悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

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第三章 BL小説の存在、世に知られる

089-2

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 フェリクスの告白に、ランドルフもさすがに驚き、笑みが消えた。

「極秘事項だったので、ご存じなかったのも無理はありません。実は数年前から、精神を病んでおられます」

「…………そうだったのか」

「ブロムリー公爵は、たぶんまだ母の病気のことは知らないと思います。でもいつ情報が漏れるかわかりません」

 再びアルフレッドが説明を始める。

「そしてもし病気がバレれば、当然ブロムリー公爵は退位を迫るでしょう。そうなった場合の不安要素として、王太子である兄の婚約者がまだ決まっていないことがあります」

「なるほど。我が国では伝統的に、王位を継ぐ際には既婚であることが望ましいと言われている。結婚していなくても、その予定としてお相手が決まっていないと、次期国王としての立場が不利になるな」

「そうなんです! そのせいで、俺のミュリエルがヴィンセント殿下の婚約者にされそうなんです!」

「きゃっ」

 フィルバートがミュリエルの肩をつかんで、ランドルフの前に押し出した。
 ミュリエルも戸惑っているが、ランドルフも困っている。

「え……っと、それは、どういう意味かな?」

「フィルバート、ちゃんと説明しないとわからないよ」

 アーネストに諭され、ミュリエルが代わりにいきさつを説明した。

「ランドルフ先生は、私がこの学院に入ることになったきっかけについては、ご存じでしょうか?」

「ああ、おおまかには聞いている。何か奇跡を起こしたそうだね」

「は、はい。そう大司教様から言われて、ぜひこの学院で学ぶように、と。そして私の力で『奇跡のバラ』を咲かせることを期待されているようなのです」

「『奇跡のバラ』……? どこかで、聞いたことがあるような……」

「城の特別な温室で育てられているバラです。その花が咲くと奇跡を起こせると言われています」

「バラを咲かせて女王のご病気を治そうと、大司教が提案したと聞きました。そしてその『奇跡のバラ』を咲かせたミュリエルを聖女として認定し、平民出身ではあるけれど、ヴィンセント兄さんの婚約者にしようと、宰相が画策しているのようなのです」

「しかし、随分悠長な策じゃないか? その『奇跡のバラ』がいつ咲くのかわからないし、咲いた後、陛下の病平癒を待って聖女にして、ヴィンセント王太子の婚約者にしている間に、ブロムリー公爵に女王陛下のご病気がバレたら、女王退位と王太子の廃位の両方を進められてしまうかも知れないぞ」

「はい……。大司教は『奇跡のバラ』が咲いたことにして、とにかくミュリエルを聖女に仕立ててしまおうと考えている節があります」

 アルフレッドの言葉に、フィルバートがわめいた。

「なんだって? 聞いていたのと話が違うぞ!」

「おい、フィルバート」

 アーネストがなだめるが、当のミュリエルもショックを受けて真っ青になっている。

「すまない。僕もつい最近聞いたんだ」

「もしかして、それで聖堂の方々が学院に視察に来ることになったのでは?」

 ヘザーが推理した。

「ああ。おそらくそうだろう」

「聖堂の視察? 先日通達が来ていたが、あれか。大司教殿もいらっしゃるので、粗相のないように……と言われているが」

 教師であるランドルフにも、知らせはきていたようである。

「しかし、時間があまりないな。来週の月曜日と聞いているぞ」

「でも、それまでに『奇跡のバラ』が咲いたり、女王陛下のご病気が治ったりなんて、無理ですよね?」

 エルシーが疑問を口にするが、ランドルフが首を振った。

「そんなの、どうにでもでっちあげることは可能だ。要はミュリエル嬢が『奇跡を起こした』ことにすればいいんだから。何か仕掛けでも使って、奇跡を起こしたように見せれば恰好がつく」

「どうしましょう。私、どうすれば……」

「ミュリエル。お、俺が、絶対なんとかするから!」

 泣きそうになっているミュリエルの肩を、フィルバートが抱きしめた。
 さすがにこの状況なので、アデレイドも「あちちです」などとは言い出さなかった。
 一応、空気は読めた。

「はい!」

 そこに、シルヴィアが挙手する。

「何か奇跡のようなことを起こすとすれば、事前に何か仕掛けをしておきますよね。それを探し出して壊してしまうという手はいかがでしょうか」
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