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第1章
第5話
しおりを挟む口を開けたまま上を見上げる。
建物は長方形の縦長で最上階部分はここからでは見えない。とにかく大きくて高い建物のようです。現場からは以上です。
「はい、こっちだよー」
ウェル先輩について中に入ると広々とした空間の床に魔法陣と呼ばれるものがあった。
「あれ…?これって魔法陣?本物…!?」
「これが魔法陣…」
今まで本でしか見たことのなかった魔法陣をまじまじと見る。
あ、これ転移の魔法と…ん?これは時空の魔法?それにここは…
「えっと、二人とも?そんなに珍しいものではないと思うけど…ほら、早く魔法陣に入って。部屋に移動するよ」
私達は魔方陣の上にたち、ウェル先輩が石の台に魔力を流し込むと、あっという間に部屋に飛ばされた。
「ここが、ミアとアルフレートの部屋だよ。あの石に今後自分たちの魔力を流せば直ぐにここに着くからね。」
へー、便利だわと感心する。
そして、目の前にある扉を開くと中は想像を絶する広さだった。
「…ちょっと、待ってください。これのどこが部屋ですか?」
「ん?全部」
部屋というか、階丸ごとが部屋というか。玄関と思われる扉を開けて入ると、リビングらしいだだっ広い部屋に小部屋が3つ。あと風呂とトイレとキッチン。
「え…は??これが寮?これが部屋?どういうこと?」
「だから、さっき言っただろう?
平民と貴族はできるだけ対等にしているって。だから、君たちのこの部屋も寮も全て皆一緒。
…ただ、本当は1人に1つの階なんだけど、君たちは2人で1つの階に住むよう保護者の方から言われているんだ。」
「はぁ!?なんでだよ!」
アルが反発している中、私は気疲れで考えるのを辞めたくなった。
金持ち怖っ…
「はいはい、決まりだから。僕に言われても仕方がないよ。」
「いやいやいや、おかしいだろ!男女が同じ階に住むって教育的に良くないだろ!!」
「…確かに。まぁ、それはおいおい学院の先生に文句を言ってもらうとして。
この後は自由だよ。まぁ、部屋には家具が必要最低限しかないから買いに行くのが無難かな。
明日、クラス分け筆記テストと実力テストがあるよ。じゃあ、僕は来れで。頑張ってね」
「「え、あ…ありがとうございました…?」」
ウェル先輩は魔法陣の中に消えていった。
いつまでもここで突っ立っている訳には行かない。と、気を取り直す。
玄関を開け、早速荷物を入れる。
私はアイテムボックスから先週の狩りでとったファイヤーボアの毛皮だけを取り出し水魔法で浄化。土魔法で固めた台に綿毛を大量に生やしボアの毛皮を被せた二人がけのソファを作った。
そのままうつぶせに倒れる。
「甘いものが食べたーい…」
返事が返ってこないので後ろを振り返る。すると、アルがしゃがんで何かをぶつぶつ唱えていた。
「ミアと二人きりで生活、不安でしかない。これ以上俺は理性をとめられるのか、今まではまだちびっこが居たから大丈夫だったけどこれからは二人きり。俺の理性はどこまで保つのかこれからやって行けるのか。いや…でも、あぁーくそ」
私はアルの真正面に向き直る。
「アルは私と過ごすの嫌?」
「嫌じゃない!!」
アルは顔をばっとあげ直ぐに否定してきた。
「そう、ならいいじゃない。甘いもの食べよ?なにか作ろ」
ね?と聞けばアルは「はぁー」と重たいため息をついた呆れたように笑った。
「買い物に行って…クッキーでも作るか」
「うん!」
その日のうちに自分たちの部屋を決め、家具となるベットや本棚を魔法で全て作った。
クッキーも美味しく焼けた。
こうして私たちの新生活が始まったのである。
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