193 / 404
第三章 BL小説の存在、世に知られる
095-2
しおりを挟む
シルヴィアからそんな評価を得ているとはつゆ知らないメルヴィンは、暢気に双眼鏡を覗きながら呟いた。
「おや、あの一行の中には一人女性が混じっている? ……いや、大聖堂の職員なら男性か。しかし随分小さくて、小柄だな。多分メリーよりももっとずっと小さいぞ)
「ええー? そんな小さい男の人がいるんですか?」
アデレイドが、メルヴィンに負けないくらいの暢気さを発揮する。
隣で「見たーい、見たーい」と騒ぐのを見かねて、メリーローズがメルヴィンにお願いした。
「お兄様、少しだけアデレイドにも望遠鏡を貸していただけませんか?」
「ええー? ……わかったよ。少しだけだぞ」
(お兄様も子供っぽいわね)
不満そうな兄から遠鏡を受け取り、アデレイドに貸してあげる。
「わーい、ありがとうございます! ……どれどれ? わー、コマドリが飛んでいます。可愛い!」
「アデレイド、バードウォッチングはまた今度。今は噴水前にいる、司教一行の様子を観察してね」
「はあーい。……あ、本当だ。女の人みたいな人がいます。小柄で髪が長くて、三つ編みをしています」
「え? そんなとこまで見えるのか? ちょっと返してくれないか」
「はーい」
少しだが見ることができて満足したアデレイドから、再び望遠鏡を受け取ったメルヴィンが窓からレンズを覗かせる。
「んん? 長い髪を三つ編み? 全然見えないぞ」
「どれどれ?」
メルヴィンから望遠鏡を受け取り、アルフレッドが覗き込んだ。
「うーん……言われてみれば、三つ編みかも。しかしすぐに見分けられるなんて、アデレイド嬢は目がいいね」
「えへへ。嬉しいです」
「アルフレッドは見えるのか。ということは、俺の視力が落ちているのかな」
「そのうち眼鏡が必要になるかもね。夜、暗いなかで勉強をしていると、眼が悪くなるって言うぞ。気をつけろよ」
「ああ」
そんな会話を、勿論メリーローズは聞き逃さない。
(お兄様が眼鏡……)
* * *
「とうとう俺も眼鏡をしなきゃいけなくなったよ」
メルヴィンの顔を、じっと見つめるアルフレッド。
「なんだ? やっぱりおかしいか?」
「おかしくなんてないよ。眼鏡をかけた君も素敵だ。でも……」
眼鏡を取り上げるアルフレッド。
「あ、こら。返せよ」
「だめだよ。だって……」
眼鏡を持ったまま、メルヴィンの首の後ろに両手を回し、アルフレッドから口づける。
「眼鏡をしたままじゃ、キスがしにくいんだもん」
* * *
(ぐへへ……いい小道具。よき)
ニヤける顔を抑えて、メリーローズが兄に提案する。
「お兄様、ぜひ夜に集中してお勉強いたしましょう」
「なぜ?」
「おや、あの一行の中には一人女性が混じっている? ……いや、大聖堂の職員なら男性か。しかし随分小さくて、小柄だな。多分メリーよりももっとずっと小さいぞ)
「ええー? そんな小さい男の人がいるんですか?」
アデレイドが、メルヴィンに負けないくらいの暢気さを発揮する。
隣で「見たーい、見たーい」と騒ぐのを見かねて、メリーローズがメルヴィンにお願いした。
「お兄様、少しだけアデレイドにも望遠鏡を貸していただけませんか?」
「ええー? ……わかったよ。少しだけだぞ」
(お兄様も子供っぽいわね)
不満そうな兄から遠鏡を受け取り、アデレイドに貸してあげる。
「わーい、ありがとうございます! ……どれどれ? わー、コマドリが飛んでいます。可愛い!」
「アデレイド、バードウォッチングはまた今度。今は噴水前にいる、司教一行の様子を観察してね」
「はあーい。……あ、本当だ。女の人みたいな人がいます。小柄で髪が長くて、三つ編みをしています」
「え? そんなとこまで見えるのか? ちょっと返してくれないか」
「はーい」
少しだが見ることができて満足したアデレイドから、再び望遠鏡を受け取ったメルヴィンが窓からレンズを覗かせる。
「んん? 長い髪を三つ編み? 全然見えないぞ」
「どれどれ?」
メルヴィンから望遠鏡を受け取り、アルフレッドが覗き込んだ。
