悪役令嬢がでれでれに溺愛されるまでの話

ててて

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第1章

15 やってしまった

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お兄様の剣術の稽古を見ているとき、ふとウィルさんが目に入る。

(さわやかなイケメンだなー。モテモテだろうな)

なんて呑気に考えていた。ウィルさんがこちらの視線に気づき、にこっと笑う。そのときだ。

「………あ!!」

思わず声を上げてしまった。

「わっびっくりした!…リオーネ、急に大きな声を出さないでよ!」

「あ、ごめんなさい!お兄様!えっと、すいません用事を思い出したので失礼します。それでは!」

「?リオーネ様?」
「え!ちょっと、リオーネ?」

颯爽と小走りし部屋に戻る。お兄様達が何か言いかけたが無視だ無視。今はそれどころではない。

部屋に戻り椅子に座る。落ち着くために深呼吸。
(すーはーすーはー)

「お嬢様?どうかなさいましたか?」

コレットは私の部屋を掃除してくれていたみたいだ。

「いいえ、先ほどの講習の宿題が終わってなかったのを思い出したのよ。今からやるわね。」

「承知しました。紅茶をお持ちしますね。」

コレットが部屋から出て行く。

私は思い出した。ウィリアス・カイザー、それはゲームの攻略対象。騎士さまの名前だ。
そして彼の容姿は前世の私が液晶画面越しに見ていたあの人そのものだ。癖のついた淡い水色の髪の毛に優しそうな藍色の瞳。まるで王子様のような笑顔。

(なんで気づかなかったんだよ!!)

最悪だ。攻略対象とは関わらないと決めたばっかりじゃん!いやでも、ゲームの中で彼に会うのは16歳で学校の高等部に入ったヒロインと悪役令嬢が授業で森に魔物退治に行くときに護衛として騎士団がつく。そのときだったはず。

(まさかこんな早くに会うなんて思わなかったんだよ!)

誰にしているのか言い訳を考えてしまう。

(これ以上関わって変なフラグが立つのは嫌だし、なにより死にたくない。よし、もう会わなければいいんだ!!これ以上めんどくさいのはごめんだし!)

そんな結果に基づいた私はコレットが持ってきた紅茶を美味しくいただいたのだった。

もちろん、人生はそんなに上手くは行かない。
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