悪役令嬢はBL作家「処刑覚悟で萌えますわ!」~婚約者の王子様ごめんなさい、あなたをネタに小説書いてます~

すえつむ はな

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最終章 BLよ、永遠なれ

169 公爵令嬢の『押し』の息子の告白

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 ここで、苦笑いを浮かべたヒューストンがまた窓の外を見た。
 今回は、大司教もまたその視線に気づく。

(なんだ? ヒューストンめ、何を見た?)

 自分の視線を追った大司教をよそに、ヒューストンはヴィンセント王太子に言葉を掛けた。

「先ほどはお話の途中でしたな。……よろしければ、この場を借りて仰りたいことを全て吐き出されてはいかがでしょう」

「ありがとうございます」

 ヴィンセント王太子は立ち上がるとゆっくり法廷内を見まわし、礼を取る。
 背筋がまっすぐな、美しい礼であった。

「皆を驚かせてしまったこと、申し訳なく思います。また、私が同性愛者であると知って失望した者もいるでしょう。これも重ねて謝罪したいと思います」

「いえ、そんな……」

 傍聴席から何人かの声があがったが、ヒューストンからの注意はなかった。

「リントン大司教殿は『同性愛を治療すべきだ』と申していたが、もしそんなことができるなら、治療してもらいたいのは私の方であった」

 その言葉に、大司教は唇を噛んで俯く。
 ヴィンセントは話を続ける。

「私が王太子として立ったのは十歳のとき。そのときはまだ、自分が同性愛者であるという自覚はなかった。……いや、多少の違和感はあっただろうか。しかし確信するほどではなかった」

「自分を本格的に『同性愛者である』と認めるようになったのは、十代も半ば過ぎ。……恋をしたのだ。同じ高等学院の同級生である男子学生に」

 ヴィンセント王太子の視線が、メリーローズを捉えた。

「ランズダウン公爵令嬢、あなたには感謝している」

「え? わたくしに、ですか?」

 目を丸くするメリーローズに、ヴィンセント王太子は優しく微笑んだ。

「あの、『ローザリウム王国物語』を、あなたの逮捕後に読みました。……懐かしかった。あの中に出てくるアルバートとエドウィンのように、私もまた思う相手と恋仲になったのです」

 ここで法廷内が大きくどよめいた。
 同性愛者であるという自覚を持つだけでなく、法を破り、王太子が同性の恋人を持っていたという告白には、大きな衝撃が走ったのだ。

「あの小説の中のアルバート。あれは私がモデルだと感じた。これは私の物語だと……。同性愛を禁じられる国の王太子でありながら、同性のクラスメイトに強く惹かれ、結ばれる。……まさしく、私そのものだ」

「いえ、あの主役のモデルはアルたんもがもが」

「お嬢様、空気を読んでください」

 正直すぎるメリーローズの口を、慌てて近寄ったシルヴィアが塞ぐ。

 アルフレッドと面立ちの似た美青年であるヴィンセントの恋物語に、聞いていた人々――の中の、特に女子学生たち――が、なぜかうっとりし始めた。
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