「うーん……言われてみれば、三つ編みかも。しかしすぐに見分けられるなんて、アデレイド嬢は目がいいね」
「えへへ。嬉しいです」
「アルフレッドは見えるのか。ということは、俺の視力が落ちているのかな」
「そのうち眼鏡が必要になるかもね。夜、暗いなかで勉強をしていると、眼が悪くなるって言うぞ。気をつけろよ」
「ああ」
そんな会話を、勿論メリーローズは聞き逃さない。
(お兄様が眼鏡……)
* * *
「とうとう俺も眼鏡をしなきゃいけなくなったよ」
メルヴィンの顔を、じっと見つめるアルフレッド。
「なんだ? やっぱりおかしいか?」
「おかしくなんてないよ。眼鏡をかけた君も素敵だ。でも……」
眼鏡を取り上げるアルフレッド。
「あ、こら。返せよ」
「だめだよ。だって……」
眼鏡を持ったまま、メルヴィンの首の後ろに両手を回し、アルフレッドから口づける。
「眼鏡をしたままじゃ、キスがしにくいんだもん」
* * *
(ぐへへ……いい小道具。よき)
ニヤける顔を抑えて、メリーローズが兄に提案する。
「お兄様、ぜひ夜に集中してお勉強いたしましょう」
「なぜ?」
0
あなたにおすすめの小説
シナリオ通り追放されて早死にしましたが幸せでした
黒姫
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢に転生しました。神様によると、婚約者の王太子に断罪されて極北の修道院に幽閉され、30歳を前にして死んでしまう設定は変えられないそうです。さて、それでも幸せになるにはどうしたら良いでしょうか?(2/16 完結。カテゴリーを恋愛に変更しました。)
はじめまして、私の知らない婚約者様
有木珠乃@『ヒロ弟』コミカライズ配信中
ファンタジー
ミルドレッド・カーマイン公爵令嬢は突然、学園の食堂で話しかけられる。
見覚えのない男性。傍らには豊満な体型の女性がいる。
けれどその女性から発せられた男性の名前には、聞き覚えがあった。
ミルドレッドの婚約者であるブルーノ王子であることを。
けれどミルドレッドの反応は薄い。なぜなら彼女は……。
この世界を乙女ゲームだと知った人々による、悪役令嬢とヒロイン、魔女の入れ替え話です。
悪役令嬢を救いたかったはずなのに、どうしてこんなことに?
※他サイトにも掲載しています。
誰からも愛されない悪役令嬢に転生したので、自由気ままに生きていきたいと思います。
木山楽斗
恋愛
乙女ゲームの悪役令嬢であるエルファリナに転生した私は、彼女のその境遇に対して深い悲しみを覚えていた。
彼女は、家族からも婚約者からも愛されていない。それどころか、その存在を疎まれているのだ。
こんな環境なら歪んでも仕方ない。そう思う程に、彼女の境遇は悲惨だったのである。
だが、彼女のように歪んでしまえば、ゲームと同じように罪を暴かれて牢屋に行くだけだ。
そのため、私は心を強く持つしかなかった。悲惨な結末を迎えないためにも、どんなに不当な扱いをされても、耐え抜くしかなかったのである。
そんな私に、解放される日がやって来た。
それは、ゲームの始まりである魔法学園入学の日だ。
全寮制の学園には、歪な家族は存在しない。
私は、自由を得たのである。
その自由を謳歌しながら、私は思っていた。
悲惨な境遇から必ず抜け出し、自由気ままに生きるのだと。
村娘になった悪役令嬢
枝豆@敦騎
恋愛
父が連れてきた妹を名乗る少女に出会った時、公爵令嬢スザンナは自分の前世と妹がヒロインの乙女ゲームの存在を思い出す。
ゲームの知識を得たスザンナは自分が将来妹の殺害を企てる事や自分が父の実子でない事を知り、身分を捨て母の故郷で平民として暮らすことにした。
村娘になった少女が行き倒れを拾ったり、ヒロインに連れ戻されそうになったり、悪役として利用されそうになったりしながら最後には幸せになるお話です。
※他サイトにも掲載しています。(他サイトに投稿したものと異なっている部分があります)
アルファポリスのみ後日談投稿しております。
悪役令嬢ですが、当て馬なんて奉仕活動はいたしませんので、どうぞあしからず!
