公爵夫人の頼みに、シルヴィアは厨房に向かう。
その口元には、ほのかに笑みが浮かんでいた。
(計画通りだ)
実は、アルフレッドを招待することは、メルヴィンと打ち合わせしていたのである。
先だってのアルフレッドの告白で、妹のメリーローズがアルフレッドではなくヴィンセント王太子の妃に、と宰相たちに言われていたということは、メルヴィンの中では大きな衝撃であった。
アルフレッドとメリーローズの恋を、長い間応援してきたメルヴィンである。
今や口づけも交わし、すっかり恋人同士になったアルフレッドたち――メルヴィンはそういう認識だった――を引き裂かれてなるものか、と考えていたところに、シルヴィアから計画をもちかけられたのだ。
「メルヴィン様は、お嬢様がヴィンセント王太子とご結婚されることになったら、賛成されますか?」
「そんなわけないだろう。愛し合っている二人を別れさせようなんて、とんでもない」
「かしこまりました。では、わたくしの考えをお話しさせていただきます」
シルヴィアは話を進めながら、(いい家族だな)と思った。
本来貴族であれば、娘の結婚相手が第二王子から王太子に変更になると聞いたら、一も二もなく賛成するだろう。
その方が自分たちに有利になるのだから、当然だ。
婚約者を勝手に変えられる娘の気持ちなど、後回しにされる。
それが貴族の常識だ。
(もし仮にわたくしがそうなれば、家族はさっさと変更に同意するだろう。わたくしが反対出来ないよう、家に閉じ込めてでも)
ちらりと思い出した実家への苦い考えを封印し、シルヴィアはメルヴィンとの会話に集中した。
一家揃ってのティータイムの席でのことである。
「メルヴィン、お前はメリーに毎日学院で会っているだろうに」
「そうよ。週末くらいは、わたくしたちにメリーローズを独占させてちょうだい」
そんな両親に、メルヴィンは「いえいえ」と笑顔で拒否した。
「学年が違う分、俺だってあまりメリーと一緒に過ごすことは出来ないんです。妹バカの兄の願いなんだから、一緒にいてくれるよね? メリー」
「え? そんなことはなモゴモゴ」
メルヴィンの言葉を無邪気に否定しそうになったメリーローズの口に、シルヴィアがすかさずスコーンを放り込む。
「お嬢様、本日のジャムはお嬢様のお好きなルバーブですわ。クロテッドクリームも、たっぷりのせました」
「まみまもうモゴモゴ」
多分、「ありがとう」と言ったのだろう。
「これ、食べながら話をするなんて、お行儀が悪いですよ」
「いいじゃないか。どうせ家族しかいないんだから」
「それなんだけど、遅いなあ、あいつ」
メルヴィンの呟きに、公爵が反応した。
「なんだ? 誰か呼んでいるのか?」
「ええ、実は……」
メルヴィンが言いかけたときに、メイドが報告をする。
「アルフレッド殿下がお見えになりました」
「ええ? 殿下が?」
「まあ、どうしましょう。家族だけだと思って、大したものを用意していなかったのに」
慌てる公爵夫妻に、メルヴィンが笑った。
「大丈夫ですよ。今日は第二王子としてではなく、僕の友人として招待しただけですから」
「そんなわけにいくか!」
「そうよ。……シルヴィア、何か他に良さそうなお茶菓子がないか、探してきてくれないかしら?」
公爵夫人の頼みに、シルヴィアは厨房に向かう。
その口元には、ほのかに笑みが浮かんでいた。
(計画通りだ)
実は、アルフレッドを招待することは、メルヴィンと打ち合わせしていたのである。
先だってのアルフレッドの告白で、妹のメリーローズがアルフレッドではなくヴィンセント王太子の妃に、と宰相たちに言われていたということは、メルヴィンの中では大きな衝撃であった。
アルフレッドとメリーローズの恋を、長い間応援してきたメルヴィンである。
今や口づけも交わし、すっかり恋人同士になったアルフレッドたち――メルヴィンはそういう認識だった――を引き裂かれてなるものか、と考えていたところに、シルヴィアから計画をもちかけられたのだ。
「メルヴィン様は、お嬢様がヴィンセント王太子とご結婚されることになったら、賛成されますか?」
「そんなわけないだろう。愛し合っている二人を別れさせようなんて、とんでもない」
「かしこまりました。では、わたくしの考えをお話しさせていただきます」
シルヴィアは話を進めながら、(いい家族だな)と思った。
本来貴族であれば、娘の結婚相手が第二王子から王太子に変更になると聞いたら、一も二もなく賛成するだろう。
その方が自分たちに有利になるのだから、当然だ。
婚約者を勝手に変えられる娘の気持ちなど、後回しにされる。
それが貴族の常識だ。
(もし仮にわたくしがそうなれば、家族はさっさと変更に同意するだろう。わたくしが反対出来ないよう、家に閉じ込めてでも)
ちらりと思い出した実家への苦い考えを封印し、シルヴィアはメルヴィンとの会話に集中した。
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