たぬきち25番
恋愛
気が付くと私は、ゲームの中の悪役令嬢フォルトナに転生していた。自分は、婚約者のルジェク王子殿下と、ヒロインのクレアを邪魔する悪役令嬢。そして、ふと気が付いた。私は今、強大な権力と、惚れ惚れするほどの美貌と身体、そして、かなり出来の良い頭を持っていた。王子も確かにカッコイイけど、この世界には他にもカッコイイ男性はいる、王子はヒロインにお任せします。え? 当て馬がいないと物語が進まない? ごめんなさい、王子殿下、私、自分のことを優先させて頂きまぁ~す♡
※マルチエンディングです!!
コルネリウス(兄)&ルジェク(王子)好きなエンディングをお迎えください m(_ _)m
2024.11.14アイク(誰?)ルートをスタートいたしました。
楽しんで頂けると幸いです。
※他サイト様にも掲載中です
【完結】旦那様、どうぞ王女様とお幸せに!~転生妻は離婚してもふもふライフをエンジョイしようと思います~
魯恒凛
恋愛
地味で気弱なクラリスは夫とは結婚して二年経つのにいまだに触れられることもなく、会話もない。伯爵夫人とは思えないほど使用人たちにいびられ冷遇される日々。魔獣騎士として人気の高い夫と国民の妹として愛される王女の仲を引き裂いたとして、巷では悪女クラリスへの風当たりがきついのだ。
ある日前世の記憶が甦ったクラリスは悟る。若いクラリスにこんな状況はもったいない。白い結婚を理由に円満離婚をして、夫には王女と幸せになってもらおうと決意する。そして、離婚後は田舎でもふもふカフェを開こうと……!
そのためにこっそり仕事を始めたものの、ひょんなことから夫と友達に!?
「好きな相手とどうやったらうまくいくか教えてほしい」
初恋だった夫。胸が痛むけど、お互いの幸せのために王女との仲を応援することに。
でもなんだか様子がおかしくて……?
不器用で一途な夫と前世の記憶が甦ったサバサバ妻の、すれ違い両片思いのラブコメディ。
※5/19〜5/21 HOTランキング1位!たくさんの方にお読みいただきありがとうございます
※他サイトでも公開しています。
【無断転載・AI利用禁止 / No Unauthorized Use or AI Training】
本作品の無断転載・複製・AI学習利用を禁じます。
Unauthorized reproduction or use for AI training is strictly prohibited.
© 魯恒凛 / RoKourin
転生者はチートな悪役令嬢になりました〜私を死なせた貴方を許しません〜
みおな
恋愛
私が転生したのは、乙女ゲームの世界でした。何ですか?このライトノベル的な展開は。
しかも、転生先の悪役令嬢は公爵家の婚約者に冤罪をかけられて、処刑されてるじゃないですか。
冗談は顔だけにして下さい。元々、好きでもなかった婚約者に、何で殺されなきゃならないんですか!
わかりました。私が転生したのは、この悪役令嬢を「救う」ためなんですね?
それなら、ついでに公爵家との婚約も回避しましょう。おまけで貴方にも仕返しさせていただきますね?
何やってんのヒロイン
ネコフク
恋愛
前世の記憶を持っている侯爵令嬢のマユリカは第二王子であるサリエルの婚約者。
自分が知ってる乙女ゲームの世界に転生しているときづいたのは幼少期。悪役令嬢だなーでもまあいっか、とのんきに過ごしつつヒロインを監視。
始めは何事もなかったのに学園に入る半年前から怪しくなってきて・・・
それに婚約者の王子がおかんにジョブチェンジ。めっちゃ甲斐甲斐しくお世話されてるんですけど。どうしてこうなった。
そんな中とうとうヒロインが入学する年に。
・・・え、ヒロイン何してくれてんの?
※本編・番外編完結。小話待ち。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる